随想「つつじ野」2024年 8月7付掲載分
■タイトル:『父の「絵」のこと』
はじめまして。
今日から2ヶ月間、水曜日を担当させて頂く熊倉と申します。南中里で父より引き継いだ広告会社を経営しております。父は『絵』が好きで、生前、会社経営の傍らこの石巻地方の川辺や海辺の風景画を数多く描きました。当石巻かほくさんに、毎月月初めに絵画を大きく扱ったカレンダーによる広告特集を掲載して頂いてますが、あの絵を描いたのが父・熊倉保夫です。
父の絵は七十年代・八十年代に描かれたものが多いです。中瀬には造船所があり、川岸のデパート脇の川には漁船が何艘も列になって係留されていたあの頃の石巻が描かれています。
十三年前。震災がありました。当地方の風景は一変してしまいました。震災直後、実家で被災し、半分泥を被った父の代表作の一つで日和山から見た中瀬と旧北上川を描いた油絵『青景』を自分の家に持って来て、玄関脇に置いていました。ある日、復旧作業で家を訪れた業者さんが、父の絵の前で泣かれていました。
「この内海橋を渡って職場に通っていたんです…。」と一言。内海橋の上に船や車が打ち上げられていた震災間もない頃です。破壊された街の中、ひととき、父の絵を見て日常が普通にあった頃を思い出されていたのかもしれません。しばし絵を眺めていらっしゃいました。その時、思いました。「もしかしたら父の絵が震災の後では、また別の意味を持つのかもしれない。」と。
もし、地域の皆様にとって父の『絵』が少しでも役に立つとしたら、それを自分はしよう!と思い立ち、この十年、仲間達と様々な活動をして来ました。
今回のつつじ野では父とその『絵』にまつわるエピソードをご紹介させて頂きます。