1.プロジェクト概要
私たちは、企業のイノベーションを支援しているUCI Lab. 合同会社、国立大学法人京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系 畔柳(櫛)研究室、パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社による共同チーム「避難所の衛生ストレス」解決プロジェクトです。
本プロジェクトで「共創」に取り組む九州で発生した2024年夏の台風10号による災害では、避難者が約3万人にのぼりました。災害大国の日本では、いつどこで、自然災害が発生するか分かりません。デザインとクリーンテクノロジーで、被災地の課題を解決できないか。そのような問題意識のもと、2021年7月に本プロジェクトは発足しました。
プロジェクトに参加する京都工芸繊維大学 畔柳(櫛)研究室、パナソニック、UCI Lab.の面々(一部)
以降、日本全国各地の被災地へおもむき、避難者の声に耳を傾けています。そして、現場で聞いた数ある課題から、私たちは避難所生活の「におい」の問題に着目しました。
避難生活で「におい」が気になる――。多くの被災者が抱える課題です。しかし、命に直結するものではないとして、十分に対策されていなかった現実があります。
被災地では、入浴も洗濯もままならない環境が長く続くことがあります。津波や豪雨による汚泥、カビ、腐敗臭などで、生活環境そのものが強烈な「におい」にさらされる環境では、汗や衣類の「におい」ですらストレスの原因になるのです。
私たちは、2023年7月に福岡県および大分県で発生した「令和5年7月豪雨」の被災地である福岡県八女郡の広川町社会福祉協議会と協定を締結。現地職員や地域の皆さんと研究を進め、「もしも」の避難生活のために、「いつも」の福祉の現場でも活躍する消臭プロダクトをパナソニックの先進技術「ナノイー」を活用して開発しました。
本プロダクトは、3年以上の研究、フィールドワークやデザインプロトタイピングを経て形となりました。被災時に避難所や災害ボランティアセンターにもなる福祉施設などへの寄贈で、災害時だけでなく日常生活でも人々の暮らしを支える新たな仕組みづくりをめざしています。
2.被災地での課題とプロジェクトの目的
避難生活での「におい」問題とは?
避難生活での「におい」の原因は多岐にわたります。
・土砂災害から復旧するための屋外作業で汗や泥で汚れる。
・シャワーやお風呂の利用が制限されるため、汗や体臭が蓄積しやすい。
・洗濯の頻度が減ることで、衣類に不快な「におい」が染みつく
・豪雨や津波によって町や家を襲った汚泥やカビの悪臭が生活空間に広がる。
これらは避難所で生活する被災者の心身に負担をかけ、「衛生ストレス」を引き起こす要因となります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の被災地で避難者支援を行ったNPO法人つなぎteおおむたの彌永恵理(いやなが・えり)さんは、避難所の実情をこのように語っています。
「被災生活の中では、本当にいろいろなにおいを感じることになります。でも、それは仕方がないことで。くさいとか、もう関係ないんです。全員くさいし。もう『くさい』って言ってる場合じゃない。髪も洗えないし、身体も洗えないから、みんなで“くさい”から平気になってしまっている部分があるんです」
「におい」を解消し、衛生ストレスを軽減するために
避難所で過ごした被災経験者の多くは「においが我慢できなくても、言い出せない」「全員がくさいから仕方ない」と口を揃えます。
しかし、避難所にある「におい」の問題はけっして軽視できません。避難生活の質を低下させ、ひいては、身体面や精神面の不調を及ぼす可能性があります。この課題へのアプローチは、避難生活を前向きで安心感あるものに変える大きな鍵だと私たちは考えています。
被災地に足を運ぶと避難所の「におい」がどれほどのものかが分かります。本プロジェクトに関わる京都工芸繊維大学の学生も、現場で実際の「深刻さ」を体験しています。
水害の被災地で使用されたタオルや長靴にふれた学生は「嗅いだことのない強烈なにおいがして、後日具合が悪くなってしまったほど」だったと、振り返ります。
他の学生は「避難所の『におい』は大きなストレスになっているんだと、社会に問題提起できるように」と、決意を新たにしました。
3. プロダクトの特徴
避難所の声を反映した2つのプロダクト
