はじめに ~ ご挨拶

CAMPFIRE並びにGoodMorningをご覧の皆さま、はじめまして。

わたしたちラポロアイヌネイションは、北海道東部、浦幌十勝川の流域に先祖代々暮らしているアイヌの団体です。

ラポロアイヌネイションホームページ


わたしたちの先祖は、十勝川流域でコタンと呼ばれる集団をつくり、集団としてサケなどの漁猟をしていましたが、明治になってから、わたしたちの自由な漁猟は禁止されてしまいました。
この自由な漁猟を求めて、国際シンポジウムを開催することにしました。
ラポロはこの地域のアイヌ語の地名、また、ネイションは「民族」「国家」を意味し、集団としての権利を訴えることにしたのです。

2007年、日本を含む世界中の国々が賛成して「先住民族の権利に関する国際連合宣言 (UNDRIP)」が採択されました。
それを受けて日本の国会で成立したアイヌ施策推進法 (2019年)は、アイヌ民族を「日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族」と初めて明記しました。
しかし、土地や自然資源に関わる先住権は、一切認められていません。

この点がカナダ・アメリカ・オーストラリアなどとの大きな違いです。


  なぜいま先住民国際シンポなの?

アイヌは大昔から、蝦夷が島(現北海道)や周辺の地域に暮らし、コタンと呼ばれる集団ごとに各地を支配していました。
独自の言語、口承文化など独自の文化と伝統を持ち、豊かな自然資源からその恵みを受けていました。

明治になって政府は、それまで「外国」とされていた蝦夷地を「無主の地」として入り込み、アイヌから土地や自然資源を奪いました。
また、アイヌは日本人として独自の文化を否定され、自然資源への権利も和人と同じという理由から否定されました(同化政策といわれています)。

しかし、70年代以降、世界中で列強諸国から奪われた土地や自然資源への権利を回復する動きが強まりました。

アメリカでは漁猟権は「インディアンのサケ捕獲権は空気のようなもので当然に認められる」とされ、トライブと呼ばれる各地の集団の権利が認められるようになりました。
カナダ、オーストラリア、フィンランドなどでも、徐々に集団の様々な権利が認められるようになりました。

国連は2007年に「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を採択し、先住権をはじめとする先住民族の権利の回復を求めました。

わたしたちラポロアイヌネイションも、かれら諸外国の運動に習い、先住権として自由にサケが獲れる権利を求めて訴訟を起こし、明治以降絶えていた地域のアイヌ文化の復活に取り組んでいます。

チタルペ(ござ)制作の様子


トゥキ(盃)制作の様子


 わたしたちの活動
遺骨返還運動

わたしたちは、大学の研究者たちによって墓地から持ち去られ標本として保存されていた先祖の遺骨100体あまりと副葬品を、裁判によって北海道大学、札幌医科大学、東京大学などから取り戻し、コタンの墓地に再埋葬してきました。

そして、毎年、カムイノミ・イチャルパ(神に祈り先祖を慰霊する儀式)を捧げることによって、自分たちがこの地域に生きるアイヌであることを一層認識できるようになり、先祖とのつながりを強く感じるようになりました。


浦幌町での遺骨返還


遺骨の再埋葬とカムイノミ・イチャルパ

サーモンピープルを訪ねる旅

毎年秋になると、必ず大群をつくって海から川をさかのぼってくるサケは、かけがえのない自然からの恵みです。アイヌは敬意を込めて、サケをカムイチェㇷ゚(カムイ=神が与えてくれる魚)と呼びます。

およそ1万年前から浦幌十勝川のそばで暮らしてきた先祖たちも、川で自由にサケを獲って豊かに暮らしていました。しかし19世紀後半、明治政府が主導する「北海道開拓」が始まると、川でのサケ漁は一方的に禁止され、現在も川でのサケを獲れば、先住民族アイヌであろうと「密漁者」として検挙されてしまいます。

わたしたちは先祖のように地元の川でサケを獲れるようになりたいと願い、2017年5月、 アメリカにサーモンピープル(サケの民)を訪ねる旅に出ました。
ワシントン州のインディアン・トライブ(先住民族団体)を訪問して、漁業権回復の闘いと成果について多大な学びを得て帰国。
この成果を「サーモンピープル アイヌのサケ捕獲権回復をめざして」という書籍にまとめ、出版しました。


インディアン・トライブとの交流

伝統儀式の復活

明治時代以来のサケ禁漁にともない、長らく途絶えていたアイヌの伝統儀式アシリチェㇷ゚ノミ(新しいサケを迎える儀式)を、わたしたちは2020年に浦幌十勝川で復活させました。

