
しゅりの森の木漏れ日が、やさしくふかふかの土を照らす頃。
この森の主役である鶏さんたちは、今日も元気いっぱいに地面を掻き分け、
思い思いの時間を過ごしています。
そんな中、最近とても愛らしい、
そして私にとって何よりも胸が熱くなる瞬間が訪れるようになりました。
森の中で彼女たちの様子をそっと見守りながら、
私が一歩近づいて手を伸ばしたときのことです。
今まで元気に走り回っていた子が、突然ピタッと足を止めます。
そして、スッと姿勢を低くして、背中を平らに保ちながら、
両方の羽を少しだけフワッと広げて見せるのです。
上目遣いでこちらを見つめ、じっと動かないその姿。
まるで「ねえ、なでなでして!」と甘えてくれているような、
本当に愛嬌たっぷりのポーズです。
思わず「可愛いな」としゃがみ込み、
その温かい背中を優しく撫でてあげたくなる衝動に駆られます。
しかし、ただ人懐っこくなったわけではありません。
実はこの愛らしい仕草、いよいよ彼女たちが
「初めての卵」を産む日が近づいているという、決定的な「サイン」なのです。
これは「しゃがみこみ」と呼ばれる行動。
この森にやってきた彼女たちが、大自然の風と光の中で逞しく育ち、
体の中のホルモンバランスを劇的に変化させている証拠です。
卵巣や卵管といった命を育むための器官が、
彼女たちの小さな体の中でしっかりと発達し、準備を整えています。
「私、もう生命を生み出せる体に仕上がったよ」
言葉を持たない彼女たちが、全身を使ってそう教えてくれている、
とても神秘的で嬉しい合図なのです。
ふと見上げれば、頭の上のトサカも以前よりずっと大きく、
生命力を感じるような鮮やかな赤みを帯びてきています。
いよいよ、本格的な産卵期の幕開けがすぐそこまで迫ってきました。
小さな生命の力強い成長を目の当たりにするたび、
生命の循環に立ち会う生産者としての深い喜びを噛み締めています。
でも、ここで決して焦ってはいけません!
このしゅりの森自然農園で共に暮らす、大切な300羽の子どもたち。
その中の1人や2人の「おませさん」がこのサインを見せてくれたからといって、
急いで次のステップへ進むのはまだ早いのです。
全体をじっくりと見渡して、
群れの4割以上がこの「なでなでして!」のポーズをとるようになるまで。
それぞれの成長のペースを尊重し、足並みがしっかりと揃うのを待つことが、
彼女たちへの一番の思いやりになります。
あの子も、この子も、みんなが揃って
「生命を生み出す準備」を整えたのを見極めてから、
いよいよ体への橋渡しとなる新しいごはん
プリレイヤー用飼料(産卵準備段階用飼料)へと切り替えていきます。
生命と向き合う生産者として、我が子の成長を喜ぶように
はやる気持ちをグッと抑える我慢の時。
今日もただ静かに、そしてあたたかく、
彼女たちの成長に寄り添っていきたいと思います。
それではみなさん、今日もよい一日をお過ごしください。