避難所での「リアルな声」をもとに設計されたプロダクトは2つ。それぞれ以下の特徴を備えています。
●みんなの快適シューズボックス
・パナソニックのナノイー発生機を搭載し、靴箱内部をナノイーで満たします(USB、AC電源)
・靴を入れているあいだ(約1時間以上)に、においを脱臭します
・どんな施設でも無理なく置ける縦長のスリムな形
・初めてみた人が自然に使えるデザイン
・いつもの施設でナノイーの効果を実感、活用
・もしものときは、前後を反転させれば、被災時用のシューズボックスになり、長靴やヘルメットなどかさの大きなものが収納可能に
●みんなの快適 なんでもバッグ
・外出先のながら時間(約1時間)で、洗えないものをナノイーで消臭できます
・枕1つがゆったり入る大きめサイズのバッグと、設置台、パナソニックのナノイーを発生させるコンパクト脱臭機とモバイルバッテリーがセットに
・すべてA4サイズのトートバッグに収納でき、軽量コンパクトに持ち運べます
・だれでも、どこでも、すぐ簡単に組み立てられます
・バッグは横でも縦でも柔軟に使えます
・いつものときは、個人のほか、ボランティア活動でも活用可能
・もしものときは、洗濯できない際の衣類や、ヘルメットなどの肌に触れる災害関連グッズを消臭
さらに、避難所開設時には、より大きな消臭空間をつくり出すこともできます!
先進技術「ナノイー」による高い消臭効果
本プロダクトでは、パナソニックの先進技術「ナノイー」を活用しています。
ナノイーXは、パナソニック独自の水から生まれた清潔イオン。エアコンや空気清浄機など、同社製品の広告で名前を見たことのある方もいると思います。
「ナノイーX」は空気中の有害物質やにおいの原因となる分子を分解する技術で、強力な消臭・除菌効果を発揮します。避難所で問題となる衣類や空間のにおい、汚泥やカビによる悪臭を効率的に除去し、快適な衛生環境を提供します。
被災地ではプロダクトの試作版で実証実験を行い、避難経験者に協力、参加してもらいました。
避難経験者からは「正直、これほどの効果が現れるとは思っていなかった」「避難所にさりげなく置いてあれば、使いやすいかもしれない」「災害発生時だけではなく、日常でも役立ちそう」と、様々な感想も上がりました。
ユーザーをパートナーとする「共創デザイン」
本プロジェクトでは、「現場を見て・聴き・受け取る」という共創型のデザインプロセスを採用しています。避難所生活での「におい」問題を深く理解するため、3年以上にわたるリサーチと試作を重ねてきました。
①避難者・支援者をパートナーとするデザイン
被災地でのフィールドワーク、被災経験者からのヒアリングを通じて、プロダクトの開発段階から実際のユーザーに参加いただきました。
②アイデアを現場で機能する形に具現化
パナソニックの「ナノイー」を中心に、現場で実際に役立つアイデアを形にしました。
③現場で試作品を検証し、対話を通じて改良
現地では被災経験者に試作品を試していただき、フィードバックを受けながら改良を重ねました。
④緊急時に確実に役立つ製品として完成
デザインだけに留まらず、緊急事態で信頼して使える完成度まで徹底的に作り込んでいます。
⑤パナソニックからの技術協力
共創パートナーはユーザーに留まりません。ナノイーがきちんと効果を発揮するように、パナソニックから構造や実験方法についてアドバイスをいただきながら進めてきました。今回のプロダクトも、現地の実証実験とパナソニックのナノイー技術者によって効果を確認しています。
日常生活でも活用可能 使い慣れておくという防災デザイン
「いつもともしも」のために、本プロダクトは日常的にも便利に使用できるよう設計されています。例えば、「みんなの快適 なんでもバッグ」は避難時だけでなく、部活やアウトドアで汚れた用品や衣類の消臭など、日常のシーンでも使用可能です。
普段から使い慣れておくことで「もしも」の際にも直感的に使用できる安心感を提供します。日常と災害時の両方に役に立つプロダクトとして、多くの方の暮らしに寄り添う存在をめざしています。
現場での具体的な評価
福岡県の八女郡広川町や大牟田市など、実際の被災地で試作アイテムを使用いただきました。以下は、現地から寄せられた前向きな評価の一部です。
みんなの快適 シューズボックスに対する評価
「避難所を想定したときに、靴や下駄箱のにおいはみなさん気になさる。被災現場の人たちに、におうから入るなとは言えないですから。そこにさりげなくあったりすると、使いやすいかなと思います」
