本クラウドファンディングもいよいよ残り1週間となりました。ネクストゴールに向け、さらなるご支援をいただき誠にありがとうございます。 第1目標の30万円達成記念として、学生からのお礼の言葉をビデオメッセージにてお送りいたします。! みなさま、クラウドファンディング終了日まで、引き続き何卒よろしくお願い申し上げます!
美術教育 の付いた活動報告
今年の夏の参加学生にインタビューをする企画。第5弾は、建築学科1年のFさんです!ご本人のご希望によりお名前は伏せています。 今回、初めて旅ムサに参加したFさん。哲学や神話に関心があり、考えることが好きだそうです。静かで独自の感性を持ち、黙々と仕事に集中するFさんは、メンバーの雰囲気にも一石を投じてくれるような存在感がありました。作品はこちら↓ 建築学科の授業では、このような建築模型を制作します。 初日のお昼ご飯にて。最近は「言語化」のことで悩んでいると話すFさん。 自身の感性や感じたことを言葉で表すことがなかなか難しいそうです。 言語の外にあるようなものを、色や形、質感、光、空間に落とし込むことを学んでいる……とはいえ、表現者にも言語化が求められる現代において、多くの人が抱える悩みかもしれません。 先輩である里見さんに、「それなら、言語化ゲームやってみない?」と提案され、興味津々に。目の前の情景を、片っ端から言葉にしていくゲームだそうです。ワークショップでも使えそうな、面白い遊びですね!Q. 初めての旅ムサでしたが、今回はなぜ参加されたのでしょう?A. (Fさん) 今年の干支にもありますが、龍郷町という町名に龍が入っていて、親しみを感じました。そこから奄美の土地に興味を抱き、参加してみたいと思いました。Q. 干支から興味を持つなんて、Fさんらしくて素敵です。対話鑑賞で持ち込んだ作品でも、龍が描かれていました。この作品について教えてください。A. (Fさん) 暗闇の中に光の道筋をつくり、竜が一筋の光道を導いている。漆黒に染まる夜中、光を蒔いている。希望を運ぶ神の使いとして現れる姿を描きました。Q. 対話鑑賞ではどんな意見が出ましたか? 光を強調して、救いに近いイメージで描きましたが、少し寂しそうな気もすると言ってくれた方がいました。龍とは、人にとって架空の神に近い位置づけかと思われましたが、どちらかというと、同じ人に近いような視点で見てもらえたかなと思います。Q. なるほど…確かに、この絵の龍は親しみやすさが感じられるのかもしれませんね。 古くから奄美で信仰対象とされてきた「ノロ」や「ユタ」のお話を思い出しました。 Fさんにとって奄美の文化や自然はいかがでしたか?A. (Fさん) 歴史や文化が風土にも残っているのかもしれませんが、奄美大島は絶滅危惧種など、希少価値の高い生物が生息しているのが印象的でした。夜にしか活動しない生物や奄美の気候によって生息できる植物をみて、場所によって生まれる価値を感じました。夜にしか見ることができないものが沢山ありました。 また、天体(星)やマングローブなどに触れ、自然の原点に回帰したような感覚がありました。その環境に身を置くことができ、感動しました。(23時、「三太郎線」にて大量の黒ウサギを発見。)赤尾木の海岸で見た満点の星空です。そしてこれが翌日には……………完成です!手前の地球の表現にこだわり、じっくり丁寧に制作していたFさん。星の輝きが伝わってきますね!Q. 今回、美大生として、奄美に美術教育を届けるということについてどう感じましたか?A. (Fさん) 美術の鑑賞は、感性を広げて育てるものだと思いますが、「つくる」ことによって感性を開拓できることも美術の役割だと思います。 今回は黒板アートと対話鑑賞という形で、鑑賞による伝え方でしたが、その上で、児童の皆さんが何かを「つくる」ようなアウトプットの機会も設けることで、美術と人々の距離も近づくのかなと感じました。Q.児童の皆さんと一緒に何かをつくるワークショップなども面白そうですよね。A. (Fさん) はい。