神楽では、お面をつけて様々な役になりきって演舞を行います。
お面をつけるとスイッチが入ったようにその役が降りてくるような感覚を覚えます。役柄が変わると歩き方や所作も違ってくるので、毎回役柄に応じて演じ分けられるよう指先・足先まで神経を尖らせています。
日本各地の神楽には木や紙などでできたお面が多数存在し、役柄によってお面の種類が決まっていますが、地域で独自に製作されたお面を用いて演じることもあるそうです。奏楽も地域によって異なるので、同じ演目であってもその土地土地でまた違った印象を持つ神楽として見ることができるのも魅力のひとつだと思います。
私も色々な種類の神楽面や能面を所持しています。その中でも特に思い入れがあるのが、私の祖父が作ってくれたお面です。
三郎じいちゃんのお面
私の母方の祖父、三郎は静岡県の清水で製材所を営んでいました。
おじいちゃん子だった私は、毎年夏休みになる度に三郎じいちゃんのもとへ行っていました。
静岡に住む従兄弟と一緒に川で泳いだり、富士山の麓にある湖に行って2人でボートに乗って釣りをしたり、いつも優しく時に厳しく接してくれた三郎じいちゃんが大好きでした。
そんな三郎じいちゃんの趣味は仏像や能面を作ることでした。
神楽をはじめた20歳頃、三郎じいちゃんに演目で使用する荒神のお面を打って欲しいと相談したところ、二つ返事で製作に取り掛かってくれました。
神楽のお面を打ってもらったのはこの荒神面だけですが、翁・般若・小面などの三郎じいちゃんお手製の能面を8面ほど神楽で付けさせてもらっています。そんな物作りと魚釣りが好きなじいちゃんの影響か、私も今では木を彫り魚を釣ることが趣味のおじさんになりました。
三郎じいちゃん亡き後、じいちゃんが作ったお面や仏像は一緒に遊んだ従兄弟と形見分けをしました。もらったというよりは預からせてもらっているという感覚に近いです。
だからこそ、演舞の前には必ずお面に向かって神様と三郎じいちゃんへの感謝の気持ちを込めて手を合わせます。
笑福山祭では三郎じいちゃんのお面を付けて登場する予定です。
ぜひともお楽しみに!!