「日常でも、施設を利用する幅広い年齢の方に、興味を持って使っていただけそう」
みんなの快適 なんでもバッグに対する評価
「買い物や移動時にも便利で、普段使いができる優れたアイデア!」
「ボランティアでお家に訪問した際などに、枕など洗えないものをケアできれば、喜んでいただけそう!」
4. 支援金の使い道
製品の開発と量産化
支援金は、プロダクトを実際に製造して寄贈するために活用します。寄贈後も、被災地の衛生環境に適した耐久性や利便性をさらに追求していく計画です。
製造した10セットは、私たちがこのプロダクトを活用してほしい場所、これからの防災に重要な拠点になると考えた場所、つまり「いつもは地域の人が集う居場所になっていて、もしものときに安心できる避難所にもなる場所」へ寄贈予定です。
■寄贈先
● むすびえ「こども食堂防災拠点化プロジェクト」 を通じて、全国のこども食堂に
認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえは、「誰も取りこぼさない社会をつくる」という理念のもと、多世代の交流拠点にもなる「こども食堂」を防災に活用し「いつも」も「もしも」も支え合うプロジェクトを2019年より推進しています。
このむすびえのプロジェクトに製品を寄贈することを通じて、もしもに備えた防災に取り組む全国8カ所のこども食堂に製品を設置予定です。地域の多世代交流と防災力の強化に貢献することをめざします。
● 「広川町社会福祉協議会」が活動されている現場に
福岡県八女郡の広川町社会福祉協議会は、「ふくし=ふだんの・くらしの・しあわせ」をスローガンに掲げ、住民の困りごとやくらしに寄り添った柔軟な活動を展開しています。
2024年4月からの共同実験協定を通じ、プロジェクトとともに実験や製品開発を進めています。広川町内の保健・福祉センターにプロダクトを設置し、日常の福祉活動にも活用していただく予定です。
避難所での実証実験と啓発活動
プロダクトの寄贈と導入時の訪問活動を通じて、衛生問題への関心を高める活動を行います。もしものときの「衛生ストレス」の軽減だけでなく、いつもの居場所づくりの活動の中で、地域社会全体で防災活動や衛生環境を見直すきっかけを提供します。
5. リターン内容
支援者のみなさまには、以下のリターンをご用意させていただきます。プロジェクトの進捗報告のほか、プロジェクト参加メンバーの関連グッズ、今回の製品自体もご提供します。
さらに、京都工芸繊維大学の櫛先生と畔柳先生による「共創デザイン」についての講義や、特別なワークショップに参加できる権利など、ここだけの体験もご用意しています。
・純粋な応援(お礼メールと報告レポートPDF)3,000円、5,000円、1万円 制限なし
・広川町名産セット(久留米絣(かすり)のハンカチ(1枚)と八女煎茶(4包×2g)) 5,000円 30口
・櫛先生・畔柳先生によるオンライン講義「共創デザインとプロジェクト解説」 5,000円 50口
・むすびえの「こども食堂防災マニュアル」 5,000円 20口
・UCI Lab.書籍「地道に取り組むイノベーション」 10,000円 50口
・櫛先生による特別ワークショップ@東京 15,000円 20口
・いつものもしもの みんなの快適 なんでもバッグ(コンパクト脱臭機とバッグなどのセット) 30,000円 30口
・UCI Lab. による出張研修(1日・企業向け)付き 200,000円 2口
※このプロジェクトは「CAMPFIRE for Social good」に該当します。
※「CAMPFIRE for Social good」は社会課題の解決を図る活動を支援するものです。支援金額の手数料(12%+税)をご支援くださる皆様にご負担いただく事になります。何卒ご理解の程よろしくお願い致します。
6. 今後のスケジュール
今後のスケジュールは、以下の通りです。
2025年1月15日:クラウドファンディング開始
2025年2月末:クラウドファンディング終了
2025年4月:寄贈品の製造と設置
2025年5月:活動報告とリターン発送
7. 関係者からの応援コメント
広川町社会福祉協議会 江口 信也 事務局次長
毎年のように各地で災害が発生し、広川町でも令和5年7月豪雨災害において町政はじまって以来の甚大な災害を経験する中で、災害そのものが他人ごとではなく我がこととして認識されるようになりました。
