ご支援・ご協力いただいている皆さんありがとうございます。
地元の新聞に掲載していただいたことで、地域の皆さんからも声をかけていただいており、ありがたい限りです。
今日は研究所の中身について、拠点となる古民家のことに触れてお話したいと思います。
築140年の古民家について
まずは研究所の拠点となる築140年の古民家をなぜわたしが持つことになったのか、少しお話したいと思います。
この古民家はわたしが地域おこし協力隊として赴任したときに、貸家として紹介していただいたお家でした。
その頃は持ち主のおばあさんが施設に入所していたので、わたしは2階部分のみ間借りさせていただいていました。
管理していたのはおばあさんの娘さんで、隣町に住んでいたので、週に1、2度掃除や片づけなどにきていました。
その頃から、住む人がいなくなったらこの家を壊そうと思っていることを聞いていました。
築140年という歴史もある家なので、当然この古民家を譲ってほしいという話もあったようですが、娘さんは見ず知らずに人には渡したくないと話していました。
わたしが聞いていた理由は、集落の人に迷惑がかかるかもしれないから、でしたが、それと同時に、やはり家族が暮らしてきた思い出のある家を知らない人に渡すということは、そう簡単なことではないのだと感じていました。
同時にお借りしていた2年間は、娘さんが来るたびに冷蔵庫にはお惣菜が入っていたり、わたしもお返しに借りた畑で作った野菜をおすそ分けしたりと、親子のようによくしていただいていました。
お互い女性だったこともあり
「借りてくれたのが、あなたでよかった」と言ってくださって
わたし自身もとてもありがたかったです。
津南で暮らすうちに「任期後も拠点をおきたい」と考えるようになり、この娘さんに相談したところ、「あなたになら、譲ってもいい」と言っていただき、現在に至ります。
娘さんとの関係や集落との関係ができていたことで、スムーズに話が進んだのかなと思っています。
同時に娘さんからは「ありがとう」と感謝までされ、
これだけの大きな家を自分が住んでいないにもかかわらず、長い間この状態を維持してくるのは本当に大変なことだったんだなぁと感じました。
そうやって大事にしてきた家を、住み継いでいきたい、改めてそう思いました。
雪国に佇む家として
うちの古民家は雪国の家として象徴的な家でもあります。
雪の重みに耐えるため、梁や柱は太く、その数も他の地域よりも多いようです。
また地域にある木を使っているため、一本として同じ梁はなく、太さも形も様々です。
よくこれだけ個性のある木をうまく組み合わせて作ったな~と素人目にも感嘆してしまいます。
その梁を固定している縄も、藁で綯ったもの。
壁は熱を遮る土壁。
屋根の形は正三角形で、屋根に溜まる雪の重みが分散されバランスが取れるように。
中門造りという、玄関先に雪が落ちないような工夫。
地域の中にあるものを使い、この地の自然環境に合わせた造り。
雪国という変化の著しい環境に合わせて、地域に「あるもの」を生かす。
これはClassic Labの研究テーマそのものです。
140年も前に建てられた家なのに、これだけの工夫と技術で現代も住み継ぐことができているのは、本当に素晴らしいなぁと思います。
しかし、現実的に、このような古民家が雪国に残っていることは貴重なことになってしまってもいます。
雪国では人が住んでいなくても、雪を片づけないと家が潰れてしまうため、人が住まなくなったときに家を全部潰してしまうことが多いからです。
ある意味、それが家を出て行くときのマナーでもあるようです。
または他の地域に移築されてしまいます。
わたしの住む130軒くらいの地区の中でも、このような古民家は2軒ほどしか残っていません。
だからこそ、残していきたいと思っています。
昔から「あるものを生かし」、現代の暮らしを編み込む
ではこの古民家を使ってどんな研究をするかというと?
雪国という変化の著しい環境に合わせて、地域に「あるもの」を生かして作られた古民家。
この「昔からあるもの」を受け継ぐことも、Classic Labの大事にしたいことです。
しかしそれは、「昔に戻る」ことではありません。
現代には現代の暮らし方、働き方があります。
「昔からあるもの」を大事にしながら、現代の暮らしに合わせてアレンジして行くことも必要だと思っています。
そのために、「何を残し」「何をアレンジしていくか」
その部分を、古民家を直す作業を共にしながら研究していきたいと思います。
実際には床や壁の改修ワークショップ、地域にあるものを生かしたインテリアの研究、火のある暮らしを考えるワークショップ、などを計画しています。
人が寄り合う場所として
最後に。
うちの古民家は一人で暮らすには広すぎるほどです。
昔は家族もたくさんいたし、行事があると親戚中が集まり泊まっていたため、座敷も広くとってあります。
またうちの地域は、昭和の初めに水力発電所が作られたため、当時は作業員の方を下宿させていたと聞いています。
だからこそよそ者が入ってきても、寛容なのかもしれません。
さらに雪に閉ざされる冬には、旦那さんが出稼ぎに行き家に残った女性や年寄りは、家族を超えて寄り合うことで辛いことも乗り越えてきたと聞いています。
いまも、地域を歩いているといろんな人が声をかけてくれて、
初対面にもかかわらず「お茶飲んでいかねかい?」と誘ってくれる方もいます。
そうして、いつも家は人が寄り合う場所となってきたのだと感じています。
そういう背景があるからこそ、わたし自身も夫と別々の拠点を持ちながらも、家族というくくりを超えた、家族のようなコミュニティを広げ、この古民家を開くことで、一人では維持できない大きな古民家を住み継いでいきたいと思っています。
この古民家と共に古いようで、新しいライフスタイルを提案していきたい。
この想いに共感して共に研究したいという仲間をぜひ募集したいと思います。
よろしくお願いいたします。