はじめに~ご挨拶
CAMPFIREをご覧の皆さま、はじめまして。
前回のプロジェクトでご支援を賜りました皆さま方には厚く御礼申し上げます。
わたしはラポロアイヌネイションの差間啓全(さしまひろまさ)です。
ラポロアイヌネイションは、北海道東部、浦幌十勝川の流域に先祖代々暮らしているアイヌの団体です。
わたしたちの先祖は十勝川流域のコタンで川や森の恵みにより暮らしていましたが、明治政府になって、川でのサケ漁を一切、禁止されてしまいました。サケはアイヌにとっては食料であるばかりでなく、アイヌの暮らしの基礎であり、文化そのものです。
そこで、わたしたちは、札幌地方裁判所に提訴して、先住権としてのサケ捕獲権を求めてたたかっています。
わたしたちは昨年5月、5か国から8名の先住民たちを招いて、漁業権をめぐる国際シンポジウムを開催しました。
この国際シンポジウムでわたしたちは多くのことを学び、また、世界の先住民は今もたたかっている!という事実に大きな衝撃を受けました。
世界のたたかう先住民との連帯に励まされたわたしたちですが、残念なことに会長の差間正樹は今年2月、病に倒れ、他界しました。
残されたわたしたちはまだまだ未熟ですが、なんとか会長の遺志を受け継いで、さらにたたかいを継続していこうと団結を強めています。
今年5月にはオーストラリアで、第2回国際先住民漁業権シンポジウムが開催されることになりました。
わたしたちは、この国際シンポジウムにぜひ参加し、先住権のたたかいを続けるとともに世界のたたかう先住民と連帯していきたいと考えています。
どうか皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
ラポロアイヌネイション 差間啓全
わたしたちの活動
先住権の闘いにつながるラポロアイヌネイション(旧浦幌アイヌ協会)のこれまでの活動をご紹介します。
遺骨返還運動
わたしたちは、大学の研究者たちによって墓地から持ち去られ標本として保存されていた先祖の遺骨100体あまりと副葬品を、裁判によって北海道大学、札幌医科大学、東京大学などから取り戻し、コタンの墓地に再埋葬してきました。
そして、毎年、カムイノミ・イチャルパ(神に祈り先祖を慰霊する儀式)を捧げることによって、自分たちがこの地域に生きるアイヌであることを一層認識できるようになり、先祖とのつながりを強く感じるようになりました。
サーモンピープルを訪ねる旅
また、わたしたちは先祖のように地元の川でサケを獲れるようになりたいと願い、2017年5月、 アメリカにサーモンピープル(サケの民)を訪ねる旅に出ました。ワシントン州のインディアン・トライブを訪問して、漁業権回復の闘いと成果について多大な学びを得て帰国しました。
サケ捕獲権確認訴訟
わたしたちは今、先住民には地元の川でサケを捕獲する権利があることを認めるよう、国と北海道に求めて、裁判に訴えています。
先住権に基づく日本で初めてのこの訴訟は大きな関心を呼び、市民の皆さまによる支援に支えられています。
第一審は結審し、2024年4月18日に判決が予定されています。
第1回先住民国際シンポジウム開催
先住権というのは、植民地国家が成立するはるか以前から各地域において伝統的、慣習的に使用する土地や資源に対して認められる集団的権利です。
そこで、わたしたちは世界の先住権について学ぼうと、2023年5月、浦幌町で国際シンポジウム「先住権としての川でサケを獲る権利~海と森と川(イオル)に生きる先住民の集い」を開催しました。
このシンポジウムではオーストラリア・台湾・カナダ・フィンランド・ アメリカにおいて、漁業権の回復を果たしてきた先進的な先住民から、世界の先進例を学ぶことができました。
しかし、これらの国では、たとえ憲法や法律に先住権が明記されていても、今もなお、自由な漁猟は認められず、漁に対する不当な干渉が行われたり、逮捕・拘束され、裁判などでたたかったりしている例が多くあります。
世界の先住民もまた、わたしたちと同じように、権力を相手にたたかい続けていることが明らかとなったのです。
わたしたちは先住民同士つながりながら、これからも共にたたかい続けていくことを確かめ合うことができました。
わたしたちと各国の先住民の共通の思いは、国際シンポジウム終了後、海外ゲストと協議してまとめあげた「2023ラポロ宣言」という共同声明に、ひとつの成果として結実しました。
また、国際シンポジウムで語り合った成果を「つながろう、たたかう世界の先住民!」という報告集にまとめ、出版しました。
海外ゲストの方々の力強い講演内容に加え、ラポロアイヌネイションのメンバーも交えた車座トークの模様も盛り込んだ臨場感ある一冊に仕上げることができました。
今年2月に逝去した会長の差間正樹が最後に病床で手にしたのが、刊行されたばかりのこの報告集だったのです。