頻発する線状降水帯の発生などにより、「災害」や「避難生活」を意識することが日常=くらしになりつつある中で、今回のプロジェクトはその「くらし」をより良くする取り組みであることを、ものづくりの過程から改めて感じることができました。
ぜひ、本プロジェクトから「いつも」と「もしも」のくらしの向上を応援していただきますと幸いです。
京都工芸繊維大学 櫛 勝彦 名誉教授
大規模災害が頻発する近年の日本、災害後の避難生活は報道やネットによって「情報」としてはある程度は頭に入っていたたつもりでしたが、このプロジェクトで、被災経験者の方々のお話を直接伺うなかで、(映像や文字の)情報によるこれまでの理解がきわめて限定的であったと痛感しました。
避難時の衛生環境の維持は当然の課題ですが、同時にそれは直接「精神衛生」に繋がることなんだと、今思えばまっとうな気づきですが、この避難生活での心の状況が、災害から時間が経過した後もずっと記憶として深く残るものであることを理解しました。
精神衛生の阻害要因としての「におい」に着目し、災害前の日常との接続をどのように行うかが、このプロジェクトの目標となりました。
ここでご覧になった現在の成果も、常に改善に向けた変化をするものですが、成長を織り込んだデザインプロセスに共感いただけると、(今はプロジェクトを卒業した身ではありますが)大変うれしいです。
8. プロジェクトメンバーの紹介
UCI Lab. 合同会社
UCI Lab.は、メーカー企業の商品企画部門や研究部門に対して、調査や戦略、コンセプト創造などをサポートする会社です。生活者起点による、ケアのためのイノベーション創造に取り組んでいます。2020年夏にコロナ禍での災害支援のままならなさを知りこのプロジェクトを企画、以前からお付き合いのあった京都工芸繊維大学櫛先生とパナソニック様にお声がけをして発足させました。プロジェクトにおいては、全体の企画進行と取りまとめを担っています。
国立大学法人京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系 畔柳(櫛)研究室
プロダクトデザインを専門とし、対象となる人や環境を直接観察するフィールドリサーチをベースにしたボトムアップのプロセスを得意としています。本プロジェクトでは何度も被災地を訪問し、被災者・支援者に対するインタビューや、避難所となった現場の観察などのフィールドワークを実施してきました。得られた多くの気づきから衛生ストレス問題を解釈し、パナソニックのテクノロジーを前提にデバイスのデザインとプロトタイピングを行っています。
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 ビューティ・パーソナルケア事業部
独自のクリーンテクノロジーとして、家電製品だけでなく、自動車や電車、住宅、施設、公共空間に幅広く採用されているナノイー。この技術を研究開発製造しているデバイスビジネスユニット部門の皆さんに、ナノイーが意図通り効果を発揮するように技術アドバイスや検証といった支援をいただいています。今回のクラウドファンディングでは、寄贈するプロダクトに搭載するコンパクト脱臭機とナノイー発生機と、さらにリターン品としてコンパクト脱臭機を提供いただきました。
そのほか、防災士の宮本裕子さん、フィールドワークで訪れた各地の皆さん、プロジェクトのロゴもデザインいただいた梅田憲一さん、Ask Design Lab.の斉藤勝美さんなど、ここには書ききれないたくさんの方々の協力をいただき、やっとプロダクトを完成させることができました。本当にありがとうございます。
10. 最後に
避難生活で直面する「におい」問題は、これまで見過ごされがちでした。しかし、そのストレスは避難生活をより厳しいものにし、被災者の心身に深刻な影響を及ぼしています。私たちは産学連携のプロジェクトチームとして、課題へ真正面から取り組むために、被災地の声を聞き、共に考え、最善の解決策を探してきました。
そして、パナソニックの「ナノイー」技術とデザインの力を融合させることで、被災地の現場で役立つ新たな防災アイテムを開発できました。
本プロダクトは「におい」の解消だけではなく、心の余裕を取り戻し、少しでも避難生活を快適で前向きなものにすることをめざしています。
命を守るだけではなく、災害時もQOL(暮らしの質)を保つために。被災地の方々に安心と快適さを届け、避難生活のあり方を変える一歩を踏み出します。
ご支援よろしくお願いいたします!
