今回は、令和5年11月の九州地区盲学校音楽会長崎大会のことを回想します。
長崎へ出発する日に1人、インフルエンザに罹患していることが判明。いざ9人で長崎へ。
長崎に到着後の夕食時に1人発熱、しばらくしてまた1人発熱。そしてまたまた1人発熱。これで、主旋律を奏でる奏者が誰もいなくなるという事態に陥った。
夜のミーティングでは、「熊盲アンサンブルの演奏はできない。明日は欠場とします」と山田顧問の、苦渋の決断が告げられた。
中学生部員は「高等部を卒業する先輩たちと一緒に演奏したかった」と泣きながら訴えた。皆が涙に暮れた。
その後もまた1人、発熱。5名の発熱者のうち、4名が夜のうちに家族の迎えで帰宅。残る1人は翌日帰る事が決まった。
今まで練習を頑張ってきたのに、こんなこともあるのだと、気落ちした。
明日は、他校の演奏を鑑賞することになった。これも大切な事。
翌朝、昨晩の発熱者の中でまだ帰宅していなかった部員の熱が下がった。しかし、4人欠けた緊急事態には変わりない。貸切バスに沈む気持ちで乗り込み会場へ向かう。
会場に到着し降りる時になって、山田顧問が、熱が下がった部員に聞いた。「出れるか?」「出れます」と、静かに返事が返ってきた。
「出場しましょう!いないパートは、歌声で補いましょう!いける!できる!」と山田顧問が弾んだ声で呼びかけた。
皆驚き、そしてできるのか!?という不安で動きが一瞬止まった。
その時、「よし!気合い入れて行こう!」と他の職員から声が上がる。
昨夜事務局に欠場を連絡していたのだが、朝の受付で「出ます!」と再度の変更を告げた。事務局もバタバタと動き出した。
とにかく、やってみるしかない!
すぐに練習。
動画は、その時の様子。即興。
本番のステージが始まった。
会場には、6人が奏でるそれぞれの楽器の音と歌声が響き渡った。
結果は、グランプリを受賞する事ができた。審査員からは、歌声と演奏のハーモニーがとても素晴らしかったと賞賛をいただいた。審査発表の後に、歌声は即興であった事を審査員に伝えた。
「演出だと思った」と驚かれた。
結果的に、最高にみんながひとつになり互いの息を、声を聴きながら作り上げた、その時にしかない素晴らしい演奏となった。
ドラマよりドラマだと思える展開だった。
「演奏できる」と言ってくれた部員は、全日本アンサンブルコンテストでの金賞経験者である。その部員の「できる」との決意が、山田先生の「歌声」最終判断に繋がったと思う。
経験が次の経験につながると感じた瞬間だった。
インフルエンザでステージに立てなかった経験、4人欠けた中で歌声で演奏を作り上げた経験を、部員たちはどう次に繋げてくれるのかと、ワクワクした気持ちになった。
※当日のステージでの演奏を大会規約でSNS上にアップできないのが残念です。本当に、素晴らしい演奏でした。
#熊本県立盲学校 #アンサンブル部 #グランプリ