国際シンポジウムで先住権回復について世界の先住民と語り合いたい
サウスコーストの海の人であるダニー・チャップマンさんたちが開催してくださる、この第2回国際シンポジウムで、わたしたちは、各国の先住民と共に、より実践的・戦略的な先住権回復運動の取り組みについて語り合い、学びたいと考えています。
わたしたちは今、サケ捕獲権確認訴訟を継続中ですが、裁判以外の場でも、先住権についてもっと知っていただきたいと願っています。
わたしたちの思いを大勢の方々に認知していただくことが、国や北海道に強く訴えかけることにつながっていくと信じています。
第2回国際シンポジウムの概要
タイトル:国際シンポジウム2024 先住権としての漁業権 in オーストラリア
South Coast International Indigenous Fishing Symposium
開催期間:2024年5月24日(金)~26日(日)
開催地 :サウスコーストのワルブンジャ・クランの土地にあるオーストラリア国立大学・キオロアキャンパス
主催者 :ウォルブンジャ・カントリー、サウスコースト・アボリジニ漁業権グループ
後 援 :オーストラリア国立大学、ウーロンゴン大学、アコーホテルズ、産業・漁業省
参加者 :ラポロアイヌネイションメンバー2名
2023国際シンポジウム共催者、サケ捕獲権訴訟弁護団長、通訳、ボランティアスタッフなど6名
応援メッセージ
アイヌは日本の近代国家に先立ってアイヌモシリ(蝦夷地)に先住してきた人たちです。明治政府の同化政策に晒されて、民族としての誇りや文化を否定されました。先祖の遺骨が持ち去られ、サケの捕獲権も奪われました。
それらの権利を回復しようとする運動が始まりました。日本社会に住む様々な人々が互いの居場所を尊重して生きてゆく豊かな社会をつくろうではありませんか。
オーストラリアで開催される世界の先住民と連帯する国際シンポジウムを成功させたい。
ラポロアイヌネイションへの応援をよろしくお願いします。
◆ 殿平 善彦 さん
北大開示文書研究会共同代表
一乗寺住職
資金の使いみち
みなさまからいただくお金の使いみちとして、以下の経費を見込んでいます。
〇渡航費・滞在費 : 約100万円
〇付随費用(各地のアボリジナルコミュニティの視察・交流費、通訳謝礼など、通訳機材、そのほか)
*ラポロアイヌネイションのメンバー以外の同行者は自費による参加です。
: 約70万円
〇リターン費用 : 約30万円
本クラウドファンディングプロジェクトと並行して、篤志家の皆さまを募り、支援をお願いしています。
リターンのご紹介
メールによる心を込めたお礼メッセージ、ラポロアイヌネイションオリジナルグッズ、メンバーの手によるアイヌ文様刺しゅう作品、わたしたちの活動をご紹介するDVD、書籍などをご用意させていただきます。
詳しくは、「リターン選択欄」をご覧くださいませ。
リターン発送について
2024年7月下旬ころを予定しています。
募集方式について
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
ご協力費について
クラウドファンディングのシステムの都合上、ご支援時に別途ご協力費(12%+税)をいただいております。
終わりに
わたしたちは世界の先住民と連帯しながら、先住権回復活動を地元で息長く続けていく覚悟です。
第1回国際シンポジウムでの経験を、また、この第2回国際シンポジウムで得られるであろう知識や経験も、北海道各地で暮らす他のアイヌ民族との間で広く共有していかねばならないと考えています。
わたしたちアイヌの先祖は、地元の川でサケを捕獲して主要な食糧とし、交易品として暮らしてきました。
地元の川でのサケ捕獲権の回復は、自然資源をかてとする持続的な生業を可能にするでしょう。地元での自然環境の保全・復元は、そのために不可欠な活動と位置づけられると思います。
この取り組みを、サケの自然繁殖環境の復元をはじめ、川や森や海の環境改善へとつなげたい、とわたしたちは願っています。
最後に、「2023ラポロ宣言」の末尾を飾ったオーストラリアのアボリジナルの漁師、ダニー・チャップマン氏の言葉を引用させていただきます。
「この国際シンポに集まった私たち先住民のストーリーは決してこのシンポジウムで終わるものではありません。これからも私たちは闘い続けていく必要があります。私たちはお互いに連帯していく必要があります。また世界にも伝えていきたいと思っています。私が皆さんに伝えたいことはこの闘いを続けましょうということです。ぜひこれからもつながっていければと思います。」
みなさまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。
もっと知りたい方へ