最新の活動報告
もっと見るナノイーデバイスが届きました!
2025/02/04 17:00こんにちは。「避難所の衛生ストレス」解決プロジェクト事務局の渡辺です。今週、パナソニックからのご支援として寄贈いただいた、プロダクトに搭載するためのナノイーデバイスがUCI Lab.のオフィスに届きました!↓ こちらがシューズ・ボックスに搭載するナノイー発生機。↓ こちらは、なんでもバッグにセットされるコンパクト脱臭機お預かりしたナノイーデバイスを、そしてこれまでご支援いただいた皆さんの思いを、1箇所でも多くの「避難所になりうる場所」へ届けるために、クラファンの残りの期間も頑張ります。引き続き、ご支援やご紹介など応援をよろしくお願いいたします。 もっと見る
におい を ケアする、におい で ケアする ー広川町社会福祉協議会との共創のはじまりー
2025/01/28 17:30このプロジェクトが、クラファンまで進めることができたのは、福岡県八女郡の広川町社会福祉協議会の皆さんとの協働とそこでの深く得難い学びのおかげです。初めての訪問は23年9月、その年の7月に起きていた豪雨災害での被災状況や避難所運営についてお聴きするためでした。これまでずっと「広川町は大丈夫」と住民が何となく信じていた地域を襲った「町政最大の災害」。その生々しい被害をお伺いするとともに、災害ボランティアセンターの拠点になっていた社会福祉協議会の職員の皆さんの、未経験の混乱の中でもケアに満ち溢れた活動に心を打たれたのを憶えています(炎天下の中活動して帰ってくるボランティアさんのために、毎日洗濯して冷やしたタオルを用意して出迎えていらしたそうです!)。さらに、私たちの取り組みを試作品とともにご説明すると、「気になったのが汚泥やカビのにおいです。湿気のにおいというか。(水害を受けた町民の自宅では)濡れた畳とか、濡れたタオルとか、そういうものが結構においを発するんですよね。そういったにおいを除去する、改善するというのは大切なので、乾燥と一緒に対策ができるといいなと思います」「においを感じるシーンって、災害支援の中で結構あって。ただ、現場で『におうね』って言えないじゃないですか」「我々も正直、こういう現場にいると、においに対してもこれが当たり前なのかなと思ってしまうことがあるんですよね。(今回のようなプロジェクトで)連携ができたりすると、おもしろいですね」(事務局次長 江口信也さん)など、理解と興味を示してくださいました。とはいえ、私たちが日常で災害時のにおいを体験することは困難です。そして、そのようなにおいに私たちの試作品(ナノイー)はどれだけ効果を発揮するものなのか。そこで、12月には再度訪問して、災害時に気になっていたにおいが付着した現物、様々なアイテムを対象にした実験を開催しました。その結果、参加いただいた職員の皆さんが(実は私たちも)驚くほどの消臭効果を発揮!江口さんからは「正直、もともとのにおいが強いものだったので、体感できるほどの効果があるのかは不安でした。でも、効果が劇的に感じられて、本当にすごいと思いました。やっぱり避難所では、靴や下駄箱のにおいはみなさん気になさる。避難所にさりげなく置いてあったりすると、使いやすいのかなと。災害が起きなくても、いろいろなシーンで使えそうです」とコメントいただきました。ある学生は、職員さんの「そうそう、このにおい!」との声に、嗅覚が記憶と強くつながっていることを改めて認識。私は、実験に参加いただいた皆さんが「本当に臭わなくなってる!」と明るく盛り上がる姿に、緊迫感ある避難所におけるにおいケアの意義を強く感じました。この実験での手応えが、その後の共同での実証実験につながり、プロジェクトが大きく進む原動力になったのです。 もっと見る