今まで私は、ほぼ単独作業で他者の意見を介して作ることが少なかったので、共同で何かを作り上げる体験がしてみたいです。交流することによって、そこから生まれるものも、一緒に作り上げていくものも変わってくると思うので、面白そうだと思います。Q. 今回、児童の皆さんと交流してみていかがでしたか?A. (Fさん) 前向きに考えて率直に自分の感じたことを言葉で伝えることが上手だと思いました。絵画に関心を示している子が多い印象があり、美術の発展の可能性を感じました。また、子供と会話する機会があまりなかったので、子供ながらの意見を聞くことができて、懐かしい気持ちになりました。 –––––––––––学部1年生で初めて旅ムサに参加したFさん。奄美の自然や文化を感じ、また積極的に他者と交流し、考え、何かを得ようとしている姿に力強さを感じました。今後の制作がとても楽しみです。Fさん、ありがとうございました!インタビューの企画は次回で最終回となります。クラウドファンディングも残り8日となりました。ネクストゴールにむけ、さらなるご支援が集まり大変ありがたい限りです。引き続き、何卒よろしくお願い申し上げます!インタビューアー:連携共創チーム 井下
夏も終わりに近づいてまいりました。インタビュー企画第4弾は森 千春(もり ちはる)さんです!現在、彫刻学科3年の森さん。奄美プロジェクトへは、去年に引き続き、2回目の参加となります。非常に元気でパワフルな、頼もしい旅ムサ経験者です。写真からも伺えるエネルギッシュさ。グループの雰囲気にも活気をもたらしてくれます。初日の居酒屋では、同じ彫刻学科の片岡さんと、何やら恋愛の話を話している…?と思いきや…まさかの「ブロンズへの愛が止まらなくて困っている!!」という内容でした。( ゚д゚)彫刻学科の数ある専攻のなかで「鋳造工房」に所属した森さん。ブロンズとは、彫刻の素材の中でも特に原価が高い素材のひとつ。日本では制作できる工房が限られており、卒業後も制作を続けていくのは至難の業だそうです。そんな森さんの作品はこちら↓Q. 対話鑑賞、旅ムサステイなど多く参加されている森さんですが、なぜ、今回も奄美のプロジェクトに参加されたのでしょう?A.(森)今年3月に奄美、崎原の旅ムサに参加して、奄美の人々の暖かさに触れたからです。(昨年3月、崎原小中学校の壁画プロジェクトに参加した森さん。)Q. 奄美の旅ムサは、他の旅ムサと比べてどうでしたか?A.(森)「自分たちが旅ムサin奄美を作っていくんだ」という気持ちでいかないと、企画が進んでいきませんでした。もっとガツガツ意見を言いながら進めていけば良かったなと思いました。だからこそ、感じた気持ちとか、今度はもっとこうしたいとか、色々な感情が生まれました。Q. そうですね。先方と、そして学生同士と……、一方通行ではなく、相互に意見を出し合うことで、まだまだ色々な可能性を追求できると思います。美大生として、奄美の地で美術を伝えるということをどう感じましたか?A.(森)奄美の人々は魂からアートが好きだと気づきました。外から来た武蔵美生が美術の良さを伝えるというのは、もしかしたらお門違いなのかもな、とも少し思いました。それでも、美術が好きと思っていても、体験したり、生で作品を見たりする機会は、地域の特性上、少ないと思います。自分たちの作品を見せたり、実際に描いてみたりすることを、地域の人に見せることで、美術がもっと奄美の人に近い存在になるのではないかと思いました。Q. なるほど…普段は、美術が好きな人間しか周りにいない、特殊な環境にいる私たちですが、旅ムサなどを通じ、一歩外に出てみると、全く違う社会が広がっていますよね。美術を学んできた自分が、社会において何ができるのか、考えるきっかけにもなりますよね。(奄美といえば、スーパーマーケットの「ビックⅡ」。)全力で海を満喫!そして……制作になると、途端に静寂に包まれます。このギャップが、かっこいい!完成です!!大量のスマイルマークは、教室内の掲示に貼ってあったクラス全員の似顔絵だそうです!Q.