プロジェクト概要
欧州と南米を中心に急速な広がりを見せる『公共善エコノミー(Gemeinwohl-Ökonomie / Economy for the Common Good)』が翻訳本の出版によって2022年末に日本に上陸しました。人間社会の基本的な価値を基盤とするこのオルタナティブな経済コンセプトの心臓部で、主要な実践ツールである「公共善決算」のワークブックと計算シートを翻訳することで、日本においても公共善エコノミーの具体的な実践を広めていきたいと思います。また、並行して、公共善エコノミーJAPAN協会を設立し、公共善エコノミー世界連合(International Federation for Economy for the Common Good)の仲間入りもする計画です。
1.初めまして
本プロジェクトのリーダー、池田憲昭です。私は長崎県佐世保市で生まれ、海も山も畑もある豊かな自然環境のなかで、刺激をうけ、癒されながら育ちました。この「幸せな」体験が、自然や環境をテーマにした現在の私の仕事につながっていると思います。かれこれ25年以上住んでいる南西ドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)も自然に恵まれた地域で、自然は、明るい家族と同じくらい、私の生活の欠かせないエネルギー源です。
「公共善エコノミー」との出会いは、2019年に岩手県中小企業家同友会の視察団と一緒に訪問したフライブルク市にある有名な豆腐工場Taifun(タイフーン)社でした。この会社が「公共善エコノミー」の運動に参加し、「公共善決算」を実践していました。興味を持った私は、原著を買い、コロナ禍のなか、読み始めました。様々な問題を生み出している資本主義経済に対するオルタナティブ(代価案)が、包摂的なアプローチで、簡潔・明瞭に描かれていました。深く感銘した私は、作者に、日本語に翻訳したい、とメールを出し、快諾を得ました。その後、中小企業家同友会の支援のもと、出版社もすぐに決まり、
CAMPFIREでのクラウドファンディングで資金を調達し、トントン拍子で日本語版の出版となりました。
「公共善エコノミー」は2010年に中欧ドイツ語圏で初版が出たあと、8言語に翻訳され、14カ国で販売される世界的なロングセラーになっています。本による啓蒙にとどまらず、欧州と南米を中心に35カ国、3000以上の企業や自治体、大学や教育機関が参加する大きな草の根運動として広がっています。
今回のプロジェクトは、公共善エコノミーの中核的な実践ツールである公共善決算のワークブックを翻訳し広げる取り組みです。公共善エコノミーJAPAN協会(仮名)の設立と併せて、翻訳本の出版によって日本のあちこちで芽生え始めた公共善エコノミーの植物が健全に育つための確かな培養土になる願いをこめています。
公共善エコノミーJAPANプロジェクトチーム
プロジェクトリーダー 池田憲昭
在独25年、南西ドイツのシュヴァルツヴァルト地域、環境首都フライブルク市近郊のヴァルトキルヒ市に在住し、森林、木材、建築、再生可能エネルギーなどの分野にて、日本と中欧ドイツ語圏の「架け橋」として、視察セミナーのコーディネートやコンサルティング、通訳、文筆活動を行っている。中欧を震源に世界に拡大する『Gemeinwohl-Ökonomie(公共善エコノミー)』運動の原著を2022年に日本語に翻訳した。
Arch Joint Vision 社代表(ドイツ) https://www.arch-joint-vision.com
Smart Sustainable Solutions 株式会社の代表取締役(日本)https://www.smart-sustainable-solutions.jpFacebook: https://www.facebook.com/noriaki.ikeda.58/
https://note.com/noriaki_ikeda
https://note.com/noriaki_ikeda/m/m13ff063cc3f9
https://www.instagram.com/noriaki.ikeda.472/
https://twitter.com/NoriakiIkeda1
プロジェクトメンバー
大濱匠一 横浜国立大学非常勤講師、『Just Money 』カトリン・カウファー他 著の翻訳者 (翻訳・校閲)
福島 由美 英日法務翻訳/通訳、ビジネスコンサルタント(翻訳・校閲)
桑原香苗 NexTreams合同会社代表社員、気候Switchコアメンバー(翻訳・校閲)
清水菜保子 一般社団法人 ゆずり葉 代表理事(翻訳・校閲)
- 山本尚史 拓殖大学政経学部教授 (翻訳・校閲)
- 江上 広行 一般社団法人 価値を大切にする金融実践者の会(JPBV)代表理事(監修)
- 新田 信行 一般社団法人 ちいきん会代表理事(監修)
2. 公共善エコノミーって何でしょう?
