(株)文化財マネージメントの宮本です。
今回のプロジェクトで対象としている大仏、本堂、そして熊谷市の文化財保存について、熊谷市立江南文化財センター・学芸員の山下祐樹さんにご執筆いただきました。
3回に分けて掲載します。
源宗寺大仏(おおぼとけ)ファンタスティック―地域の文化遺産という名の希望①
熊谷市立江南文化財センター 山下祐樹
「木彫大仏坐像」の概要
源宗寺本堂に安置されている熊谷市指定有形文化財・彫刻「木彫大仏坐像」は、江戸時代中期に制作された「薬師如来坐像」(高さ3.48メートル)及び「観世音菩薩坐像」(高さ3.93メートル)の二体である。
木造寄木造としては埼玉県内最大規模で、全国的にも珍しい。
平戸の地名を冠して「平戸の大仏(おおぼとけ)」と称されている。
昭和29年(1954)には熊谷市の有形文化財に指定された。
仏像は内陣の蓮華座上に祀られ、向かって右側が「薬師如来坐像」、左側が「観世音菩薩坐像」である。
薬師如来坐像は禅定印に手を結び、令和の改修時点では薬壷は無かった。
また、観世音菩薩坐像は左手に持つ蓮華が失われているが、両像とも全体的な造形美が維持されている。
昭和30年頃に確認された堂内棟札によると、仏像制作に関しては仏師である頓誉宗円と江戸弥兵衛が担い、漆塗り・金箔押しを塗師である中西村の喜平と沼黒村の太兵衛が担当したとされる。
令和3年10月には、「寛文三年(1663)仏師松田庄兵衛」の墨書が薬師如来坐像内から発見された。
二体の胎内に収められていたとされる「秘伝書」は、神経痛などの妙薬として特に周知され、昭和40年代前半までこれを求める人々がいたと伝わる。
また、目の妙薬を販売していたとの伝承も残る。