児童のみなさんと交流してみて、どうでしたか?A.(森)どこの場所でもこどもはこどもで、みんな可愛いです。ただ、あの綺麗な海や自然を見て育っていると考えると、感性とかは違ってくるのかなと思いました。Q.対話鑑賞で持ち込んだ作品について教えてください。A.(森)タイトル:《無題》無作為に選んだ平面の形を立体にしてみました。その平面を組み合わせた形から、展開図を作りそれを立体にしました。Q.奄美で更にやってみたいと思ったことはあらますか?A.(森)公開制作などをやってみたいと思いました。もっと地域の人の目に触れるところで活動ができたら、旅ムサの良さが奄美の人に伝わるのかなと思いました。(お世話になった戸口小の先生にご紹介いただき、名瀬市の「酒屋まえかわ」にて、たこ焼きとお酒をご馳走になりました!)Q. 関東の自然に囲まれた環境で育った森さんですが、奄美の自然はどう感じましたか?A.(森)海と星がすごく綺麗でした。砂浜が綺麗で、海水がにごってはなく、本当にみんなが想像する海の色で、グラデーションもあって、すごい綺麗で感動しました。星もあんなに流れ星が見えるとは思っていなくて、360度星空の空間とか初めてで、夜砂浜で星空を見た時間は贅沢な時間でした。これだけでも、ここに来た甲斐があるなと思いました。(ちょっとした星空なら、家の近くでも見えると言う森さんでしたが、「奄美の星空は全然違った…」と話していました。)(夜の海辺のジャングルにて。ヤドカリの大行進です。)卒業後は、大学院に進み、もう少しブロンズの作品制作を続けたいと話す森さん。持ち前のパワフルな魅力と、制作への情熱で、何をつくりだしていくのでしょう。これからのご活躍もますます楽しみです!森さん、ありがとうございました!インタビューは残り2名です。まだまだ、個性的なメンバーが続きます!みなさまどうぞお楽しみに!インタビューアー:連携共創チーム 井下
早いもので、クラウドファンディング終了まで、のこり18日となりました。インタビュー第3弾は、バウシュ 杏奈さんです! 現在、デザイン情報学科2年のバウシュさん。今回、旅するムサビへは初めての参加となります。作品はこちら↓ 作品は、少しデカダンスを思わせるような、濃厚な雰囲気。 ドイツにルーツを持つバウシュさんは、同じ大学の空間演出デザイン学科のファッションを専攻する先輩からの依頼を受け、モデルの仕事もされたこともあるそうです。放つオーラに、「描く以前に、描かれる側の人ですよね…?!」とメンバーも旅の終始、惹きつけられていました。 初日の晩御飯では、「今年のパリオリンピックの開会式、とても良かった!」と話すバウシュさん。何気ない会話からも独自の感性が伺え、作品を見るとそれに納得できるのも、美大生らしいコミュニケーションのうちのひとつと言えるかもしれません。Q. 今回の奄美のプロジェクトに参加するきっかけは何でしたか?A.(バウシュ) 就活に役立つ課外活動を探していた時に、旅ムサを見つけました。美術教育が浸透していない地域にムサビ生が美術の魅力を伝える、という理念に大変共感し、大学で学んだことや自身のポテンシャルを発揮するチャンスだと考えて参加を決めました。奄美大島という、都会とは正反対の離島に行ってみたかったのです。Q. デザイン系の学生の参加はどちらかというと少ない方で、今回旅ムサを知ってもらえて嬉しいです。参加して良かったことや、感想を教えてください。A.(バウシュ) 奄美の自然、非日常を全身でめいっぱい感じられたことが何より良かったです。子どもたちとの触れ合い、自然の色彩や様子、現地で生きるアーティストの作品など、せまいキャンパスの常識を破るような経験ができましたが、すべて今後の制作に活きると思います。 また、現地での新しい出会いがどれも温かかったです。もちろん、学科も経験も違う旅ムサの仲間と出会えたのがこのうえなく嬉しいです。(奄美の透き通るような海)そして黒板は……完成です!!水の音、リズムが聞こえてくるようですね!Q. 