『殺劫 チベットの文化大革命』は英語版も2020年にアメリカで発行されています。題名は Forbidden Memory: Tibet during the Cultural Revolution(Potomac Books)。これは『殺劫』中国語版の2006年初版を基に英訳されたものです。英訳本は必ずしも中国語の原文を忠実に翻訳しているわけではなく、ところどころ省略して訳しているのですが、同書の中に頻繁に登場するチベット語の人名や地名、チベット仏教関連の用語(いずれも当然ながらすべて漢字で表記してある)を英語でどう表記するのかを知る上ではおおいに役立ちます。私もチベット語の固有名詞などを日本語でどう表記するかという頭の痛い問題を検討するに際して、この英訳本を参考にさせていただきました。
それはさておき、『殺劫』が英語でも刊行されたことの意義と影響力は非常に大きいです。欧米などの専門家が文化大革命や現代チベット問題を研究するにあたって『殺劫』 は欠くことのできない基本文献の一つになるはずです。