2月22日(土)に石川県珠洲市にある蛸島第6仮設住宅集会場で(一社)日本食育HEDカレッジさん主催の「ほっと一息お茶会」のスペースで、ブックカフェを開催しました!お茶会の場にはマッサージや気功あり、温かいぜんざいやコーヒーも用意されました。週末の能登は大寒波に見舞われておりましたが30人の皆さんが参加されました。
ブックカフェは小説から、実用書、雑誌などを用意して、お茶会の時間に自由に読んでもらっています。
各テーブルに「本がありますよ、ご自由にお読みくださいね」とお伝えすると、皆さんぱらぱらとページをめくられていました。今回はただお茶会の時間に立ち読みをするだけ…という雰囲気ではなかったのです。
80歳を超えようかというお父さんが真剣に雑誌をめくっています。そしてその雑誌に添付されていたポスターをじーっと見つめていました。その雑誌は巨人のセリーグ優勝の特集号。そしてその特集号には巨人軍のポスターが!
「東京に行ったとき、電車の中でみんな新聞を開いているだろ。そこにはみんな長嶋の写真が載っていた。野球なんて興味がなかったけど、見てみたらはまってしまって。それ以来、巨人が大好きになった」と目を輝かせて話をしてくれました。仮設住宅の部屋に巨人優勝のポスターを張りたいようで、その雑誌を閉じることなくじーっと眺めています。そんな時、日本食育HEDカレッジのスタッフで珠洲市出身の小守さんがやってきて「本って、借りていけたり、持って行けたりしないですよね…」と声をかけてくれました。
編み物の本を見つけたお母さんが「地震前まではかぎ針が好きでいろんなもの編んどったんよ。でも地震で家もなくなって、かぎ針の道具はあるけどなーんもやる気にならんくてね。でも、こうやってここに来て人とお話ししてかぎ針の本見たら、またやりたいなぁって思ったよ」と話をされたそうです。
お茶会の滞在時間2時間では、編み物もできません。仮設住宅の部屋で、本を読みながらつくりたいのでしょう。その気持ちが痛いほどわかりました。
去年優勝した巨人軍の雑誌は今年にはもう古くなっています(思い出は古くないのですが!)編み物の本も、新しいものも出るでしょう。
なによりも「読みたい」「楽しみたい」「やりたい」と思ったときが、本を読むタイミングなのだと思います。また皆さまのクラウドファンディングのご支援により、まだ本を購入する予算が残っています。
そこで1人、1冊プレゼントをすることにしました。
日本食育HEDカレッジ代表の中村さんが「本当にいいんですか?よかったら皆さんにアナウンスをしてください!」とおっしゃったので
「今日は寒波の中ありがとうございます。部屋でゆっくり本を読みたい方もいるかと思います。なので1人1冊、プレゼントしたいと思います。お好きな本をお選びくださいね」とお伝えしました。
そうしたら仮設住宅の集会場にいた全員が、最初は驚きの表情を見せた後、「えー、いいのー!?」と満面の笑顔になったのです。
そうしてそれまで遠慮がちにめくっていた本を、真剣に「どれにしようかしら」と読み始めました。それまでは遠めに本棚を見られていた方も、本棚に近寄っては「あれにしよう。これにしよう」と選ばれていました。
■園芸の本を選んだ人仮設住宅に移ってきて、土もない、入れ物もない、花もないけど、春になったら園芸をやりたいと思った
■料理の本を選んだ人おっくうになって料理もあまりつくらんなくなった。けどまたこの本にあるものから作ってみようと思う。まずは簡単なものからだけどね
■野菜作りの本を選んだお父さん漁はしていたけど、野菜づくりりなんてあまりしてこなかった。野菜もつくってみようと思った
■女性週刊誌を選んだ人まずはあまり考えずに読める、写真が多い本がいいね
■旅行の雑誌を選んだ人まだ旅にはいけん。ここの仮設住宅から出られるのは2年後だろうか、その先だろうか。仮設住宅を出たらどこかに行きたいもんだね
■巨人優勝の雑誌を選んだ人本当にいいの。うれしいな。え、東京に住んでるのに巨人じゃなくヤクルトファン!?
と「本のプレゼント」のアナウンスのあと、どうしてこの本を選んだかの紹介をいただきました。
あと「読み終えてほかの本を読みたくなったら皆さんで交換してくださいね」「またこちらに私たちが来ることがあったら、読み終えた本と新しい本と交換もします」と伝えました。
そしてかぎ針の本を選んだお母さんは「ありがとう。家帰って早速なんか作ってみるわ」と本を抱えて集会場を後にされていました。
日本食育HEDカレッジの小守さんは「本の情報はもちろんですが、本を見てやりがいを思い出すきっかけになるって、本当に素敵だなって改めて感じましたいつかおばあちゃんの作ったもの見たいですね」というお声をちょうだいしました。
今回わかったことがあります。
■本は読みたい
第1回、第2回とその場で立ち読みをしてもらうスタイルでしたが、今回わかったことはみなさんから「ゆっくり、じっくり本を読みたい」という気持ちが痛いほど伝わりました。それまで意識していなくても偶然にも見つけた本が自分のやりがいを思い出すきっかけや、いままでやったことがなかったけど春になったらやってみるかという気持ちを起こさせるものだということ。
■仮設住宅は狭いので物は増やしたくない?
仮設住宅の部屋は狭いので物を増やしたくないだろうということで、ブックカフェの時間(大体2時間)に読んでもらう形をとっていました。でも今回の学びは、必要な情報、また本を読んでやりたいを見つけた方にとってはその本は部屋においてでも読みたいものになること。
■本当は移動図書館がよいのだろうな
「またこちらに私たちが来ることがあったら、読み終えた本と新しい本と交換もします」とはお伝えしましたが、本当は移動図書館のような形で、本を巡回させていければよいのだろうなと思いました。
■「能登の置き本」との連携
鎌倉が委員のメンバーをしている日本出版クラブ震災対策室が実施している公民館などに本棚を設置し本を置く「能登の置き本」。ここに本を戻したり、本棚にある本を持っていくなどできないか。こちらは日本出版クラブや珠洲市役所と調整してみたい。
■図書館との連携
珠洲市民図書館は建物は無事だったので、通常開館しています。(ただ職員が少なくなった話は聞いています)。実用書的な本は図書館にあるので、図書館に行けば本は読めます。ただ足がない方も多いので図書館のアウトリーチがどのようにできるのか…。ブックカフェと、能登の置き本、そして自治体との連携から、いい着地点を探していきます!
あとおまけですがブックトラックやディスプレイラックを本棚として置いていましたが、車が付いていて移動できるという特徴を生かし「新幹線の車内販売のように、ブックカフェチームで本棚を持ちながらみんなの周りをまわろう」作戦を取りました。これがなかなか良かったです!
「待ち」ではなく、こちらから「出向いていく」移動式のサービスをこれからやっていきます。
課題と可能性が見えたブックカフェでした。ちょうど来年度の契約予算策定の時期にそれが見えてよかったです!
今回の運行の手伝いをしてくださった皆様に感謝。なんと岩手県から...!そして岩手県大槌町で活動をされていていま金沢市にお住まいの方も...!何より東京からも図書館関係者が参加!
こちら集合写真!
これからも奥能登を走ります!