でも、北海道知事が許可した捕獲上限はわずか200尾でした。先住権の回復にはほど遠い状況です。


サケの水揚げ


アシリチェㇷ゚ノミに使われるチプ(丸木舟)


アシリチェㇷ゚ノミの様子


サケ捕獲権確認裁判

わたしたちは今、先住民には地元の川でサケを捕獲する権利があることを認めるよう、国と北海道に求めて、裁判に訴えています。

先住権に基づく日本で初めてのこの訴訟は大きな関心を呼び、市民の皆さまによる支援に支えられて継続中です。

裁判所へ向かうラポロアイヌネイションメンバー



  国際シンポジウムで世界の先住民族に学びたい

この国際シンポジウムで、わたしたちは、オーストラリア・台湾・カナダ・フィンランド・ アメリカから、先住権、とりわけ漁業権の回復を果たしてきた先進的な先住民や、先住民を支援している研究者たちをお招きしたいと考えています。

彼らは、それぞれの政府から漁業権保障を勝ち取って漁業を生業とし、また自らサケが自然産卵できる川を保全するなど、地域でサスティナブルな暮らしを実現しています。こうした世界の先進例を、ぜひ北海道内外のみなさんと一緒に学びたいと考えています。


  シンポジウムの概要

国際シンポジウム

 「先住権としての川でサケを獲る権利~海と森と川(イオル)に生きる先住民の集い」

  期 日   2023年5月26日~28日

  開催地   北海道十勝郡浦幌町

  主 催   ラポロアイヌネイション

  共 催   北大開示文書研究会

        北海道大学先住民・文化的多様性研究グローバルステーション

  
  協賛団体 (国際シンポジウムの趣旨にご賛同いただいた団体、敬称略)

   浦幌町商工会

   パタゴニア日本支社

   日本森林生態系保護ネットワーク

   カトリック札幌教区正義と平和協議会

   日本基督教団北海教区

   日本基督教団北海教区アイヌ民族情報センター

   道北クリスチャンセンター

   北海道クリスチャンセンター

   NPO法人さっぽろ自由学校「遊」

   コタンの会

   十勝自然保護協会

   NPO法人みみをすますプロジェクト

   網走アイヌ協会

   アイヌサケ捕獲権確認請求事件弁護団

   川村カ子トアイヌ記念館

   一般社団法人自然の権利基金

   日本環境法律家連盟(JELF)

   真宗大谷派北海道教区

   日本カトリック正義と平和協議会

   札幌地域労働組合

   市民フォーラム十勝

   森・川・海のアイヌ先住権研究プロジェクト

   北海道宗教者平和協議会

   静内アイヌ協会

   一般社団法人メノコモシモシ

   大雪と石狩の自然を守る会

   北海道アジアアフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会

   帯広アイヌ協会

   沖縄合同法律事務所

   一般社団法人北海道自然保護協会

   有限会社かりん舎

   エンチウ協会

   日本国民救援会北海道本部

   浄土真宗本願寺派北海道教区教務所

   週刊金曜日

   日本聖公会北海道教区宣教活動推進部

   一般社団法人NARMAIモンゴル

   日本宗教者平和協議会

   少数民族懇談会

   アオテアロア・アイヌモシリ交流プログラム実行委員会

   自由法曹団北海道支部

                 (2023年2月27日現在)



招へい海外ゲスト(予定)


◆ ダニー・チャップマンさん (Danny Chapman)(オーストラリア)

ユーインネイション(Yuin Nation)(オーストラリア東南海岸に暮らす“アボリジナルの人々”の集団)のワルブンジャ(Walbunja )のクランに属している。
海岸の環境に暮らすソルトウオーターマン(Saltwater man)である。 
土地の権利に関する請求、健康と教育など、“アボリジナルの人々”の権利とネイティブタイトル(先住権)の実現のために活動をしている。



◆ キャサリン・リッジ さん(Kathryn Ridge)(オーストラリア)

弁護士。先住民の漁業権をめぐる裁判に多く関り、漁業刑事告発のすべての弁護を成功させ、サウスコーストの人々を守っている。
シドニー工科大学人文社会科学部の博士課程に在籍し、歴代の植民地政府が天然資源(漁業、水)に関しアボリジナルの人々の権利をいかに侵害してきたかを調査している。



◆ アウェイ・モナさん(Awi Mona)(台湾)

