リターンの一つである★星のオーダーメイドお洋服★
制作者である藤田優子さんから、その想いを語ってもらいました。
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私は東京都で3人の子どものお母さんをしています。
洋裁やミシンを習ったことはありませんが、「あなたのニーズにシンデレラフィット」をモットーに、子どもたちの服を手作りしています。
私がミシンを買ったのは、長男が生まれたことがきっかけでした。
1310グラムで生まれてきた長男。
その小さな小さな体に、ぶかぶかじゃない服を着せてやりたかったのです。
それから姉妹のお揃い服も。
慣れないミシンで小さな息子の小さな服を縫いながら、
どんなに小さく生まれた赤ちゃんでも、かわいい服がたくさん選べたらいいのになといつもいつも思っていました。
☆☆☆
息子は元気に育ちましたが、重い障害とともに生きることになりました。
自分で座ったり立って歩いたりできない、いわゆる「寝たきり」の息子は後ろ姿が見えません。
だいたいいつも、背中が椅子やベッドにくっついているからです。
小さいころにプレゼントしていただいた素敵なシャツは、背中に大きくてかっこいいワッペンが付いていたけれど、息子が着ると「無地」でした。
勇気を出してデパートの子供服売り場に行って、
よちよち歩く後ろ姿がかわいいんですよ~
とお店の人に勧められたズボンやシャツをそっと棚に戻すたび、切なくて胸がきゅっとなった頃もありました。
でも今は、息子にとっての背中のおしゃれは「パンツのリボン」だと思っています。
娘にかわいいリボンが付いたパンツを選ぶように、見えなくてもおしゃれを楽しめばいい。
お気に入りのパンツをはいた娘がその日いちにちルンルン気分で過ごしているように、きっと息子も背中のおしゃれを誇りに思っているんじゃないかな、と、思うようになりました。
思えるようになりました。
洋服を作る時、背中のデザインをどんなふうにしようかなって考えながら、いつもいろんなことを思い出し、いろんな人の顔を思い浮かべます。
私は背中のおしゃれを届けたいけれど。
でも、背中のおしゃれに胸がきゅっとなってしまう気持ちも置いていかない洋服屋さんでありたいなと思っています。
☆☆☆
とはいえ。
背中のおしゃれには困ることもあります。
大きなリボンやかっこいいワッペン。フリルにタグ。
ちょっとした服のしわでさえ、車いすやベッドにいることが多い子どもたちにとっては痛みになってしまうときがあるのです。
ほんとならひらひらしているはずのそういうものがずっと背中に押し付けられるから、擦れたり当たったりかゆくなってしまうことに、真っ赤になった息子の首元を見て初めて気が付きました。
こういうとき、不便だなぁと思います。
たったこれだけのことがおしゃれの選択肢を大きく減らしてしまうこと、悔しいなぁと思います。
でも。息子たちにとって心地よい背中の服は、きっと障害の有無にかかわらずみんなに心地よい服になるはずだと思うのです。
なぜなら・・・
「寝たきり」は、星を見るための姿勢だから。
☆彡☆彡☆彡
ごろーんと寝っ転がって星を見るその姿は息子たちの姿なんだと教えてくれたのは、星つむぎの村のプラネタリウムでした。
地球にべったり背中をつけて、満天の星空に包まれるとき。
人はいのちのおわりとはじまりを知り、自分が「ここいいる」ことがどれだけかけがえのないことなのかを知り、そしてともに生きるいのちの愛おしさを知ることができます。
そんなときに背中がチクチクしたら大変です。
そう考えたら、誰もが安心して星空に包まれることができる服をたくさん作ろうと思いました。
「作りたい!」と思うようになりました。
なるべく背中に縫い目や切り替えがないデザインを選んだり、縫い代の始末を工夫したり・・・
心地よい背中の研究、いつも試行錯誤しています。
☆☆☆
学校の体育でも着られる服、好きなお友達とお揃いの服、どこにも売ってない服、
いろんな出会いのなかで、たくさんのお洋服を作らせていただきました。
なかでも一番注文がうるさかったのは、私の母でした。
病気でやせてしまったから、がりがりに見えない服
寒くないけど涼しい服
ちょっと散歩もできるパジャマ
ボタンは多すぎず、でもがばがば開かない服
検査で全部脱がなくてもいい服
点滴してても着替えられる服
乾きやすい服
そして最後は、旅立つときに着ていく服。
この柄はババ臭いとか、このデザインは野暮ったいとか、作っても作っても合格がもらえない。
買い物にも出られない体調だと分かっていながらも、あまりにも細かいダメ出しに腹が立って「ユニクロ行ったら?!」などと言ってしまったこともありました。
だから「腕上げたなぁ」と言われたときは、嬉しくて寂しくて。
☆☆☆
体の大きさはみんなひとりひとり人それぞれ、好きな形も人それぞれ。
困ってることも、「こうだったらいいのにな」と思うことも、みんなみんなそれぞれ違います。
これは病気や障害の有無に関係なく、みんなそうだと思います。
大きいサイズ、小さいサイズ、丈は長で袖は短め。
前あきが便利な人、前あきが便利だけどTシャツが着たい人。
服に体を合わせるのではなく、「どんな服が着たい」に合わせた服を作っていったら、新しいアイデアやデザインにたくさん出会うことができました。
そのひとつひとつが私の宝物です。
関係は、いつも相互にあるもの。
服を作ることを通して、新しい出会いと学びを積み重ねさせてもらえることは私の生きがいになっています。
☆☆☆
お店の名前はatelierARGO
アルゴ船という船に乗って金の毛皮の羊をめぐるたくさんの冒険が始まった、という神話から屋号をもらいました。
牡羊座の息子がつないでくれたたくさんの出会いに背中を押してもらいながら、私も新しい冒険に出る勇気をもらいました。私のつむぐ糸たちが、まだどこかで始まる新しい冒険の支えになることができたら。
誰かの背中をそっと押すことができたら・・・
そんな思いでミシンを踏んでいます。
星つむぐ家も、きっとたくさんの新しい冒険が始まる場所。
そんな夢が詰まったクラウドファウンディングのリターンに並べていただきとても嬉しく思っています。
誰かのオンリーワンのお気に入りに出会えることを、楽しみにしています。