アイヌを取り巻く法的現状
2007年、日本を含む世界中の国々が賛成して「先住民族の権利に関する国際連合宣言 (UNDRIP)」が採択されました。
それを受けて日本の国会で成立したアイヌ施策推進法 (2019年)は、アイヌ民族を「日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族」と初めて明記しました。
しかし、土地や自然資源に関わる先住権は一切認められていません。
アイヌ民族とサケ
毎年秋になると、必ず大群をつくって海から川をさかのぼってくるサケは、かけがえのない自然からの恵みです。
アイヌは敬意を込めて、サケをカムイチェㇷ゚(カムイ=神が与えてくれる魚)と呼びます。
およそ1万年前から浦幌十勝川のそばで暮らしてきた先祖たちは、川で自由にサケを獲って豊かに暮らしていました。
古来、サケはアイヌにとって主要な食料であり、交易品としての経済的基盤でした。
漁法、調理法、保存法、また宗教的儀礼などを含めた「サケ文化」が育まれ、アイヌ文化の根幹を占めています。口承文学、祭儀などアイヌの宗教的、精神的世界も、サケを巡って形づくられてきたものが少なくありません。
しかし19世紀後半、明治政府が主導する「北海道開拓」が始まると、川でのサケ漁は一方的に禁止され、現在も川でのサケを獲れば、先住民族アイヌであろうと「密漁者」として検挙されてしまいます。
なぜいま先住民国際シンポなの?
アイヌは大昔から蝦夷が島(現北海道)や周辺の地域に暮らし、コタンと呼ばれる集団ごとに各地を支配していました。独自の言語、口承文化など独自の文化と伝統を持ち、豊かな自然資源からその恵みを受けていました。
明治になって政府は、それまで「外国」とされていた蝦夷地を「無主の地」として入り込み、アイヌから土地や自然資源を奪いました。
また、アイヌは日本人として、独自の文化を否定され、自然資源への権利も和人と同じという理由から否定されました(同化政策といわれています)。
しかし、70年代以降、世界中で列強諸国から奪われた土地や自然資源への権利を回復する動きが強まりました。アメリカでは漁猟権は「インディアンのサケ捕獲権は空気のようなもので当然に認められる」とされ、トライブと呼ばれる各地の集団の権利が認められるようになりました。カナダ、オーストラリア、フィンランドなどでも徐々に集団の様々な権利が認められるようになりました。国連は2007年に先住民族の権利に関する宣言を採択し、先住権をはじめとする先住民族の権利の回復を求めました。
わたしたちラポロアイヌネイションも、かれら諸外国の運動に習い、先住権として自由にサケが獲れる権利を求めて訴訟を起こし、明治以降絶えていた地域のアイヌ文化の復活に取り組んでいます。
海外の先住民族の取り組み
北米インディアン、カナダ・アラスカのハイダ族、北欧のサーミ、オーストラリアのアボリジナル、台湾原住民族など、世界の先住民は、過去から現在に至るまで先住権の回復の戦いを続け、大きな権利回復を成し遂げてきています。
一例を挙げると、アメリカ北西部ワシントン州ビュージェット湾周辺に点在する20のインディアントライブ(先住民族団体)は、「サーモンピープル」と自称し、サケ漁を生業として暮らしています。彼らはワシントン州や連邦政府と交渉を行いながら、獲り過ぎ防止のために漁獲量を厳格に管理し、サケの遡上できる河川を維持するために生態系保護のための組織や研究室を作り、科学的なアプローチで持続可能な漁業を実践しています。
地元のエルワ川では、関係機関とともに、サケの遡上を阻んできた2つの古いダムを爆破・撤去し、生態系を復元しました。
これらの成果は、数十年にわたる息の長い権利回復運動の上に実現されたことです。
環境保護の取り組み
わたしたちが暮らす十勝地方をふくめ、北海道の川に帰ってくるサケたちは、じつは多くが「人工孵化増殖事業」によって生産された放流魚です。かたや、アイヌ民族の祖先たちが過去1万年以上にわたって利用してきたカムイチェㇷ゚=サケは、いうまでもなく、自然産卵で生まれる野生魚たちでした。浦幌十勝川は過去数十年の間に大規模な改修工事を受け、サケの自然繁殖地としての環境は著しく劣化しています。
わたしたちはサケ捕獲権回復の前提として、流域の天然林を守り、川が注ぎ込む海の生態系を豊かにしていきたい。川・森・平原・海の生き物の生息環境を復元するために、自然保護団体や科学者などと広く連携していきたいと考えています。
自然環境の復元・保全の権利もまた、アイヌ先住権の重要項目です。
最新の活動報告
もっと見るプロジェクト終了のご報告と御礼
2024/06/15 08:49こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
国際シンポジウム現地からのリポート!
