本編の一部を先読み出来ちゃいます!
予告なく変更する可能性もございますのでご了承ください。
ここまでのSTORY、ここからのSTORYが気になる方は是非リターンに書籍を選んでご支援よろしくお願い致します!
そんなある日、母の千夏が突然莉子と祖母の加代子が住む家に訪れた。
「ただいまー」
千夏の訪問に莉子も加代子も驚く。やだ、会いたくない。何度も殴られてきた記憶が莉子の中で蘇り、静かに汗が流れてくる。
「いいから部屋に行ってなさい」
莉子の様子に気がついたのか、加代子が静かにそう声をかけた。莉子は小さくうなずき、すぐに自分の部屋にこもった。
そうは言っても狭い平屋。加代子と千夏の会話は嫌でも耳に入ってくる。
「千夏、どうしたの急に。来るなら連絡ひとつしなさい」
「いいじゃない、ここは私の実家なんだから」
千夏は靴を脱ぎながら答える。
「あの子だっているのよ」
「私はあの子の母親。なんの問題があるの?」
加代子はため息をつく。千夏にはどんな言葉も通じないのかもしれない。
千夏は台所の椅子に座った。加代子も向き合うようにして座る。
「ビール買ってきたの。お母さんも飲む?」
千夏はコンビニの袋からビールを2本取り出した。1本のふたを開けて一人で飲み始める。
「私はいらない。ほんとにお父さんが生きてたらなんて言うのかしら、お姉ちゃんは立派に生きてるのに」
「やめてよ、いない人の話は」
千夏が声を荒げた。ふすまごしに聞いていた莉子は反射的にびくっとする。千夏から暴力を受けていたときの記憶は簡単に消せるものではない。
「それで今日はなに?お金ならないわよ」
加代子が怒るでもなく、悲しむでもなく、ただ静かに切り出した。
千夏はそれに応えるようにゆっくりと口を開く。
「そろそろあの子をうちに戻してくれない?」
莉子は驚いた。お母さんが私といっしょに住みたいと言っている?それは恐怖でもあり、だが一方でほんのちょっとだけ嬉しくもあるような、そんな複雑な気持ちだった。だけどその嬉しさは一瞬の間に打ち砕かれることとなる。
「あの子ももう17歳でしょ、いい年なんだから働いて家にお金入れてくれなきゃ困るのよ」
「何言ってんのよ、あんたは」
「当たり前じゃない、あんなに苦労して育ててきたんだから。親孝行のひとつくらいしろっつーの」
加代子はため息をついた。
「莉子はあなたの奴隷でもなんでもないの。どうして自分の子どもにそんな言い方出来るのかしら」
「は?なんで?」
「なんでって。とにかく莉子は帰しません。あの子にとってここにいるのが1番なの」
「こんなボロい家」
千夏が再び声を荒げた。だが加代子も負けていない。
「あなた母親でしょ?自分のことだけじゃなくて、もっと莉子の幸せを考えなさい。それが出来ないならもう2度とこの家に来ないで」
「最悪。話にならない、帰る」
そう言って千夏は飲みかけのビールもそのままにして出て行ってしまった。
嵐が去った後のような静けさの中、莉子は自然と涙があふれて止まらなかった。
莉子と千夏の母娘。千夏と加代子の母娘。
今までに何があったのでしょうか?
そして彼女たちはこれからどうなっていくのでしょうか?
気になる続きは本編で!