ー はじめに ー
私たち日本彫刻会は、「触れる鑑賞」と視覚に障がいのある方々に向けた支援において、もっとも実践を蓄積してきた美術団体です。その歴史は、「ユニバーサル」という言葉がまだ一般的ではなかった1967年まで遡ることができ、これは国際的にみても最初期の大きな支援活動にあたります。
海外に目を向ければ、視覚に障がいのあるアーティストや学芸員が活躍しています。本会では「触れるアート」の可能性を広げるべく、触れる鑑賞教室に加えて、2023年からは盲学校・視覚特別支援学校の子どもたちの作品展示を始めました。活動は少しずつ広がりをみせており、2024年の第53回日彫展では、東京、神奈川、大分の盲学校・視覚特別支援学校からの作品を会場内に展示予定です。
また、2019年からは、20歳以下を対象とした「U-20日彫展」を開催し、未来の作家を応援してきました。絵画のコンクールはたくさんありますが、立体の方は多くありません。子どもたちの創造性を受けとめられる場として始まった「U-20日彫展」。今では100名をゆうに超える出品があり、2024年、第6回展を迎えます。
ー 知ってほしいこと ー
「触れる彫刻鑑賞のこれまで」
「ユニバーサル・ミュージアム」が提唱された2000年代以降、国内でも徐々に「触れる鑑賞」の機会は広がってきています。けれど、県立美術館のレベルでみても、それが日常のプログラムとして定着しているところは希で、見えない人・見えにくい人にとっては未だに美術鑑賞に距離があるのが現状です。コロナ禍の「非接触」を越えて、今後はますます機会の拡大と、「触れる質」の向上が求められるところです。
私たち日本彫刻会では、2020年こそ美術館の臨時休館のために断念したものの、2021年・2022年にも独自のプログラムで触れる鑑賞教室を実施してきました。2020年はほとんどの視覚特別支援学校でアートに触れる機会が失われていたため、2021年の鑑賞教室は特別なものとなりました。
日彫展は、彫刻作家たちが自ら企画し、作品を並べて会場をつくり、運営している展覧会です。鑑賞プログラムも独自のものです。ここ20年間、実績としては「触れる鑑賞教室」を60回以上開催し、大人も参加可能なタッチツアーも含めると、触れる鑑賞の参加者は累計1000名に達します。
ー 実現したいこと ー
「触れるアートを広げたい」
「みんなが楽しめる彫刻展をつくりたい」
こうした取組を継続して、その情報を国内外に発信することで、「だれもが楽しめる美術館・博物館」をもっと身近なものとしていくことが大きな目標です。そのために、まず私たちがやるべきことは「触れる鑑賞を充実させること」と、「障がいの有無を超えて作品づくりの喜びに触れる機会を増やすこと」だと考えます。「U-20日彫展」と「触れる鑑賞教室」は別々の企画として運営されていますが、その境目にある壁を越えることこそ私たちの抱く理想で、子どもたちが喜ぶ顔がモチベーションです。
このプロジェクトは鑑賞教室の継続、視覚に障がいのある子どもたちの作品展示コーナー設営、U-20日彫展の拡充を目的としています。将来的には、全国の盲学校・視覚特別支援学校の子どもたちが、U-20日彫展に当たり前に挑戦できるような、ユニバーサルな彫刻展の開催を目指したいと思ってます。その第一歩として、視覚に障がいのある子どもたちと共に作品づくりを楽しむワークショップにも取り組み始めています。
ー 応援してくださる方々 ー
毎年の触れる鑑賞教室とU-20日彫展。参加してくれた子どもたちからのメッセージが私たちの励みになっています。そして、たくさんの方々の応援とご支援に勇気づけられて本会はここまで活動を継続してきました。今回のプロジェクトを応援してくださる会外の方々を、一部ここにご紹介いたします。お名前を挙げさせていただいた方々は皆、触れるアートの充実や、ユニバーサル・ミュージアムの実現に取り組み、アートの未来を支える方々です。