「みんなの快適 シューズ・ボックス」のこだわり(2) ー 現場から生まれた細部の工夫
2025/01/24 10:15ひと口に靴箱といっても、世の中には実に様々な種類の靴箱があります。今回の「みんなの快適 シューズ・ボックス」は、どのような意図と経緯でこのかたちになったのでしょうか。このプロダクトの目的は、「もしものときに備えて、日常の利用シーンの中で、さりげなくナノイーの効果を知ってもらう」ことです。そのために、以下の9つの工夫がデザインされています。1. すでに施設にある下駄箱と共存できる大きさとかたち日常利用されるなかで使っていただくことを意図していますが、いま靴を脱ぐ場所には、当然すでに下駄箱があります。様々な施設を想定しながら、そこに付け加えて置ける、邪魔にならないために、あえて5足だけ入るスリムな形状にしました。2. ボックス内部の隅々までナノイーが充満する内部構造一番下に設置した機械から放出されるナノイーが内部の隅々まで行き渡るように、設置場所やスリットなどを機能的にデザインしました。パナソニックの技術者の皆さんのアドバイスと検証に基づいています。3. 個室感覚で安心して靴を入れられる区分けあえてにおいを意識したとき、他の人と空間を共有するのは心理的に抵抗を感じるはず。そこで、靴の収納スペースは、個々の扉を用意して個室感覚で仕舞えるタイプを採用しました。半透明の扉によって、靴が入っているかどうか気配でわかるようになっています。実はどの部屋もつながっていてナノイーが対流するようになっています4. 90代の方でもつかえる使い勝手新たにナノイーの脱臭効果を知っていただきたい反面、使いこなせないものは敬遠されてしまいます。広川町の保健・福祉センターの利用者には90代の方もいらっしゃると伺い、特殊な操作の仕方を避けたり、握力を必要としないなど、使い勝手を注意深く選びました。下びらきの扉だと、靴を入れる際に両手が使えるので便利5. 家電やあたらしさと親しみやすさを両立させるたたずまい素材や色などで、工夫しています。(… いかがでしょうか?)6. ナノイーの存在にさりげなく気づいてもらえることほのかに青く光るナノイー発生機のライトが、ちょっと特別な靴箱であることを伝えます。7. 「いつも」と「もしも」をわかりやすく伝える2つの顔平時に使うときから、災害で避難した際にいろいろ使えることを知っておいてもらうためにも、あえて反対側に「もしも」ときに特化した早変わりモードを用意しておきました。8. 反転させるとフレキシブルに使える大きな扉と可動する棚板もしものときは、靴だけでなく状況に合わせて使いこなしてもらえるように、中の棚板を取り外すなど、現場で柔軟にアレンジできるようにしています。棚板を外せば長靴やヘルメットなども収納可能9. これらをケアの現場で実際に使う方と一緒につくりだすこと最後に、これらのデザインは、大元のアイデアから細部に至るまで、広川町社会福祉協議会の職員の皆さんと、利用者の声を踏まえて、一緒につくりあげていったものです。できあがってみると小さくて一見何の変哲もない靴箱ですが、まだまだ書ききれないほど細部まで対話の成果が詰まっています。そして、それを初めてでも自然に使えるプロダクトとして完成させました。これまでのたくさんの応援、本当にありがとうございます!! このシューズボックスをひとつでも多くの現場に届けるために、引き続き、温かいご支援やこのページの共有など、どうぞよろしくお願いいたします。 もっと見る
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