2.1 生みの親 クリスティアン・フェルバー
公共善エコノミー運動創設の第1人者であるクリスティアン・フェルバー(オーストリア・ウィーン市在住)は、美しい山と湖と牧草地に囲まれたザルツブルク地域で育ちました。子供の頃の「深く幸せな」な自然体験が、公共善エコノミーの1つの原点で、現在の彼の活動の大きな原動力にもなっているようです。フェルバーは、言語学、心理学、政治学、哲学を学んだ学者であり、作家、政治活動家、そしてダンスパフォーマーとしても活躍しています。そのホリスティックな人間性が、著書「公共善エコノミー」とその運動に、力と魅力を授与しています。
クリスティアン・フェルバーのTEDxTalk(約20分の動画)
2.2 価値観でつながる公共善エコノミー
「エコノミー」の語源は古代ギリシャ語の「オイコノミア」。アリストテレスはこれを、「すべての人間の良い生活」を目標とし、「お金はそのための単なる手段」になる経済形態として、推奨しました。一方で、お金の獲得と増殖が自己目的になっているもう1つの経済形態を「クレマティスティケ」と名付け、「反自然」なものだと酷評しました。公共善エコノミーは、クレマティスティケ的な現代の経済を、本来あるべき姿「オイコノミア」に戻していこうとする運動です。
公共善エコノミーの中核的実践ツールである「公共善決算」は、企業や団体の経営を倫理性・社会性・環境保護・民主性という観点で包括的に評価します。金銭的な決算(財務諸表)では表現できない、企業の多面的な価値と意義を数値化することができます。
公共善エコノミーのロゴマークにあるタンポポの綿毛は、風に乗ってあらゆる方向に飛んでいきます。これまでに世界35カ国の3000以上の多種多様な企業や団体で根付き、芽吹き、育っています。
公共善エコノミー運動に参加し、公共善決算に取り組んでいる企業の動機はなんでしょうか? 売上や顧客を増やしたい、といった浅く外的な動機ではありません。社会変革の主体になりたい、みんなに模範を示したい、志を共にする仲間と交流したい、自社の強みと弱みを再認識して進化したい、といった深く内的な動機です。他社との「競争」ではなく「協力」をベースに、新しい市場経済の仕組みをみんなで一緒に創造する公共善エコノミー企業。その活動が副次的に、財務諸表の数字の向上をもたらす場合もありまが、もっと大切なものを企業は獲得しています。それは尊敬、信頼、仲間です。
「数年前に公共善エコノミーのことを知ったとき、私たちが大切にしてきた理念をしっかり束ねているコンセプトだと感じた」
タイフーン豆腐有限会社の元マネージャー アルフォン・グラーフ氏
「まず会社の行動指針を改新することから始めた。銀行家は真面目なので2年の時間を要する長いプロセスになった。すべての従業員を取り込んで、みんなで新しい価値を共有し合うことができた」
ライフアイゼン銀行レッヒ・アム・アールベルク協同組合の元理事 ベルント・フィッシャー
「私たちは持続可能性を促進したいから携帯電話通信事業をしている。通信事業を促進したいから持続可能性を掲げているのではない」「公共善エコノミーは、私たちが本質的に求めるものに対して、構造と透明性を与えてくれる」
WEtell 有限会社の創設メンバー アルマ・シュプリビレとニコ・トゥハー
2.3 ボトムアップによりみんなで創っていく「道」
ドイツの著名な環境ジャーナリストであるフランツ・アルトは、公共善エコノミーのことを「社会主義と資本主義の間に位置する実用的な第3の道」と評しています。イデオロギー(思想)に基づく対立を生み出しやすい「イズム(主義)」ではありません。あらゆる人や組織がフラットで創造的な協働により、みんなで発展・進化させていくプロセスです。すなわち、コモン・グット (公共善)を目標に、みんなで方向を確認・修正しながら歩く、終了点が設定されていないオープンエンドの「道」です。ここでいう「道(みち)」は、日本の「道(どう)」に通じるものがあります。生き方、心の持ち方であり、個々人の人格形成の修養プロセスでもあります。
地域のソーシャルバンキングや中小企業支援に尽力されている元第一勧業信用組合理事長の新田信行氏は、『公共善エコノミー』日本語版の推薦文でこう述べられています。
「従来の会計手法では、本来の日本的経営の価値を認識出来ません。日本の中小企業の事業価値を顕在化し、更に磨き育てるための世界との共通言語として、公共善エコノミーに注目しています」
