皆様、多くのご支援ありがとうございます。
今回も折り紙作家山本が、『時折2024』に収録されている作品の紹介をしていきます!
【時折2024 作品紹介】では、それぞれの月のテーマとなる12の作品について一つずつご紹介しています。
※作品写真は本番の紙で折る前の「試作」状態のものを含みます。商品に掲載されるものは紙質や色など、より見栄えのする状態になっているかと思いますのでご期待くださいませ。
今回の特集:10月掲載分「ネコ」
今回は『時折2024』クラファンページでのイメージ画像にも使われている「ネコ」のご紹介です。
ネコは僕が何度も取り組んでいる題材で、さまざまな構造やポーズでのアプローチを試みたことがあります。
今回収録されるバージョンは2021年に創作したもので、自分のネコの中でもお気に入りの作品です。
自作品の中ではかなり時間をかけて作っており、先輩の作家方による2つの作品の影響がなければ完成することはなかったと思います。
1つめは勝田恭平さんの「ペルシャ猫」です。
この凛々しい頭部の造形に影響されて、「自分もやってみよう」と頭部試作を作ったのが始まりでした。
緑のネコが当時僕の創作したものです。チャームポイントはまつ毛で、女性的な要素の目立つ可愛らしい造形になりました。
この構造をより大きい正方形に埋め込んで展開図を再構成すれば、一枚折りのまま全身を作ることができます。
しかし、しばらく格闘をしてみたもののパーツの接続や仕上げがうまく決まらず、結局完成はしないまま放置モードに入ってしまうことになりました。
このネコが試作ボックスの中に放り込まれて半年ほどが経った時、2つめのきっかけとなった作品である神谷哲史さんの「ネコ後ろ姿」をX(旧Twitter)で目にしました。
後ろからのシルエットを描いたこの作品を見て、「こういうアプローチがあるのか」と感心させられました。
そして久々にあのネコの頭部試作のことを思い出します。
僕は作った頭部に、多くの折り紙作品にならって横から見た姿の体を接続しようとしていました。その固定観念を取っ払って、あの頭部に合うポージングを探してみようと思い立ったのです。
ここで初めて、「座っているネコを正面から見た様子を折ってみよう」と、本作の構想を固めることができました。
アイデアが固まってからはスムーズで、頭部に合わせて上品な装飾を足しながら数日で構造をまとめきることができました。
本番で用いた用紙はもともと真っ赤な紙で、スプレーを用いて白く彩色しています。折り紙用紙以外で両面の色が異なる紙というのは意外と少なく、ときどき用いている手法です。
今回は2人の先輩作家の作品からインスピレーションを受け、完成までこぎつけることができた「ネコ」の紹介でした。
それでは、また次回!
文:山本大雅