Far and Away
そこは
海なのか空なのか
砂浜なのか砂漠なのか
地球なのか見知らぬ惑星なのか
現実とも夢とも区別のつかぬまま
すべてが茫洋としていた
海の見えない街で人生の大半を過ごしてきたけれど、多少なりとも馴染みのある海は日本海。そんな人間にとって、太平洋岸の広大な砂浜は新鮮に映る。その日も、少しばかりの高揚感の中で、九十九里の砂浜に降り立った。雨は上がったばかり、あるいはまだ小雨まじりだったかもしれない。
少し荒れている波間に人影。よく見ると、何人ものサーファーたち。こんな天候で?と一瞬不思議に思ったが、これくらいならむしろよい波が立つのかもしれない。あたりに響く若い人たちの歓声を聞きながら、青い空・青い海・白いサーフボード…というありきたりのイメージに縛られている自分が少し可笑しくなった。
その時、後方に気配を感じて振り返ると、そこには全く想像だにしなかった光景が…
波打ち際を、馬がこちらへ向かってくる。一頭、二頭…全部で五頭。速歩の馬が一直線に連なっている。中ほどには、子どもの騎手がふたり。馬術の練習?いったいどこから?どこへ向かっているのだろう?などと、次から次と浮かぶ疑問を振り払うように、体が勝手に動いた。
手にしていたのはいつものライカではない。一眼レフと300mmの望遠レンズ。ピントはカメラ任せ。構図に集中してシャッターを切った。騎手のアップも押さえた。そして最後は、遠ざかる馬影を見送りながら一枚。
あのときの写真は手元にある。しかし、その写真を見てもなお、「あれは現実だったのか、それとも夢だったのか」と、考えてしまうのはどうしてだろう。
そこは
海なのか空なのか
砂浜なのか砂漠なのか
地球なのか見知らぬ惑星なのか
去っていったのは君なのか
それとも…