皆さま、こんにちは。さて、「ピラニア滝行ガールズという映画をつくるんです。」と言うと、必ず聞かれる「なぜピラニアなんですか?」という問い。今日はその秘密について明かそうと思います。
突然ですが、皆さまはロジャー・コーマンという映画監督をご存知でしょうか?
「B級映画の帝王」と呼ばれ、100本以上の映画をプロデュースし、ホラーカルト映画「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」(1960年)等を含む50本以上で監督を務めた、知る人ぞ知る非常に多作な映画監督です。
このロジャー・コーマンの最大の貢献は、なんといっても次世代の映画人材の育成にも大きな足跡を残したことです。フランシス・フォード・コッポラ、ロン・ハワード、マーティン・スコセッシ、ジョナサン・デミ、ピーター・ボグダノビッチ、ジョー・ダンテ、ジョン・セイルズなど、名だたる映画監督はコーマンのもとで、映画監督としてのデビューを飾っています。のちに「ターミネーター」シリーズや「アバター」シリーズを手がけるジェームズ・キャメロン監督もコーマンに師事していました。
また役者に関しても、ピーター・フォンダ、ジャック・ニコルソン、ロバート・デ・ニーロ、デニス・ホッパー、ブルース・ダーン、ダイアン・ラッド、ウィリアム・シャトナーらを発掘。イングマール・ベルイマンや黒澤明、フェデリコ・フェリーニといった巨匠の映画作品の米国配給にも尽力しました。
そんな映画界に多大なる貢献を果たしたロジャー・コーマンですが、今年2024年5月、お亡くなりになってしまったのです。ちょうどこの滝行映画を企画している時に起こった、非常にショッキングな出来事でした。
そんなロジャー・コーマンが生前、弟ジーンと共に、'70年に設立したインディペンデント系映画会社ニューワールド・ピクチャーズ。この会社の中でも興行的に最大のヒットを記録した作品が、ジョー・ダンテ監督の『ピラニア』('78)という作品でした。この作品への敬意を込めようと思ったのが、今回滝行映画にピラニアを入れようと思った大きな理由のひとつなんです。
ちなみにこの映画には、面白い話があります。
ニューワールド・ピクチャーズの基本方針といえば、言うまでもなく徹底したコストの削減です。人件費を浮かせるため撮影期間は最小限に抑えられ、キャストもギャラの安い無名の若手新人か落ち目のベテラン勢で固め、セットや衣装、大道具・小道具などは別の映画でも使い回しされました。さらに、リスクを取ることなく確実に当てるため、映画界のトレンドやブームには積極的に便乗。そして、'75年の6月に全米公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』('75)に便乗したのが『ピラニア』('78)です。
当時、多くのプロデューサーが『ジョーズ』の亜流映画製作に慎重となっていました。その理由は、本家製作元のユニバーサルから訴えられることを恐れたためではないかと言われています。
そういうわけで、巨大なサメに対して小さいピラニアだったら、仮に訴えられても言い訳できるだろうと考えた?ロジャー・コーマン。ところが、当時『ジョーズ2』('78)を劇場公開したばかりだったユニバーサルは、著作権侵害を理由に『ピラニア』の公開差し止めを求めようと動いていました。でも、実はそれを思いとどまらせたのが、なんとほかでもない本家『ジョーズ』の生みの親・スピルバーグ監督だったと言われています。
どういう事かと言うと、事前に『ピラニア』本編の完成版を見て気に入ったスピルバーグは、ジョー・ダンテ監督の腕前を高く評価していたらしいのです。その後、『グレムリン』('84)やなどでダンテと組むことになるスピルバーグですが、この頃から既に彼の才能に着目していたのです!
そんなスピルバーグをも認めさせた映画『ピラニア』。思い切り好きなことやって楽しんじゃおうぜ!という若いスタッフの情熱と意気込みが、作品から感じられるように思います。U-NEXT等で配信されているので、ぜひ気になった方は、ご覧になってみてください!
ということで、今日はなぜピラニアなのか?その理由についてご紹介させていただきました。最後までお読み頂き、ありがとうございました!!!