広瀬浩二郎さん(国立民族学博物館)、半田こづえさん(明治学院大学)、篠原聰さん(東海大学)、佐藤直子さん(筑波大学附属視覚特別支援学校)、青松利明さん(筑波大学附属視覚特別支援学校)、武井俊彦さん(月刊視覚障害編集室)、岡野晃子さん(映画監督・元ヴァンジ彫刻庭園美術館副館長)、日本点字図書館 様、アーティゾン美術館 様、鋸山美術館 様、ギャラリー青羅 様、公益財団法人斯文会 様、黒谷美術株式会社 様、株式会社日本金属工芸研究所 様、大丸鐵鋼株式会社 様
ー 資金の使い道と実施スケジュール ー
日本彫刻会には現在、会員約240名と会友約30名が所属し、これまでの活動は全て集められた年会費(会員:6万円)をもって行われています。しかしながら、活動の広がりに対して会員数は近年減少傾向にあり、鑑賞教室やU-20日彫展の更なる充実化には十分な予算が充てられないのが現状です。実際、ここ数年の鑑賞教室に際しては、交通費の支給も辞退する会員の自発的協力によって支えられてきました。
本プロジェクトで集まった資金は、下記の内訳にて活動費に充てられます。
・展覧会費:約 30万円 *
・U-20日彫展関連費:約10万円
・鑑賞教室開催費:約 8万円(申込60名を想定)
・地方巡回展作品運送費:約 7万円
・制作ワークショップ関連費:約 5万円
* 展覧会費は、日彫展開催に関わる「会場費・図録目録発行費・印刷費・通信費・広報費」計約 600万円の「5%」として算出させていただきました。
また、実施スケジュールの概略は下記の通りです。
・2024年
4月 第53回日彫展、第6回U-20日彫展、触れる展示の開催
4月下旬 触れる鑑賞教室(4校予定)
5月 次年度に向けたワークショップ準備開始
6月〜 地方巡回展
11月 視覚特別支援学校でのワークショップ
12月 鑑賞教室申込受付
・2025年
1月 第54回日彫展準備開始
2月 第7回U-20日彫展作品募集
3月 展覧会広報物等発送
ー 寄付型プロジェクトとリターン ー
本プロジェクトは寄付型のクラウドファンディングで行うこととしており、対価性のあるリターンをお届けすることができません。リターンとしては、お礼状と展覧会のご案内、会報等の情報誌を送らせていただきます。本活動にご賛同いただき、ご支援いただいた皆様のお名前は、本会ホームページ上にてご紹介させていただきます(ご希望の方のみ)。
本プロジェクトへのご支援は、「公益社団法人 日本彫刻会」への寄付金となり、弊団体が寄付金の受付及び領収証発行を行います。このプロジェクトの寄付は寄付金控除の対象になり、一定の条件のもと、所得控除の適用を受けることができます。「寄附金控除」をお受けいただくためには、確定申告の際に、公益社団法人 日本彫刻会 が発行した領収証をもって確定申告をしていただく必要がございます。領収証はCAMPFIREではなく当団体が発行し、2024年12月の郵送を予定しています。
ー さいごに ー
「ユニバーサル」をはじめ「ダイバーシティ」や「インクルーシブ」に関する支援は、残念ながら大きなイベントに合わせた「一過性の取組」となることが多いように感じます。本会はこれまで、作家としての喜びに基づき、他の経済的支援に関わらず活動を続けてきた実績があります。このプロジェクトも、本会が存続する限り継続的に行っていく予定です。皆様からの温かいご支援をいただければ幸いです。
第53回日彫展:
・会場 東京都美術館ギャラリーA・B・C
(台東区上野公園8-36)
・会期 2024年4月18日(木)〜 5月2日(木)
開場時間 9:30 〜 17:30
* 初日は12時から、最終日は15時まで
公益社団法人 日本彫刻会
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場1-29-18
レジョン・ド・諏訪202
[TEL] 03(3209)1861
[FAX] 03(3232)0557
設立趣意:
戦前よりすでにわれわれ彫刻家は、一体となってわが国芸術文化の発展に寄与してきたが、終戦後いち早く高度文化国家建設の一翼をになうべくたち上がり、昭和22年「日本彫刻家連盟」を結成、彫刻の研究、展覧会の開催、彫刻資材の供給、機関誌の発行等を行い、わが国美術界に貢献するところまことに大なるものがあった。
昭和28年同連盟を「日本彫塑家倶楽部」と改め、さらに昭和37年には「日本彫塑会」と称し、引続き彫刻の研究および普及につとめるとともに、清新にして、健全なる日本的芸術の振興を期し、公募による日彫展のほか、野外展等各種展覧会の開催等、彫刻芸術を通じわが国文化の向上に力を尽くしてきた。
爾来、その基盤も確固たるものとなるに及び、昭和45年組織を社団法人とし、昭和55年広義の理解により「日本彫刻会」と改称、平成22年に公益社団法人に移行し一貫して、わが国芸術文化なかんずく彫刻芸術の一層の発展向上を目途としてますます活発な研究、創作活動を展開せんとするものである。
ホームページ(https://www.niccho.com)も併せてご覧ください。
最新の活動報告
もっと見る作家紹介③
2024/05/17 11:23作家紹介の第3回は、堀内有子さんです!触れる鑑賞教室でも人気だったこの作品のタイトルは《つむじかぜ》。風を受けたコートはふんわりと、それをとめるボタンはぷっくりと、メリハリがありつつ愛らしく、思わず触りたくなるような形が特徴です。触れる鑑賞教室では、盲学校・視覚特別支援学校の事前事後学習向けに解説文を作っています。この作品では、そのイメージとして下記のような文章が記されました。ーーーーーつむじかぜ堀内 有子(ホリウチ アリコ)テラコッタ130×55×40くるくると木の葉を舞い上げるつむじかぜの真ん中に入ってしまうと、目を開けてはいられない。後ろから風を当てられると、コートは背中に張りつき、前へと大きく膨らむ。雲も巻き上げられる。「なんだかその場のステージの主役になったような、ちょっと嬉しい、ちょっと楽しい気分ものせて」という作者の言葉は、日常を楽しむ自身の姿も表している。ーーーーー解説文は点字版と、大きめの文字で印刷された墨字版との2種類を製作しています。子どもだけでは無く、視覚に障がいのある大人の方々にも実は人気の解説文。クラウドファンディングによるご支援は、こうしたものの準備にも使わせていただいております。改めて、皆さまからのご支援に感謝申し上げます! もっと見る
作家紹介②
2024/05/05 07:43作家紹介の第2回は、片山博詞さんです!片山さんは福岡在住の彫刻家で、彫刻作品に触れる活動を長く続けてきた作家の一人です。第53回展では、肩にリンゴを乗せた女性像の《夜想曲》を出品しました。触れる鑑賞教室に参加した子どもからは、下記の感想が寄せられました。「暗く静かな夜空に、リンゴのように赤く華麗な夕焼が見える風景が思い浮かび、ゆったりと流れるような音楽が頭の中に流れてきた」 もっと見る
鑑賞教室を実施しました!
2024/04/29 16:244/23と4/26、今年も「触れる鑑賞教室」を4教室実施しました!触れる鑑賞教室では、一つ一つの作品をじっくりと、長いときには10分以上かけて、手で触りながら鑑賞していきます。今回も子どもたちとの対話を楽しみにしている会員が、全国からたくさん集まってくれました。遠方ではなんと熊本や大分、兵庫、大阪から!会員にとっても、子どもたちと彫刻を共に楽しむ大事な機会になっています。第53回展での鑑賞教室の様子(2024年4月26日)色々な素材による様々な題材の作品たち。みんな自分のお気に入りの作品を見つけてくれました!そんな中でも、特に人気だったのが、山本将之会員による《ベイビーハーフ》!そのほっぺは「まるい」という言葉だけでは表しきれないぷっくり感です。《ベイビーハーフ》陶山本 将之 もっと見る
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