公共善エコノミーは中央ヨーロッパ生まれの新しい経済コンセプトですが、新田氏も感じられているように、日本の企業文化と親和性があります。
例を上げると、相互扶助の精神である「結」、近江商人の経営理念である「三方よし」(=売り手よし、買い手よし、世間よし)、理屈だけでなく感情も含めた一致を粘り強く探る「話し合い」の文化、そして「萬(よろず)の神」という言葉に集約される日本古来の自然観です。
公共善エコノミーは、資本主義社会のなかでなおざりにされてきたこれら日本的な価値を「顕在化」させ、「磨き育てる」ことを促していくでしょう。
5. 日本との繋がり、可能性
地域のソーシャルバンキングや中小企業支援に尽力されている元第一勧業信用組合理事長の新田信行氏は、『公共善エコノミー』日本語版の推薦文でこう述べられています。
「従来の会計手法では、本来の日本的経営の価値を認識出来ません。日本の中小企業の事業価値を顕在化し、更に磨き育てるための世界との共通言語として、公共善エコノミーに注目しています」
公共善エコノミーは中央ヨーロッパ生まれの新しい経済コンセプトですが、新田氏も感じられているように、日本の文化と親和性があります。日本の風土や歴史が育んだ共同体の精神や、そのなかから生まれた日本企業の「日本的経営」の価値やその実践は、公共善エコノミーと高い親和性を持っています。
例を上げると、相互扶助の精神である「結」、近江商人の経営理念である「三方よし」(=売り手よし、買い手よし、世間よし)、理屈だけでなく感情も含めた一致を粘り強く探る「話し合い*」の文化、そして「萬(よろず)の神」という言葉に集約される日本古来の自然観です。
公共善エコノミーは、資本主義社会のなかでなおざりにされてきたこれら日本的な価値を「顕在化」させ、「磨き育てる」ことを促していくでしょう。
3.クラウドファンディングによる翻訳事業とその後の日本での事業展開
本クラウドファンディング事業では、公共善エコノミーの実践ツールである「公共善決算」のワークブック(クイックテストとコンパクトバージョン)の翻訳を行います。
翻訳成果物をベースに、公共善決算の実践モデル事業も、次のスケジュールで行います。
★ステップ1(2023年7〜8月)
ワークブックと計算シートの翻訳(独日と英日)・校閲作業
-クラウドファンディングで支援-
- クイックテストのワークブック(企業向けと個人向け) 約5ページ
- 公共善決算コンパクト用ワークブック(企業向け) 約60ページ
- 公共善決算コンパクト用計算シート(企業向け)
翻訳物は、公共善エコノミー国際連合(https://www.ecogood.org)で、既にある英語・ドイツ語・スペイン語版とともに、オープンソースとして公開されます。
★ステップ2(2023年9月 )
公共善決算クイックテストのトライヤルイベント(有料の公開オンライン・イベント)
- レクチャー「公共善エコノミー」(池田憲昭) 20分
- クイックテストの説明と実施 45分
- 結果発表会、対話 45分
クラウドファンディングのリターン設定あります
★ステップ3(2023年9〜12月)
有志の企業と一緒に公共善決算コンパクト作成実践
★ステップ4(2024年2月)
公共善決算コンパクト実践企業による発表会(有料の公開オンラインイベント)
クラウドファンディングのリターン設定あります
★ステップ5(2024年4〜6月)
公共善決算書の国際認証(オプション)
オプションとして、作成された公共善決算書を公認の公共善監査官(欧州)が査定。認証されると公共善エコノミー国際連合・協会のサイトで公開される。
事業のステップ:
上記のプロセスと並行して、公共善エコノミーJAPAN協会(仮名)の設立も計画しています。日本においても、世界の公共善エコノミー運動にリンクし、草の根で実践運動を促進するためです。現在、有志数名で、2023年度中の設立を念頭に、準備を進めています。
4.おわりに ー 個々人の内面の豊かさが集まることで
公共善エコノミー運動の大きな特徴は、人間社会にある共通の価値観を基軸にして、個々人や企業・団体が、社会みんなの幸せのために意義深いことをしている、という内的に満たされた気持ちでつながり、行動していることです。真に豊かな社会は、個々人の内面の豊かさが集まることではじめて構築されます。
