事務局長の坂元です。
今日は、今回のクラファンを実行した直接のきっかけについてお話ししましょう。今年2月、JTEFのチームは、現地パートナーのWTIスタッフたちとともに、インドのマハラシュトラ州ガッチロリ県という場所におもむきました。
ここは、かつて多数のゾウが暮らした場所でしたが、完全に姿を消してしまってから数十年が経過していました。
ところが、ゾウの生息する東側の3つの州でゾウの生息環境が悪化し、あるゾウの群れが、やむを得ず安住の地を求めて移動を開始します。邪魔者扱いされ、追われ追われて、たどり着いたのが森林が豊かで、比較的人々の暮らしものどかなガッチロリ県です。ゾウの群れはその北部のワドサ森林区に腰を落ち着けました。
問題は、森林帯のすぐ外側に水田が広がっていること。ゾウは、昼間は森に潜み、夜になると四方八方の水田を襲うようになりました。ゾウを見たこともなく、その対処法について先人からの申し送りもない村人たちをパニックに陥れました。さらに悪いことに、森林と野生生物保全に責任を持つ州森林局もゾウと人との衝突への対処法について経験がなく、混乱は深まるばかりでした。
私たちは、州森林局でワドサ森林区を統括する森林官と面談し、この現状を知りました。彼は、ゾウがどのような動きをするのか、どちらの方向の農地に出てきそうなのかを予測するノウハウがないので、その手法を開発したいと訴えました。また、ゾウの動きが予測できたら、ゾウが農地に出てこずに森林内で生活できるよう、地域住民と森林局が協力し合って必要な体制と整備し、装備もそろえたいとも訴えました。
森林官は、この説明を終えると、「今、村のボランティアたちが森の中にゾウの群れがいる場所をつきとめ、見張っているようだ」と言って、現場に連れて行ってくれました。到着すると、真っ暗なので森の中のゾウの姿は見えませんが、村人たちが10人くらい集まっていました。そうこうしているうちに、「トラに家畜が襲われた」という連絡が入りました。目の前の田んぼの向こうにある民家での出来事のようです。この地域では、まさに人がトラとゾウと日々、共存していかなければならないのだと実感しました。
この要請に応えるべく立ち上げたのが、今回のクラファンです。
資金が集まれば、2つのワークショップを実施します。ひとつは、ゾウの移動を把握して被害防止に備えるためのモニタリング技術の訓練を行うもの。もうひとつは、その成果に基づき、現地の事情に沿ったゾウとの衝突回避策の手順を示すガイドライン作成を行うものです。
上の動画は、別の地域でパートナーのWTIが行ったワークショップです。地域の実情に沿った調整は行うものの、これに近いイメージのものを予定しています。
加えて、森林局のレンジャーが、ゾウやトラの出没を監視し、パトロール活動を行うのに必要な装備一式(ジャケット、バックパック、レインスーツ、帽子、懐中電灯、水筒)を支給したいと考えています。
この地がゾウの安住の地となりつつ、人とゾウやトラとの共存が成功するよう ご支援よろしくお願いします!