Report Vol.1 目次1.Remerciments2.I.さんに捧げる3.「おそとの世界へ」4.そんなみんなへ。5.刺繍のような1.Remerciments(御礼)思い切ってクラファン公開に踏み切ってから10日余りが経ちました。すでに目標額の45%のご支援を日本各地、またモロッコ他海外在住の方々からも頂きました。河原で手にすくった小石を水面に撒いたら、大小多くの水紋が静かに広がっていった感じです。皆さまのご支援に、まずは重ねて御礼申し上げます。日本では連日元旦の震災のニュースがまだ続く中、個人の出版プロジェクトには支援は得難いのではと思っていました。こんな時だからこそ、前向きな企画に勇気付けられますというお言葉をくださる方もおり、大変勇気付けられました。けれどこの間、悲しいお知らせにも遭遇しました。2.I.さんに捧げるお腹が空いてひもじくてひもじくて 泣きそうでいる時に 見たこともない 珍しい鳥たちが食べ物のありそうな場所を示してくれたり 危ない風が来るから気をつけてと 教えてくれたりしました-「はげたかの旅」よりI.さんは、そんな「珍しい鳥」のような方でした。2020年後半に一旦モロッコから帰国となり、国境閉鎖や子供の教育の都合でモロッコには戻れず、先が見えない中とりあえず滞在していた京都で出会いました。リサイクル陶器市でガラス製品を手にした私を見て、「ガラス好きなんか、だったらいいとこあるでー」と、いきなり地元の隠れ家(オアシス)的な素敵なステンドグラス教室に誘って下さり、その後数ヶ月間、そこに通ってセラピーのような時間を得るきっかけを与えてくれました。私はそこでモロッコタイルのような作品を作っていました。I.さんは過去モロッコにツアーでご旅行されたことがあり、丁寧に旅行記などもまとめられていたのを、私に読ませてもくれました。コロナ禍が明けたら私を訪ねてモロッコに再度来たいとも仰って、「はげたかの旅」の出版も楽しみにして下さっていました。昨年9月8日のモロッコ中部での大地震の直後には、大丈夫ですかとメッセージも下さいました。台風でご自身の田んぼが荒らされてしまい、大変な最中だったにもかかわらず、遥か遠くの私に気を使って下さいました。その方がいると周りが明るくなる、お日様のような方でした。新年のご挨拶、絵本プロジェクトの進捗、クラファン公開のお知らせをしても、いつもと異なりメッセージが既読にならず、心配しました。実は、昨年9月にお気遣いのメッセージを頂いていた2週間後に突然お亡くなりになっていたことが、数日後わかりました。一番絵本を手に取って頂きたかった方の一人でもあり、大変悲しく思っています。「モロッコの地震大丈夫でホッとしました。我が家は台風で土砂の入った稲刈りが昨日やっと終わりました。[…] 早く貴女の帰りを待っています。素敵な絵本も楽しみにしています。では I.」2023年9月10日、彼女から私宛の最後のLINEメッセージです。このプロジェクトは、I.さんと、遺されたご家族に捧げたいと思います。3.「おそとの世界へ」既に10名以上の方に、「特製ポストカード6枚組」の付いた絵本のリターンをご選択いただきました。今回のプロジェクトのために印刷したポストカードですが、うち3枚に「はげたかの旅」とは別の、最初にロリに挿絵をつけてもらった「おそとの世界へ」という絵本の中から3場面の絵を選びました。リターンの解説として、それら3場面の原典である「おそとの世界へ」も、この場で紹介させて頂きたいと思います。モロッコに来る前に住んでいたカンボジアで、まだハイハイをしている息子が猫用ドアから外に出ようとしたことがあったことから着想したお話です。こちらはカンボジアの風景に基づいて文章がふくらみ、挿絵を付けてもらって最終的に印刷に至ったのは息子が6歳の時、モロッコに引っ越した後でした。「はげたかの旅」より小さな子向けの想定で、日本語の特徴である擬音語(オノマトペ)を多く使いました。ロリも、挿絵には子供が好む明るい色(熱帯の色でもある)を豊富に使ってくれました。こちらも、外の世界への憧れ、旅と、最後は家族の許に戻るという点で「はげたかの旅」とプロットが共通していますが、よりシンプルで、ほのぼのとした絵本です。そしてこのお話にも、子供をケアするコウノトリが登場します。カンボジアのはインドトキコウ(Painted Stork)、モロッコのはシュバシコウ(朱嘴鸛、White Stork)と、種類は違いますが同じコウノトリ科の鳥で、私のプチ「コウノトリシリーズ」となっています。こちらは出版の予定もないので、やはりコロナ禍の自宅軟禁中に自分で朗読し動画にしたものを、ロリの承諾も得て公開します。編集者の校閲も経ない文章で、また自分の声が好きではないので恥ずかしいのですが、ロリの愛らしいイラストとストーリーを楽しんで頂けたらと思います。今回のご支援者の中には、カンボジア時代に知り合った方も多いので、風景を懐かしくも思っていただけるかもしれません(4分17秒)。4.そんなみんなへ。旅に出たいけど出られない 大好きな人のそばにいたいけどいられない そんなみんなへ。出版される「はげたかの旅」を開いて最初に目にされることになるのは、こんな献辞です。あ、と思った方。このメッセージを贈りたいと思う相手がいる方。リターンには贈呈を想定したサイン入り絵本3冊セットもあります。震災・戦争の被害者の惨状を伝える報道をスクリーン上で見ていると、彼らが辛苦の檻の中にいて、自分は檻の外で何も出来ずに無力に見守っているだけにも感じます。彼らにも、贈りたいです。5.刺繍のような絵本出版もそうですが、クラウドファンディングも初の挑戦です。ページを作るのも簡単で、宣伝用にサイトのQRコードも自動で作られました。若いスタッフの方々がどんな質問にも即答したり適所で助言をくれたりなど、後方支援体制も万全で、よくできているなあ、すごいビジネスモデルだなあと感心しています。QRコードを友人にシェアしたら、即、「フェズ刺繍みたい」と言われました。確かに。QRコードは日本の囲碁から想起されたと知ったのは、恥ずかしながらつい最近のことです。囲碁盤も方眼、幾何学文様が中心のフェズ刺繍のモチーフも、よく方眼紙の上に描かれていますので、似るのは自然なことなのかも。けれど、このプロジェクトのリターンに提供しているフェズ刺繍を作っている女性たちは、方眼ガイドラインも下絵も何もない、まっさらな白い布に自分の感覚だけを頼りに刺繍をしてゆきます。まさに、職人技。後日の活動報告で、この女性たちの仕事にも触れてゆきたいと思います。FIN