こんにちは、故郷喪失アンソロジー主催者の藤井佯(ふじい・よう)です。
各作品のご紹介、第四弾です!
①いとーさん、城輪アズサさん、闇雲ねねさんの作品
②オザワシナコさん、江古田煩人さん、伊島糸雨さんの作品
③万庭苔子さん、藤井佯、湊乃はとさんの作品
④灰都とおりさん、神木書房さん、犬山昇さん、玄川透さんの作品 ←今回はこちら
故郷の在り方、喪失の在り方を探る終盤、力作ぞろいです。
灰都とおり「絶対思想破壊ミーム小夜渦ちゃん」(約8500字)
東京で編集者になってまだ日の浅いころ、先輩から担当を引き継いだSという若いライターがいた。
灰都とおりさんは小説を書いています。今回は、2000年代の日本を舞台とした物語を寄せてくださいました。東京で編集者をしている「わたし」はSというライターと出会い、意気投合して飲んでいるうちに、幼少期に見たというアニメのことをSから伝え聞きます。それは「わたし」が、かつてあの団地で耳にした話そのもので、「わたし」にその話をしてくれたTしか知らないはずの物語でした。個人的に、灰都とおり作品最高傑作に推しています。
神木書房「祝杯」(約8800字)
お盆はいつ取りますか、と部下に聞かれたので、いつでもいいよ、と答えようとしたが、最近同居——同居と言うにはやや情があるが、同棲と言うにはためらいのある相手のことを思い出して、考えとくよ、と返した。
神木書房さんは小説を書かれています。今回は、包容力溢れる中年男性とどこか歪な若年男性の同居生活、その一コマをお送りいただきました。船藤は母親を亡くすと、酒を開けて「祝杯!」と宣言します。「おれ」はその異様さに驚きつつ、彼の傷に寄り添うのでした。打算を交えた二人のドライな関係が魅力的な作品です。
犬山昇「壊れていくバッハ」(約6700字)
花束さんの音楽趣味は、彼女を育てた祖父の影響だった。
犬山昇さんは小説を書かれています。今回は、二人の少年少女の傷、そして少しずつ喪失されゆく故郷を描いた作品をお寄せいただきました。「ぼく」の家の隣に住んでいる花束さんは、両親に捨てられ祖父母に養育されています。「ぼく」は花束家の人々と交流を持ちながら、やがて疎遠になっていきます。久しぶりに実家へ帰ってきた「ぼく」を待ち受けていたのは、ゆっくりと崩壊してゆく故郷の姿でした。美しい旋律に乗せて、儚くも現実に迫った崩壊が描かれる点が魅力です。
玄川透「富士の雅称」(約10000字)
芙遠と書いてフォンと読む人名は、フォンの生まれた国でも異質だ。正しく読まれたことはないし口答で伝わった試しもない。
玄川透さんは小説を書かれています。今回は、故郷にとどまりつつもその故郷に帰属感を得ることのできない「フォン」の物語をお寄せいただきました。読みづらくこの国では珍しい名前と、利き手が左手であることによって、幼少期から学校でも家庭でも酷い扱いを受けてきたフォン。フォンは故郷にとどまりながら「歴史探訪サポーター」としてかつての故郷について観光客に解説するボランティアを行っています。フォンという名前、もしくは故郷に意味を見いだすために。トリを飾るにふさわしい、心震える小説です。
これで、全4回にわたる作品紹介は以上となります!気になった作品があれば、SNSでぜひ教えてくださいね。
クラウドファンディングは4月30日まで!
・参加者有志が「故郷喪失」を描いた好きな作品について紹介する「故郷喪失」ブックガイド
・企画立案から電子書籍制作までの全記録を収録する故郷喪失アンソロジー制作日誌
・クラウドファンディング支援者しか読めない「故郷喪失」をテーマとした藤井佯書き下ろし小説
・沈んだ街が浮かび上がる特製カバー付きの特装版
・藤井佯がいただいたテーマやお題をもとに5000字〜10000字で小説を書くコミッション
と、素敵(素敵ですよね?)なリターンが盛りだくさんです!
クラウドファンディング終了まで残すところあと10日!引き続きよろしくお願いいたします!