2024/05/26 22:48クラウドファンディング募集期間もいよいよ残り5日間となりました。本日現在、支援者さま46人、支援総額388,000円(19%達成)でございます。国際シンポジウム2024 先住権としての漁業権 in オーストラリアがスタートしました。参加メンバーからの現地リポートをお伝えします。5月23日、シンポのプレイベントとして、ラペルローズのヤララ湾へボラ漁見学に訪れました。ここはアボリジナルの人々が最初に白人と接触した地です。かつて、この地の先住民であるダラワルの人々は入植してきた白人にボラ漁の方法を教えましたが、1970年代に湾のボラ漁が白人に規制されてしまい、それ以来40年以上ボラ漁ができなかったのです。しかし、2016年、ダラワルの人々は、漁業局に申請する必要はありましたが、漁を再開したのです。現在彼らは毎日伝統漁法を学んで、文化の再現に努めています。私たちアイヌが入植者である和人に権利を奪われたのと同じことが、ここでも起きていたことがよく理解できました。5月24日、シドニーから一路、カイロア(キオロアの現地での呼び方)へ向かいました。オーストラリア国立大学カイロアキャンパスに到着すると、昨年の浦幌町での先住民国際シンポジウム参加者であるダニー・チャップマンさんをはじめとするサウスコーストの人々が待ち受けて下さっていました。主催者であるサウスコースト・アボリジナル・フィッシングライト・グループから、若い人たちによるダンスなど歓迎を受けた後、フィールドワークのため、ムラマラングナショナルパークを訪れました。森を抜け、海へ出て少し歩くと、そこには1万5000年前の貝塚が足元に広がっていました。6万年前の貝塚が低い二つの山となっているところもあります。ここはサウスコーストの人々の祖先が暮らしてきた遺跡なのです。アボリジナルの人々が管理していて、貝塚遺跡が荒らされないように、政府に柵を作るように働きかけ、それを実現し、保存に努めてきたそうです。長い長い彼らの歴史を、足で歩いて体感するツアーでした。どうぞみなさまの暖かなご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。SNSなどでご拡散いただけますと幸いでございます。 もっと見る
国際シンポのプログラムが届きました!
2024/05/17 21:24クラウドファンディング募集期間も残り14日間となりました。本日現在、支援者さま43人、支援総額360,000円(18%達成)でございます。主催者であるウォルブンジャ・カントリー、サウスコースト・アボリジニ漁業権グループから国際シンポジウムのプログラムが届き、色彩鮮やかなアボリジナルの意匠に感嘆しました。渡豪メンバーも出発に向けての準備の真っ最中です。漁業のかたわら、発表内容の詰め作業や同行スタッフとの打ち合わせなど、慌ただしさの中でも、海外の先住民からどのような発表がなされるのか、どんな議論が展開されるのか、ドキドキワクワクしながら日々を過ごしています。実り多いシンポジウムにするべく準備を積み重ねていきたいです。どうぞみなさまの暖かなご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。SNSなどでご拡散いただけますと幸いでございます。 もっと見る
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