本編のストーリー、ほんのちょっとだけ読めちゃいます!
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古い2DKのアパート。築50年以上は経つらしい。6部屋中、住んでいるのは陽翔たちともう1部屋だけだ。
陽翔はここに母の和美と、妹の結月と、3人で暮らしている。和美と結月はいっしょの部屋だ。
「ただいまー」
家に帰ると、珍しく和美と結月が何かを言い合っていた。結月は大人しい性格で和美に何かを言うことは少ない。
「何?どうしたの?」
「お兄ちゃん・・・」
結月が悲しそうな目で陽翔を見た。
「何かあったの?」
「あのね・・・」
「結月がお金、お金ってうるさいのよ。ほんとにいやらしい子ねー」
結月の言葉を遮るように和美が言った。結月は涙をこらえて消え入りそうな声で言う。
「大学のお金、明日までなのに。払わなきゃ入学取消になっちゃうのに」
「入学金のこと?」
来月入学するための結月の大学の入学金なら、つい先日和美に渡したばかりだ。
「母さん、この前渡したお金は?」
陽翔が和美に聞くと、和美は開き直るようにして笑った。
「あんなお金、すぐ使っちゃったわよ」
「50万もあったのに。何に使ったんだよ?」
「しょうがないじゃない、純くんがパチンコでお金なくなったって言うんだもの」
純とは和美の彼氏だ。会ったことはないが、和美の言うことだと年齢は大して陽翔と変わらないらしい。
陽翔は思わず和美に殴りかかった。
「てめぇ、ふざけんなよ」
「お兄ちゃん・・・」
そんな陽翔を、悲しそうな表情で結月が止めた。あまりの苛立ちに和美を殴ってしまいたいが、結月の悲しむ姿だけは見たくない。それに和美に預けた自分がバカだったと後悔した。
「ちょっとコンビニ行ってくる」
陽翔はそれだけ言うと外に出て行った。今だけは和美のそばにいたくなかった。
1時間くらい経って家に戻ると、和美は出掛けたようで、結月だけがいた。
「あれ、母さんは?」
「純くんのところに行くって。今日は遅くなるって言ってたよ」
陽翔は呆れて物も言えない。どうして自分の母親はこうなんだろうって悲しくもなる。
「ねぇ、お兄ちゃん」
結月が少し悲しそうな表情で言った。
「私、やっぱり大学行くのやめようかなって思う。お兄ちゃんは高校も行ってないのに私だけ行かせてもらったし、それだけで十分だよ。私が大学行くの辞めて、今からでも就職先探したら、お兄ちゃんも楽になると思うし」
陽翔は中卒で働き始め、働かない和美の代わりに生活費や結月の学費を出してきた。もちろん大変だったし、周りの友人と比べてみじめな思いもしたが、それでも結月が笑顔でそばにいてくれるだけで良かった。どんなことでも耐えられた。
「何言ってんだよ。大丈夫だって、俺がなんとかするから。結月は何も考えず大学行ってちゃんと勉強しろよ。な?」
陽翔が優しくそう言うと、結月は戸惑いながらも小さくうなずいた。
陽翔お兄ちゃん、優しい。
私は実質ひとりっこみたいな感じで生きてきたから、兄弟姉妹にすごく憧れがあります。
だけど50万。しかも明日までに。
陽翔はどうするのでしょうか?
そしてこの兄妹はこれからどうなっていくのでしょうか?
気になる続きは本編で!