対話鑑賞は、バウシュさんはi pad上で作品の写真を見せていましたね。作品について教えてください。A.(バウシュ) タイトル:《石》(授業のモチーフでした。) 純白ロール紙、ダンボール、アクリルガッシュ、エアキャップ、砂利、ガムテープ等を使った大型作品。 人間の内面(心の中?)には色々な汚れとか傷とかがあるけど、みんな成長を経てそういった優しさを得ている。(後ろの壁一面のダンボールとかも無理やりツギハギに繋げてたりと、ひとつの形になっててもボロボロ)感情にのってそういう醜い部分が露呈するときもあるけど、私にとっては不完全なところが人間の美しさだと思う…というコンセプトがあります。Q. 対話鑑賞で印象的だった意見はありますか?A.(バウシュ) 展示している場所について、どこだろう?と興味を持ってくれました。空間に気をつけた作品なので、同じように空間に興味を持ってくれているのかな、と思うと嬉しかったです。Q. 写真作で見せた場合でも、空間についての意見が出るのは鋭いですね!バウシュさんは特に、児童の皆さんと積極的に交流されていました。感想や、子どもたちに伝えたかったことなどはありますか? A.(バウシュ) かわいい…。まだ自分の生活が世界の全てで、物事に限界があるなんてまだ思わない年齢。もしいつか何かに挫折したりしても、好きな方法で次のステージに進めることを知ってほしいです。対話鑑賞ではアートに正解はないことをたくさん伝えましたが、生活の上でもそれは同じだと思っていてほしいです。(活動終了後、たくさんの子どもたちとipadで絵を描いて交流していました。)(児童の皆さんと別れを惜しむバウシュさん。宿に帰ってからも、「本当に、ずっとあの場所にいたかった…」と、思い出を語っていました。)Q. 今回初めて、奄美の地で、美術教育を届けるという活動をしてみて、どうでしたか?A.(バウシュ) 奄美の人たちはとても温かく、美しい自然がそのまま人柄に表れているようでした。しかし、生まれ育ったゆえに恵まれた環境の魅力に気づいていない人々もいるのではないかと感じました。奄美大島の人たちに対して、奄美大島の魅力を伝えることへの意義を感じました。 美術は、見たことのあるものをさまざまな形で表現してその魅力を再認識できるところが醍醐味だと思います。そのような点では、黒板アートをはじめ、崎原での取り組みは現地に美術を伝える上で素晴らしいと感じました。(昨年、壁画プロジェクトでお世話になった崎原小学校にご挨拶に伺いました。)Q.奄美の自然で一番印象的だったものはありますか?A.(バウシュ) 星空と海。東京に帰ってから、あのこぼれんばかりの豊かな風景が忘れられなくて恋しいです。毎晩夜空を見ちゃうくらいには…。都会では見えていないだけで同じ星空があることを考えて、いつも勇気をもらっています。Q.バウシュさん自身、これから更にやってみたいと感じたことはありますか?A.(バウシュ) 完成度や周りの目などのしがらみにとらわれず、もっと自由に制作をしたいです。自身の感性を信じてみたい。 また、次に奄美に行く機会があったら、今度は奄美の人たちと一緒にワークショップを通して制作したり、距離を縮め、もっと時間をかけて美術の魅力を伝えていきたいです。(戸口小学校 森校長先生から、記念のお品と温かいメッセージをいただいてしまいました。)–––––––––––––––人1倍旅を楽しみ、メンバーの雰囲気を前向きにしてくれたバウシュさん。奄美の子どもたちと触れ合っているときの幸せそうな表情、そして奄美の方々や、学生メンバーとの出会いを心から喜んでいる様子が強く印象に残りました。 可能性に溢れる2年生。豊かな感性で受け止めたことが、今後どのような活動や制作に繋がっていくのかとても楽しみですね。バウシュさん、ありがとうございます!インタビューも残るは3名となりました。次回も何卒、よろしくお願いいたします!インタビューアー:連携共創チーム 井下
