
いよいよ運命のクラウドファンディングはラスト1日(6月30日まで)です。
2010年に動輪堂第1作を奥井宗夫さんの映像をお借りして製作したアーカイブ系作品「よみがえる総天然色の列車たち第2章1国鉄電気機関車篇」を発売、同年末には初の撮り下ろし走行系作品「惜別!国鉄特急形気動車キハ181系 特急はまかぜ 永遠の鉄路」を発売してから15年。世に問うたブルーレイ・DVD作品は外部向けを除いて127作品にもなります。この中でも撮り下ろし作品は当初ハイビジョン、のちに4K撮影による高画質を活かすためにブルーレイ版・DVD版双方を発売してきました。しかしこのブルーレイディスクの製作費用は高額で、利益が出る作品がありませんでした。比較的費用少なくて済むアーカイブ系のDVD作品は多少なり利益を出していたので、それを撮り下ろしの新作に投入することで、どうにか双方の作品を発売するサイクルを続けることができました。
しかし多数の鉄道系のテレビ番組のレギュラー化、特にコロナから後のサブスク・無料動画の浸透により、DVDなどの需要は急速に減少してゆきました。動輪堂でも売上の減少分を補填するために早くから配信に力を入れてきましたが、単価の低さからディスク商品の売り上げに取って代わることはなく、タコが自分の足を食べるように体力を失ってゆきました。そのうちDVDの売り上げはピーク時の数分の1レベルにまで減少。それにはもちろん取り扱える素材が既に多くの人がホームビデオで自ら撮影できる時代のものになっており、アーカイブ系作品の希少性がなっていたこともあるでしょう。それにしてもアーカイブ作品も採算が取れなくなり、撮り下ろし作品を支える構図は崩れ去ってゆきました。
それが現状の姿です。
作品の製作を続けるには、それぞれの作品が赤字にならないよう、経費を切り詰めて、一方で可能な範囲で値上げも行ってきました。元々劇場で映画を2本鑑賞できるほどの金額で販売していたものをそこからさらに値上げするのですから、当然その分販売数は大きく減少し値上げの効果はさほど出るものではありません。製作費は撮影を外注スタッフからプロデューサーの私自身が行うように切り替えて、一人で各地に出かけてロケを行うなど極限まで切り詰めてています。しかし鉄道会社の撮影料が特にコロナ以降暴騰し、容易ににはできなくなるなどの制限も増えるばかりです。その分施設外からの撮影の比率は高まるわけですが、コンプライアンスを守りつつ、安全に撮影するために必要な時間も増大します。だからと言って雑に撮影して効率を高めるなどできるはずもありません。
ならば作品そのものの作り方を変えればいいのではないか?
私は、地理の作品を作るようなつもりで、鉄道という「線」を「面」と捉えながら列車や路線、それを取り巻くエリア全体がイメージできるような作品作り日頃から心がけています。しかしそれはもうやめて、展望映像で一気に撮り切ってしまえば? ナレーションをやめて音の仕上げの費用を抑えたら? そこに写されたものの説明なんてなくても、見たらわかるやん。ネットで調べたらいいやん、書いてあるし。
しかしそれはもう動輪堂の作品ではありません。動輪堂で作らなくてもいいものです。もっと高い技術でそのような作品をしっかり作っている会社があるので、そちらに任せればいいじゃないすか。
私が守りたいのは、作品作りに対する姿勢だけなのかもしれません。でもその先の作品の中にしか見えてこないものがあります。物語です。私はまた、全ての作品を物語として作っています。そこを変えるつもりはありません。しかし作り続ける環境がもしなくなってしまうのであれば、どうしようもありません。少なくとも鉄道DVDというジャンルからは引き上げて、やめるしかありません。
時速95キロで爆進を続けてきた機関車が、今、その分岐点に差し掛かろうとしています。




