いつも応援いただきまして誠にありがとうございます。
クラウドファンディング対象以外の掛け軸も修復しております。
②鶺鴒図(徽宗皇帝)・鶉図(李安忠)の写し
廣岡浅子も茶会に使用したと言われている名品ですが
廣岡家には修復すべき文化財が多数有り、修復優先順位は第4位でした。
<修復の優先順位>
①約800年前(平安末期)の阿弥陀如来像
②約360年前の西本願寺門主裏書きの掛け軸「方便法身像」
以上の2品がクラウドファンディングの対象
③約230年前の西本願寺門主裏書きの掛け軸「方便法身像」
④掛け軸:鶺鴒図(徽宗皇帝)・鶉図(李安忠)の写し
⑤掛け軸:廣岡吉達筆「文殊菩薩」「普賢菩薩」
⑥その他
当初の見積もりでは、「全部、修復すると500万円ぐらい?」でした。
初めてのクラウドファンディングで、いきなり500万円の目標額は難しかったので、泣く泣くクラウドファンディングの対象外にしました。
ですが、残された掛け軸を見ているうちに「全部、修復したい!」
と思うようになり、結局「全部、修復する!」と決めました。
それで「全部、まとめて依頼するから、材料や手間など、圧縮できるところは圧縮して~」と、無理をお願いして修復に着手した次第です。
<作品について>
2022年夏、大阪くらしの今昔館「豪商展」で展示された「鶺鴒図」「鶉図」
大阪くらしの今昔館の谷先生と増井先生が調査に来られた時の話。
お茶を飲みながら、真正面の壁にかけてた鶉図を見て、
谷先生がなんだかソワソワ。どこかに電話し始めました。
そして、興奮して「あれ!あれやんか!!」とスマホの検索画面を出して
「これ!これ!」「李安忠の鶉図」と言われました。
この「鶉図」「鶺鴒図」は「竹雀」との三幅対ですが
残念ながら、「竹雀」は見たことがなく、所在不明です。
「左・李安忠 鶉」 (りあんちゅう うずら)
「中・徽宗皇帝筆 鶺鴒」 (きそうこうてい せきれい)
「右・松花堂昭乗筆 竹雀」 (しょうかどうそうじょう たけすずめ)
<修復前の状態>
光影堂様の見積書より
・本紙と台紙の接着部分に浮きが生じている
・台紙に折れが生じている
・本紙の豆浮きが折れに進行する危険性が高い
<保存修理方針>
・解体、絵具層の剥離止め、補修、台紙取り替え、裏打ち紙取り替え
・表装裂地・中軸・発装・軸首・鐶・啄木・桐太巻き添え軸・桐屋郎箱新調
<修理仕様>
1.写真撮影を行い、本紙の現状を調査
2.軸装を解体
3.乾燥した状態で本紙表面の汚れを除去
4.本紙を台紙から取り外し、旧肌裏紙以外の裏打紙を除去
5.濾過水で本紙の汚れを除去
6.膠水溶液で絵具層の剥離止めを行う
7.本紙の旧肌裏紙を除去
8.本紙欠失箇所に補修絹を用いて補絹を施す
9.美濃紙と小麦澱粉糊(新糊)を用い、肌裏紙を施す
10.本紙を新調した台紙に貼り付ける
11.美[木西]紙と古糊を用い増裏打を施す
12.将来、折れの発生が懸念される箇所に、折れ伏せを入れる。
13.表装裂地は一文字風帯に金襴、中縁に緞子、総縁に無地裂を新調し、
それぞれに肌裏打、増裏打を施す。
14.本紙と表装裂地を台紙貼り大和三段表装の形につけ回す。
15.美[木西]紙と古糊を用い、中裏打を施す
16.宇陀紙と古糊を用い、総裏打を施す
17.本紙欠失箇所に新たに補修紙を施した箇所に基調色の補彩を施す
18.中軸、発装、軸首、鐶、啄木等を新調して取付、仕上げる
19.桐太巻き添え軸2本、2幅入桐屋郎箱を新調し、羽二重の包裂に包み納入
<裂選び>
表装の掛軸や額の表装に使われる織物を「裂(きれ)」と言います。
今回はこの裂選びでした。お着物の柄合わせみたいな感じ。
画に合わせて、中縁の裂をアレコレ当ててみて、
またそれに合わせて一文字の裂を合わせ~、と。
この「裂選び」が修復の中でも一番、華のあるところ!
参加者の方々と「楽しい~♬」と盛り上がりました。
この組合せで決定!
モスグリーンっぽい色もステキでしたが、
元々が青の中縁だったので、この組合せに決まりました。
中縁の下、一文字の裂は「龍」の模様にしました。
「今年は辰年なので、龍!」と「修復の年の干支」に絡めた次第。
龍の裂には、金糸と銀糸の2種類がありましたが、銀糸にしました。
銀は変色していくので選ばれないことが多いそうですが、
色々とお話を伺って、「掛け軸も生きている!」と思いました。
「生きているなら変化する」それなら「その変化を楽しみたい!」
と思い、敢えて銀糸を選択。
叶うなら、変化の折々に鑑賞する機会を設けたいですね♬
修復担当者も「実は銀糸が好きだから、嬉しい!」と仰ってました。
続く~
今日もご先祖様のお力添えをいただけますよう、お願いいたします。
大阪の豪商・加島屋 第10代 廣岡久右衛門正直の孫
神戸中医学院(芦屋薬膳)代表 西野久子(旧姓:廣岡)