日本列島の環境史研究で大分に頻繁にお邪魔していた時期に、荒金正憲先生の『豊の国 大分の植物誌』と『豊の国 大分の植物誌 増補』に出会いました。地域の植物についてリスト化するだけでもたいへんなのに、非常に多くの植物の美しいカラー写真とともに、大分のさまざまな植生タイプとその特徴、さらには希少種についてはその分布について詳細に述べられた稀有な労作でした。わたしはこの2冊の本を即座に買い求めて、今日に至るまで必要に応じて参考にさせていただいております。
このたび、荒金正憲先生の残された11万枚もの貴重なスライドをアーカイブ化して「オンライン・デジタル植物園」の開園を目指すという、すてきなプロジェクトが始まったと伺いました。ご承知のように、現在、日本の野生植物の多くは、生息場所の減少、乱獲、シカの食害、外来植物の侵入などで、絶滅の危機に瀕しています。大分もけっして例外ではなく、人の手で維持できなくなった草原をはじめとして在来植物の生息域がどんどん狭まっています。これら危機に瀕している野生植物とその生息場所について、荒金先生が調査を始めたころの姿をオンラインで自在にみることができるようになれば、これからの保全や再生に向けた計画にも大いに役立つことは間違いありません。
この「オンライン・デジタル植物園」のプロジェクトを応援いたします!