台湾原住民・セディック族の出身。
国立東華大学法学部准教授、学部長(原住民法)。
台湾で初めて法学博士号を取得した先住民族である。
台湾の地域コミュニティと先住民族の権利運動について幅広い共同作業を行う人権法学者。



◆ マラオスさん(Maraos)(台湾)

台湾原住民・タオ族の出身。
財団法人原住民族文化事業基金会理事長を務める。専門は文化基金会運営、トライブの地方創生、先住民族開発学、文化評論、ドキュメンタリー制作、オーストロネシア語族文化研究と国際交流、航海文化の推進。



◆ アモス・リンさん(Amos Lin) (台湾)

台湾原住民・アミ族。退職警官。
台東大学オーストロネシア文化研究科修士。漁のとき、取り締まりにより漁具が没収され訴訟で争った経験を持つ。



◆ ラス・ジョーンズさん(Russ Jones)(カナダ)

カナダのハイダ・グアイのチーフであり、ハイダ・ネイションの評議員。
現在、太平洋サケ委員会の委員。ハイダ・グアイは前浜での漁業権を獲得している。



◆ アスラック・ホルンバルグさん(Aslak Holmberg)(フィンランド)

 サーミ議会議長



◆ ジョー・ワトキンスさん(Joe Watkins)(アメリカ)

チョクトー族(Choctaw)出身。アメリカの先住民考古学のリーダー的存在であり、前アメリカ考古学会会長。2022年7月より北海道大学先住民・文化的多様性研究グローバルステーションに在籍。



  応援メッセージ


浦幌十勝川を見たとき、「なんと雄大でいい川だろう」と思いました。
サーモンピープルに会うためにアメリカに行って、この川で先祖のようにサケを獲りたいと思うようになったラポロの皆さんの気持ちがよくわかります。
先住権の運動を力強くすすめるラポロアイヌネイションを応援しています。

 ◆ 宇梶 静江 さん

  浦河郡浦河町姉茶村で育つ。
  詩人、古布絵作家、絵本作家。


●開催にあたり

北の大地を流れる川には多くのサケが遡上し、そこに住む人々はカムイの恵みに感謝して暮らしてきた。
今、ラポロの人々が求めていることは、かつてのようにサケを捕り、その恵みに感謝を行うことである。
今回のシンポジウムでは浦幌十勝川が太平洋へ注ぐラポロの地に世界各地の先住民族の代表が集う。彼らの何人かは自ら漁業に関わり、かつ権利回復に取り組んできた。皆、ラポロの人々の取り組みに共鳴し、このシンポジウムへの参加を表明している。
先住権をめぐる新たな議論がここから始まることを期待する。

 ◆ 加藤 博文 さん

  北海道大学先住民・文化的多様性研究グローバルステーション長
  北海道大学アイヌ・先住民研究センター長


北海道・浦幌の若いアイヌの皆さんがラポロアイヌネイションを名乗って、サケの捕獲権を主張する裁判を起こしました。
彼らは意気軒昂です。失ったアイヌ文化を取りもどそうと懸命に学び、実践しています。
国際シンポジウムはラポロと世界の先住民がつながって、先住権が行使されるとどんな素晴らしい世界が訪れるかを教えてくれるでしょう。
アイヌの先住権は日本が植民地主義を克服するうえで必ず実現しなければならない重要な課題です。
心から応援しています。

  •  ◆ 殿平 善彦 さん

  北大開示文書研究会共同代表
  一乗寺住職


ラポロアイヌネイションは、2020年に日本ではじめて先住権としてのサケ捕獲権を求める裁判を起しました。明治以降の150年の歴史のねじを巻き戻し、もともと有していた自分たちの権利を取り戻そうとしています。
国は、この歴史にフタをして“アイヌの権利などない”、と臆面もなく主張し、裁判所も国の考えに同調しているように思えます。
そのような中で、世界で先住権を勝ち取ってきた先住民族の皆さんを迎え、日本でどう闘っていくのか、を議論していく国際シンポジウムは、初めての画期的なことです。
日本のアイヌを巡る新しい歴史がここから始まると期待しています。

  •  ◆ 市川 守弘 さん

  アイヌサケ捕獲権確認請求事件弁護団長
  トマム法律事務所 弁護士



  資金の使いみち

みなさまからいただくお金の使いみちとして、以下の経費を見込んでいます。

〇 先住民招へい費用(渡航費・滞在費): 約150万円

〇 運営費用(会場設営費・歓迎費・フィールドワーク費・ボランティアスタッフ旅費宿泊費・ 通訳謝礼・印刷費他): 約150万円

〇国際シンポジウム報告集発行費用 : 約50万円

〇 リターン費用 : 約45万円

〇 手数料(9%): 約36万円


本クラウドファンディングプロジェクトと並行して、後援団体・協賛団体・賛同人・篤志家のみなさまを募り、支援をお願いしています。


  リターンのご紹介

メールによる心を込めたお礼メッセージ、ラポロアイヌネイションオリジナルグッズ、メンバーの手によるアイヌ文様刺しゅう作品、わたしたちの活動をご紹介するDVD、書籍などをご用意させていただきます。

