
HPF2025において展示される、大橋英児写真展“Your eyes are our eyes-囚人道路”のご案内をします。このプロジェクトは、北海道開拓の歴史、とりわけ「囚人道路」と呼ばれる強制労働の記憶を背景に制作されたシリーズです。このシリーズは「The13」、「 GoogleEarth」、「Transition」、「The13」の4つのパートから構成されていて、今回は「The13」のご紹介になります。
「The13」は写真のように1600mm×1200mmのパネルが13枚で構成されています。そして焦点合成(Focus Stacking)により隅々までピントが合い、人間の眼ではありえない景色となっています。
さらに13という数字の忌み数を使い、かつてここで何かがあったことを指し示しています。数字の13の意味としては、明治24年の網走から北見峠までの163Kmの囚人道路建設時の仮監(仮の監獄)の数になり、多くの囚人が死んだ場所になります。
今作品は、その跡地に生い茂る笹薮を、等価な視点で撮影されたものです。しかし、高精細に捉えられた表層は、忘れられた記憶や時間を静かに呼び覚まします。作品にはキャプションを添えていません。それは、鑑賞者一人ひとりの記憶や美意識の中から、新たな物語が立ち上がる余地を残すためです。写真は単なる記録を超え、過去と現在、そして他者と自己を結ぶ「まなざし」の媒介となり得るのです。