旅ムサ in 奄美 各学生へのインタビューを行う企画。第二弾は、里見 伸暁(さとみ のぶあき)さん です! 現在、油絵学科の3年生で、教職課程をとる学生のなかでも存在感を放つ里見さん。卒業後は美術の教員を目指しているそうです。 今回の奄美のプロジェクトではリーダーを務めました。作品はこちら↓ 神話や宗教に関心を持つ里見さん。古典的要素と現代的要素が共存しているような作品です。 油絵学科では3年生になると、「技法研究」という古典絵画の模写を通して学ぶ授業がありますが、そこで里見さんが選んだ絵は、まさかのダヴィンチ…!高度な技術が求められる絵で、探求心が伺えますね。 今回、プロジェクトの前準備として、自主的に「旅のしおり」をつくってきた里見さん。到着後、奄美パークにて合流し、さっそくメンバーに配布。学生一同、感激していました。Q. 里見さんは教員志望で、他の旅ムサも積極的に参加されている印象でしたが、なぜ今回の奄美の企画に参加したのでしょう?A. (里見)もともと旅ムサ奄美を教職課程の教授や友人から聞いていたので、奄美大島という普段なら行かない場所に興味を持っていました。また、今まで旅ムサの対話鑑賞には参加したことがありましたが、もっと遠い地域でも美術が通用するのか知りたかったのです。Q. 実際に参加してみて、どうでしたか?A. (里見) 小学校でおこなった黒板アートや対話鑑賞は言わずもがな楽しかったです。先生方には両企画でのサポートや休憩中の軽食などで大変良くしていただきましたし、子どもたちは絵にすごく興味を持ってくれて、行った意味を大いに感じられました。 また、複数人と一緒に寝食を共にすることで、人として成長できました。共通にするものと別々であるべきものを理解できたことは、これからの人付き合いでも必要なスキルだと思います。Q. 長期の「旅ムサステイ」では、共同生活なども通して、普段の対話鑑賞では得られない特別な経験ができますよね。 美大生として、奄美の地で美術を伝えるということについては、どう感じましたか?A. (里見) 驚いたのは、想像していたよりも、奄美の方々が美術に少なからず親交があったことです。普段から(都会人よりもずっと当たり前なこととして)自然観察をし、学校では風景画や動物画を描いている。子どもたちの作品を見て、観察眼や色彩感覚の鋭さを感じました。 もちろん余地も感じました。まずは離島という地理的な特性上、専門的な美術…例えば油絵や彫刻、デジタルアートなどは難しそうに見えます。 また、大島紬や黒糖焼酎のパッケージなどの優れたデザイン性を発揮している分野もありますが、自分の知れた範囲では、「デザインの教育」についてはあまり浸透していないように感じました。美術が持つ強い発信力を、もっと伝えられる可能性があると思いました。(「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2022」も受賞した、「じょうご世界自然遺産ラベル」。毎年、ムサビ生がお世話になっている居酒屋『あ~屋』にて。)(大島紬を背景にした甲子園のタオル。龍郷小学校校長室にて。)Q. 奄美の子どもたちはどうでしたか?A. (里見) 前述したように、自然観察の鋭さを感じました。黒板アートで描いたモチーフを見たら、すぐに名前とその特徴、よく見かける場所などがわかるのだから、才能と言わざるを得ない。それが奄美に暮らす子どもの貴重なアイデンティティーであり、なんでもスマホに聞いてしまう現代人の忘れた心でもあり、そんな子どもたちに我々が介入するのも無粋だとは思いますが、しかし良さを残して伸ばしつつ、成長の余地は育てていきたいとも感じました。(メンバーの半数で描いたこちらの黒板ジャックには、学校見学に来ていた小学1年生のお子さまから「真ん中の鳥はルリカケスじゃない?」と一言。影だけで鳥の種類が自然と分かることに、制作中の学生も驚いていました。)Q. 将来、教員を目指すうえでも糧になる発見があったようでよかったです。 