『タトゥー裁判をあきらめない!』プロジェクトにご支援いただきました皆さまへ
ご無沙汰しております。
大阪高等裁判所で逆転無罪判決を勝ち取ってから約2年。検察官が上告し、舞台は最高裁へと移されておりましたが、このたび令和2年9月16日、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は、検察官の上告を棄却し、彫り師増田太輝氏の無罪が確定することとなりました!
このプロジェクトを立ち上げたのは、一審・大阪地裁で罰金15万円の有罪判決が下された後のことでした。どうしても、「医師でなければタトゥーを施術してはならない」という結論を受け入れることができず、あきらめたくない一心で、控訴審、そして最高裁まで闘い続ける覚悟で、日本で初めて、裁判費用をクラウドファンディングで募る試みを始めたのでした。
司法の世界において初めての試みであること、そして、有罪判決を受けた彫り師がプロジェクトの当事者であることなどから、正直なところ、本当に支援が集まるだろうか?と不安な気持ちでいっぱいでした。
しかし、職業に誇りを抱いている彫り師の方々、タトゥーを愛する方々、それだけでなく、タトゥーは好きではないけれど、このような不合理な形で職業を奪われることを容認できないと応援してくださる方々、タトゥー施術は医療であるとの一審判決に違和感を抱く医療業界の方々、公益的な裁判に手弁当で取り組む弁護団を応援してくださる方々など、本当に多くの方が、この裁判を闘う彫り師と弁護団を応援し、寄付をしてくださいました。皆さま方からの応援コメントは、有罪判決を受けて落ち込んでいた私たちを力強く励まし、「絶対にあきらめるな」と背中を押してくださいました。
皆さま方のご支援のおかげで、控訴審で充実した立証活動をすることができ、すばらしい逆転無罪判決を勝ち取ることができましたが、検察官が最高裁へ上告。結論は先送りされてしまいました。
それから2年。
弁護団は油断することなく、専門家の方々との議論を続けながら、「医行為」とはなにか、そして、憲法が保障する「職業選択の自由」を守ることの意義についてさらに検討を深め、令和元年7月31日、渾身の主張書面を提出しました。
最高裁第二小法廷から上告棄却決定が届いたのは、それから1年2か月後。
タトゥーを施術する行為は「装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗」であることを認め、「医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を有する行為」であり、社会通念に照らして医師が行う医行為にはあたらない、と判断して検察官の上告を棄却。これによって、ついに増田太輝氏の無罪が確定することになりました!!
最高裁第二小法廷の草野耕一裁判長は、補足意見で、「タトゥーに美術的価値や一定の信条ないし情念を象徴する意義を認める者もおり」「昨今では、海外のスポーツ選手等の中にタトゥーを好む者がいることなどに触発されて新たにタトゥーの施術を求める者も少なくない」という状況を踏まえると、「公共的空間においてタトゥーを露出することの可否について議論を深める余地があるとしても、タトゥーの施術に対する需要そのものを否定すべき理由はない」と述べており、タトゥーという文化に対するリスペクトを感じるすばらしい決定でした。
上告棄却決定の全文を公開しますので、ぜひタトゥー裁判を応援してくださった皆様にも読んでいただければと思います。
一審で有罪判決を受けてもっともつらい時期に、クラウドファンディングを通じてたくさんの応援、励まし、ご寄付をいただきました恩は、決して忘れません。
今後、彫り師さんに特化したルール作りが進んでいくことになると思います。こうした動きにもしっかりとコミットしながら、日本中の彫り師さんが安心して仕事を続けられ、すばらしい作品を創り出していくことを、そして、タトゥーに対する社会の偏見がなくなっていくことを心から願っています。
ご支援いただきました皆様、本当に本当にありがとうございました!