詳しくは、「リターン選択欄」をご覧くださいませ。


リターン発送について

2023年7月下旬ころを予定しています。


募集方式について

本プロジェクトはAll-in方式で実施します。
目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。


 終わりに

わたしたちは世界の先住民族に学びながら、先住権回復活動を地元で息長く続けていく覚悟です。

アイヌが、アイヌとしての自覚と誇りをもって暮らし、アイヌ文化を将来の世代にわたって承継し続けるためには、アイヌ自身の経済的自立が欠かせません。

地元の川でのサケ捕獲権の回復は、自然資源をかてとする持続的な生業を可能にするでしょう。
地元での自然環境の保全・復元は、そのために不可欠な活動と位置づけられると思います。
この取り組みを、サケの自然繁殖環境の復元をはじめ、川や森や海の環境改善へとつなげたい、とわたしたちは願っています。

みなさまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

浦幌十勝川



もっと知りたい方へ

アイヌ民族とサケ

古来、サケはアイヌにとって主要な食料であり、交易品としての経済的基盤でした。
漁法、調理法、保存法、また宗教的儀礼などを含めた「サケ文化」が育まれ、アイヌ文化の根幹を占めています。
口承文学、祭儀などアイヌの宗教的、精神的世界も、サケを巡って形づくられてきたものが少なくありません。


海外の先住民族の取り組み

北米インディアン、カナダ・アラスカのハイダ族、北欧のサーミ、オーストラリアのアボリジナル、台湾原住民族など、世界の先住民は、過去から現在に至るまで先住権の回復の戦いを続け、大きな権利回復を成し遂げてきています。

一例を挙げると、アメリカ北西部ワシントン州ビュージェット湾周辺に点在する20のインディアン・トライブは、「サーモンピープル」と自称し、サケ漁を生業として暮らしています。
彼らはワシントン州や連邦政府と交渉を行いながら、獲り過ぎ防止 のために漁獲量を厳格に管理し、サケの遡上できる河川を維持するために生態系保護のための組織や研究室を作り、科学的なアプローチで持続可能な漁業を実践しています。
地元のエルワ川では、関係機関とともに、サケの遡上を阻んできた2つの古いダムを爆破・撤去し、生態系を復元しました。

これらの成果は、数十年にわたる息の長い権利回復運動の上に実現されたことです。


環境保護の取り組み

わたしたちが暮らす十勝地方をふくめ、北海道の川に帰ってくるサケたちは、じつは多くが「人工孵化増殖事業」によって生産された放流魚です。かたや、アイヌ民族の祖先たちが過去1万年以上にわたって利用してきたカムイチェㇷ゚=サケは、いうまでもなく、自然産卵で生まれる野生魚たちでした。

浦幌十勝川は過去数十年の間に大規模な改修工事を受け、サケの自然繁殖地としての環境は著しく劣化しています。

わたしたちはサケ捕獲権回復の前提として、流域の天然林を守り、川が注ぎ込む海の生態系を豊かにしていきたい。川・森・平原・海の生き物の生息環境を復元するために、自然保護団体や科学者などと広く連携していきたいと考えています。

自然環境の復元・保全の権利もまた、アイヌ先住権の重要項目です。

  • 2023/05/24 22:29

    5月23日付北海道新聞デジタル(有料版)で国際シンポジウムをご紹介いただきました。私たちアイヌが先祖のように川や森の恵みを受けた暮らしを取り戻すにはどうしたらよいか、ぜひみなさんと共に議論を深めていきたいと私たちは願っています。みなさま方のシンポジウム参加を心よりお待ちしております。記事は下記...

  • 2023/05/22 20:27

    先般は、私たちのクラウドファンディングにたくさんのご支援をいただきまして心より感謝申し上げます。さて、国際シンポジウム開催までいよいよあと4日間となりました。漁業の傍らの準備も大詰めを迎え、多忙な日々を過ごしております。このシンポジウムで、漁業権の回復を果たしてきた先進的な先住民や、先住民を支...

  • 2023/04/04 20:01

    こちらの活動報告は支援者限定の公開です。

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