地球の裏側から日本にも飛んできた公共エコノミーのタンポポの綿毛。日本の土地でもたくさん根を張り、健全に成長するでしょうか? みなさまからの支援は、日本で芽吹き始めた公共善タンポポの成長を助ける太陽光であり、水であり、そして栄養素になるでしょう。たくさんの方々からの支援をお待ちしております。
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* 本プロジェクトは「All in形式」となっております。
* 資金の使い道について
募集金額:125万円
内訳)翻訳費用:1,000,000円
リターン等 37,500円
CAMPFIRE 手数料 212,500円
*「本プロジェクトを利用して、プロジェクトオーナーと第三者(支援者を含む)との間の雇用関係を成立させることはございません。また、プロジェクトオーナー以外の第三者(支援者を含む)が当事者となる雇用関係の成立をあっせんすることもございません。このことは、本プロジェクトのリターンについても同様です。」
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最新の活動報告
もっと見る設立メンバーによるドイツ視察の報告会を実施します!
2024/02/07 23:03予定よりも大幅に遅れてしまいましたが、皆様のご支援により、公共善エコノミー決算書の企業版ワークブック5.0の翻訳が終わり、最終チェックが10日締め切りで進めております。もう少しでお届けさせていただきますので、ご了承ください。このワークブック翻訳と並行して、現場での経験から学ぶべく、公共善決算の実践企業や、地域で活動を広げる方々を訪問するドイツ視察に、設立メンバーで行ってまいりました。池田さんの調整のお陰で、1500キロの車での移動距離も含めた、非常に濃密なそして勇気と希望を抱く経験ができました。そして、共同創始者のクリスチャン・フェルバーとも交流することができ、日本で新たな動きが起きていくことに励ましをいただきました!ドイツ視察報告会を、3月14日(木)20:00~実施いたします。是非、ご参加ください。https://economyforthecommongoogj.peatix.com/ もっと見る
近況報告&メリークリスマスイヴ!
2023/12/24 23:16ドイツの池田さんよりクリスマスの写真が届きました。今年も雪のないクリスマスだそうです。クリスマスイブは、日本でいうと元旦のようで、お店もレストランもみんな休み、静かに家族で過ごす日です。翻訳状況のご報告です。まずは、完成予定(11月中)より大幅に遅れておりますことお詫びいたします。11月中旬に翻訳チームによる英語の翻訳が終了し、池田さんがドイツ語の原文と日本語訳のダブルチェック作業が終わったところです。ここから再度、翻訳チームで内容の最終確認をして、皆様にお届けする形になります。お待ちいただいており、本当に申し訳ありません。日本で初めての公共善決算ワークブックなので、念入りに作業を進めております。どうぞ、ご理解、ご了承ください。また、近況報告や関連情報をご案内させていただきます。 もっと見る
公共善エコノミー 対話会&法人化構想説明会
2023/10/25 23:04皆さん!今回、ドイツよりプロジェクトリーダーの池田憲昭さんが来日されます!それに伴った、公共善エコノミーJAPANの立ち上げへ向けた法人化構想の場を作ったので、是非是非、ご参加ください!11月10日(金)16-19時 その後、有志で食事会参加費:無料参加者数:50名まで場所:都内千代田区内の某会議室(お申し込みの方にご連絡いたします)【内容】「公共善エコノミーJAPAN協会」法人化構想の説明 —日本での事業と運動、世界のコミュニティとの交流の展望対話:公共善決算お試しツール活用の体験談を共有対話:ホロクラシー、ティール組織、パーパスなどとの親和性と相互補完性対話:日本古来の文化、日本的な企業理念との親和性お申し込みはこちら!!皆様とリアルでお会いして、公共善エコノミーの日本での活動の広がりを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いします。 もっと見る
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