皆様、多くのご支援ありがとうございます。
今回も折り紙作家山本が、『時折2024』に収録されている作品の紹介をしていきます!
【時折2024 作品紹介】では、それぞれの月のテーマとなる12の作品について一つずつご紹介したいと思います。
※作品写真は本番の紙で折る前の「試作」状態のものを含みます。商品に掲載されるものは紙質や色など、より見栄えのする状態になっているかと思いますのでご期待くださいませ。
今回の特集:12月掲載分「ペガサス」
みなさん、折り紙してますか?
今日のテーマは時折プロジェクトのメイン画像、およびラストの12月を飾る作品である「ペガサス」です。
ペガサスの特徴は、何といってもその大きな翼です。
この翼をいかに大きく折り出しつつ、すっきりとした造形にするか。
それが創作時に最も重要視していたポイントでした。
この点を叶えるため、この作品ではとある工夫をしています。それは「カド配置」についてです。
「カド」とは、折り畳んだ時に尖る部分を指します。「頭になるカド」、「翼になるカド」といった言い方をします。カド配置とは、正方形のどの部分が、どの部位になるかを示す大まかな位置関係のことです。
ペガサスを素直に作ろうと思った時、通常のカド配置はこのようなパターンが考えられます。
難しい説明は省きますが、何となく感じてほしいのが、「完成形において近いパーツ同士は、展開図上でも近い位置にある」という、言ってしまえば当然なことです。
どの例でも前脚の近くには頭や翼がありますし、尾の近くには後脚があります。
そしてこれが本作のカド配置です。
先ほどの考えを踏まえてパーツ同士の位置関係を見てみると、独特な所が見えてきます。
それは、翼の位置です。
紙の下の方には、頭や前脚など体の前の方の部位が固まっています。それに対して翼は、ポツンと上の方にありますね。
実はこの珍しい配置によって、「翼を大きく折り出す」という目標が達成されるのです。
一般に、大きなパーツを作り出すには、紙の領域を大きく消費します。大きな折り鶴を作るのには大きな紙がいるのと同じで、大きな翼を作るためには他の部位に比べてたくさんの紙の領域を割り当てる必要があります。
もういちどカド配置の図を見ると、まるで翼だけ孤立したように、周囲に他のパーツがないのがわかると思います。これにより、この作品では翼に使える領域が増え、当初の目標通りに大きな翼を作ることに成功しているのです。
当然、このように翼を離れたところに置く方法は他にも考えられます。ただし、それらの多くは紙の中に不要な領域が出てしまったり、折り方が難しくなったりしてしまいました。その中で、最もデメリットが少ないのがこのやり方でした。
この作品紹介も明日でいよいよ最後となります。また次回お会いしましょう!
文:山本大雅