
ー 学生の頃、先生から受けた影響について聞かせてください。
影響はあります。僕の場合、建築というより先生の見せ方や振る舞いをよく見ていました。先生にはスイッチが入る瞬間があって、オンとオフの切り替えがはっきりしている。オンの時の演出的な所作と力強さや、逆にオフの時の人間味に惹かれました。
ー 記憶に残っている言葉は?
「怒りを持て」。当たり前に流されるな、という意味で、先生は社会のことについて「俺は腹が立つ」とよく言っていた。当時は、怒りを持つことが悪ではなく創造の原動力だと自然に思えました。卒制では、自分の思いをぶつけました。

ー “考え方”というより“姿勢”の話ですね。
そう、「本当にそれでいいのか」から始める姿勢。疑って、確かめる。そこが強く残っています。
ー 進路についてはどうでした?
僕は建築の道をやめています。先生の授業を受けて、こういう人が最前線なんだとわかった。あの先生を見たら、自分は建築家にはなれないと直感的に思いました。無理だなって。だから今も建築を続けてる人はすごいなと思います。
ー 日常の所作まで影響が?
ええ。当時はかっこいいタバコの持ち方まで教わったり(笑)。そういう細部も含めて今でも先生はかっこいい。影響を受けた、なんておこがましい気もします。
あの熱量と活力を前にすると、「自分は何をしているんだろう、あんなすごい人があれだけ頑張っているのに」と思うんです。
― 写真からは先生の熱量が感じ取れるように思いました。
ありがとうございます。まだ到達点ではありませんが、いつか写真で先生の背中に手が届くといいなと思って頑張っています。今回の企画で、改めて先生を追いかけたのはいい機会でした。
写真:塚本大士