奄美の歴史・文化で印象的だったものはありますか?A. (里見) 滞在中、西郷小浜公園で見た「八月踊り」は、この半年間で最も印象深いものでした。龍郷町の老若男女が大きな輪を作り、女性たちのチヂン(和太鼓)に合わせて、男性たちが唄い曲になる。それに合わせて、男女それぞれ違うフリで踊る姿は、地域性やその歴史を強く感じさせる。またマニュアルなどはないらしく、子どもの頃から唄や踊りを見よう見まねで覚えるそうです。そうした奄美の方々の、豊かな文化と緩やかな時間の流れを肉眼で堪能できました。 黒板ジャックの題材を知るため、一時的にメンバーから離れ、単独で八月踊りの練習を見に行った里見さん。研究熱心な様子が伺えました。そして気になる黒板ジャックは…完成です!!さすがの油絵学科、底力発揮です!この作品は翌日、奄美新聞にも掲載されました。Q. 対話鑑賞のほうも、とても盛り上がっていましたね。持ち込んだ作品についても教えてください。A. (里見)タイトル:《五大元素「土」》P20号 油彩・キャンバス 大学に入学して初めての課題制作。五行思想の「土」をテーマに、魔法の世界を描きました。(すごっ!写真じゃないの…?と驚く児童のみなさん。近づいたり、離れたり…角度を変えたりして鑑賞できるのも、ここでしかできない経験です)Q. 対話鑑賞でもらった意見のなかで印象的だったことはありますか?A. (里見) 絵本のような具象的絵画だったので、描かれているモチーフとストーリー性に注目してくれるひとが多かったです。土のゴーレムと友人になりたい男の子と、そこに隠れた裏切りを描き、ほとんどの人が友人関係に言及してくれて嬉しかったです。Q. さまざまな物語の可能性について話し合える、対話鑑賞向きの作品ですよね。 これから更にやってみたいと感じたことはありますか?A. (里見) 正直、東京から来た我々が干渉するには、奄美大島があまりに魅力的すぎると思いました。豊かな自然の中で観察力は磨かれ、助け合いはごく当たり前のように行われています。地域文化は生活の一部となり、人同士の対面でのコミュニケーションは当然のことのようであります。 一方、東京はどうでしょう。ほぼ真逆に位置すると思います。旅行客、お客様気分では、かえって奄美の方々の生活や心の美しさを消費するだけになってしまいます。もっとギブアンドテイク、WinWinの関係を構築していきたいと思いました。東京の良さ、奄美の良さを、お互いがお互いを刺激し合えるような旅ムサになっていってほしいです。(2日目 倉崎海岸にて遊泳)(5日目 マングローブ原生林にて)Q. そうですね…少し仰っていることが分かるような気がします。 東京から来た私たちが、短期間の旅で、奄美に何をもたらせるのか。活動内容について、まだまだ追求の余地はあると学生の皆さんから意見が出ていましたね。 里見さんは、今回の経験を何か今後の制作に活かせそうでしょうか?A. (里見) 自分としても、こうした体験を通じて自分の制作の刺激となりました。 いざ制作しようと思ったとき、最近私はネットと本ばかり見て、自然観察はアクセントにすぎませんでした。しかし今回の旅ムサで、本やネットはあくまで簡単にはわからないことを知る手段であり、もっと自分の生活に根差して制作を展開することに気付く、正確にはすることを思い出しました。やはり私は、美術のための美術ではなく、自己表現としての美術をすべきなのだと、旅ムサ奄美を通じて、心改まる体験をさせてもらいました。–––––––––––現地で自分の眼で確かめ、身体で経験することの大切さを改めて実感した里見さん。この言葉を聞くだけでも、大きな成長を遂げられた旅になったことがうかがえます。(人に相談される機会が多いという里見さん。最終日のロッジではバーのオーナーさんのような役割に…) 新学期には油絵学科主催のコンクールがあると語る里見さん。今後の制作の展開や、卒業後の活動もとても楽しみですね。 里見さん、ありがとうございました! 次回も学生へのインタビューが続きます。お楽しみに!インタビューアー:連携共創チーム 井下