
巻組ではこれまで50件以上の空き家の再生に関わってきましたが、空き家活用にあたって一番面白い点は、
どの物件も
「オンリーワン」の「ヴィンテージ」であること
です。
ただ古いのではなく土地ならではの良さや使ってきた方々の思いや生活が見え隠れするのが空き家活用の面白いところ。
今回は、そんなこの場所の良さを最大限活かしながら設計にあたってくださった、スタジオフッドの一級建築士 勝邦義さんのコメントを紹介します。
建築家の意図に思いを馳せながら皆様にも使っていただきたいとおもっています。
==コメント====
歴史文化あふれた松本の街並みに、暮らすように滞在できる拠点をつくる。そしていまは遠くに暮らしながらも、実家のあるこの街に想いを寄せ、「この場所を未来につなげたい」と願ったオーナーの熱い意志も加わって、「Roopt松本中央」は誕生しました。
目指したのは、「そのまちに暮らすように滞在する」という、自然体の旅のかたち。旅先でも日常の延長として過ごし、料理をし、家事をし、その土地の空気を吸いながら、まるでそこに“住んでいるかのように一日を積み重ねる――そんな滞在のあり方です。そしてまちの一員となったかのように、まちに出て暮らしの一部を体験しながら滞在すること。まちと暮らしとがつながり、まちの豊かさを感じられる滞在時間を過ごせることが大切だと考えました。
敷地が位置する路地のなかには住まいとお店が混在し、街並みのなかに彩りを与えています。道には清流が流れ、あたりまえのように井戸水を住宅に引き込み使うという暮らしも、まちの豊かさに気づかせてくれます。

そんな街並みに参入するように玄関と一体となった「コモンルーム」を通りに面して設けました。宿でありながらも開かれたコモンルームをもつことで、松本の街並みに溶け込みながらも、ここで暮らす人の日常を感じとることができます。 ここはまちとの接点であり、暮らしのレセプション。まちの情報を得たり、様々な交流に対応しながらもまちへと意識をつなげ、街全体をくらしの一部ととらえるための装置としてはたらきます。そして奥にいくほどプライバシーが高まるリビングにも通じています。

1階のリビングにはキッチンが備え付けられており、お気に入りのボトルショップでワインを手に入れてカウンターで語らったり、調理器具や食器もそろっているので、このまちで出会ったおいしい食材を使って家族や仲間と料理を楽しむこともできます。朝には庭を眺めながら、蛇口をひねると出てくる井戸水でコーヒーを淹れて味わう、そんな過ごし方もおすすめです。
そして、まちに出ることを、ぜひ暮らしの一部として取り入れてみてください。たとえば日曜日の朝。まだ静かなまちのなかで、朝7時から開いている銭湯「菊の湯」でゆっくり朝風呂を楽しみ、その足で近くの「山山食堂」で朝ごはん。食後は「あがたの森公園」をぶらりと散歩して、心と体を目覚めさせるなんて過ごし方も素敵です。
ぜひ、ゆっくりと過ごしながら、この土地の魅力を感じていただきたいと思います。空き家のあらたな門出を応援しながら。
「Roopt松本中央」設計担当
株式会社スタジオフッド 代表取締役 勝邦義



