→「みんなとつながる上毛かるた」とは?(1)から続きます。
いろんな可能性を持った「みんなとつながる上毛かるた」ですが、そもそものきっかけは、視覚を失った三輪代表が群馬県立点字図書館に行ったことから始まります。
三輪代表は彫刻家としてのキャリアは長いですが、全盲になってからはまだ数年で、実は点字は読めません。点字図書館は点訳(視覚障害者のために文字を点字に翻訳すること)された書籍を借りられるところですが、最近はボランティアの人たちによって朗読された書籍の音源(音訳図書または録音図書と呼ばれます)も視覚障害者用に用意されているのです。また、まだ視力が少し残っている弱視と言われる状態の方に文字を大きく拡大して印刷した本(拡大図書と呼ばれます)なども借りられます。
視覚障害者の方向けのイベントなどもあり、点字版の百人一首の体験会をやっていて、その案内役の群馬大学教育学部の学生さんの斉藤玄志さんと点字図書館館長の細川智子さんとで、群馬県人なら誰でも知っている上毛かるたを視覚障害者でも楽しめるようにできないか考えていたそうなんです。そこに三輪代表とメノキのメンバーが点字図書館に訪れた際に、細川館長からそのお話を伺って、メノキも一緒に考えてみようか、と軽い気持ちで話に乗ったのがそもそもの始まりでした。
メノキは一般社団法人として設立されてすぐに、地元企業や大学、美術館の学芸員の方たちや地域芸術祭の人たちなどと、「視覚障害者と晴眼者のための共生芸術活動環境創造プロジェクト実行委員会」というのを立ち上げていて、そこでこの話をしたところ、委員会のメンバーの株式会社ジンズ地域共生事業部、群馬大学教育学部美術講座、中之条ビエンナーレの方たちも興味を持ってくださり、一緒に考えてくださることになりました。
最初はかなり自由な発想で、触覚だけでなく嗅覚なども取り入れて、上毛かるたにいくつも出てくる群馬の温泉の匂いの違いを使うのはどうだろう?とか、石や木などの手触りや、音を使うのはどうだろう?とか、本当にさまざまなアイディアが出ました。実際に石や木を加工してみたり、箱に入れた群馬の特産品の音を聴く、といった実験もしました。
ただ、あまりいろんな要素を入れると、一つのパッケージにするのが難しく、とりあえず、視覚障害者の当事者でもあり、彫刻家という造形の専門家でもある三輪代表が、「まずは自分が作ってみるよ」と宣言し、制作に入ったのが、2022年の春頃でした。
明日に続きます。