支援者の皆様へ
ここで残念なお知らせをしなければならず、SNSなどより一足早くご報告させていただきます。
先日、ユーコン川全行程3200kmのうち1600km(1000マイル)を漕ぎ切りました。そこからアラスカ第2の都市、フェアバンクスまではバスで4時間ほどの距離で、実質的に都市との最後の陸路であり、旅の中間地点でした。
その場所で私は、このプロジェクトから抜けることを決めました。
大きな理由は現在僕が両腕に抱えている痺れです。
日本では手根管症候群と診断されていて、手首内の神経が圧迫されることで手に痺れが生じ、朝晩は痛みます。
また、握りこぶしを作ると、右手の中指が動かなくなる状態です。
痛みをこらえて進むことも可能だったかもしれませんが、プロジェクトの目的が「ファーストレスポンダー(第一即応者)」を助ける、すなわち、消防士や捜索、救助隊、警察官らを助けるということであり、それに関するドキュメンタリーを作るという以上、両腕に大きな問題を抱えたまま旅を続けるのは、趣旨的におかしいように思いました。
また、これまでは2人乗りのカヌーと1人乗りのカヤックを3人で漕いでいたのですが、メンバーの1人がここで抜ける都合上、この先は僕とジョンがカナディアンカヌー1艇で漕いで進む予定でした。しかし、この17フィートのカヌーは1人で漕ぐことはほぼ不可能で、片方が脱落すれば、その時点でプロジェクトとしての旅は終わるということを意味していました。
ただ、僕が現在の時点で抜ければ、ジョンは1人でカヤックを漕いで進むという選択肢が残ります。そのような事情もあり、僕はここで旅を抜けることをジョンに伝えました。
手根管症候群については、もともとリスクがあったものの、正しい対応をしてきたのかと今でも悩んでいます。
昨年、私は2件の病院で診断してもらったのですが、診断はいずれも「手根管症候群だが手術をするほど深刻には見えない」でした。そして2件目の病院の先生にこの旅のことを相談した上で、僕は「体を全体的に鍛えることで腕への負担を減らそう」という方向を選びました。
体の鍛え方が足りなかったのかもしれません。また、チームに合わせるために、無理をしすぎたということも確かにあったかと思います。これまではたまに右手に起こる程度だったのが、左腕にも現れ始めたのも大きな計算外でした。
腕のためには、日々安定した距離をコンスタントに距離を稼いでいくということが必要だったと思います。ただうちのチームは極端で、一日中漕いでいるという日もあれば、浮くだけでほとんど漕がないという日もありました。それらについても意見を出すべきでした。
何より、このようなリスクがあったことを支援者の皆さんに事前にお伝えしておくべきではなかったのかと思います。本当に申し訳ございませんでした。
また、1人で漕ぐという選択肢が残されたジョンも、義父が大きな心臓手術明けであり、また追加の手術が必要であるということから、ウィスコンシンの自宅へ帰ることを決めたようです。これにて、プロジェクトでの川下りは一旦終了となります。
一方で、当初から目的としてた映像の撮影ですが、必要な素材は十分に確保できたと考えています。日々変化する水の色、陽の光、自然の造形、野生動物など、今すぐにでもお見せしたいものがたくさんあります。海まで漕ぎきることには失敗しましたが、映像制作を実現するという点で、このプロジェクトはまだ成功しています。
予定の1ヶ月を前倒しして終了してしまった消防士支援のプロジェクトですが、僕自身にはまだ選択肢が残されています。
・手の回復を待って、1人でいけるところまで漕ぎ続ける
・出発地点のホワイトホースに戻ってユーコンの自然や文化についてより深く掘り下げる
・そのほか
海までの旅を断念してしまったことは、本当に悔しく、情けない限りです。
今は手の回復を待ちながら、今後について考えています。
まだ諦めません。
ですが、今は手を休息されることが必要のようです。
また、続報をお送りいたします。
引き続き見守っていただければ幸いです。
計画の変更、本当に申し訳ございません。
新居拓也