メールインタビューVol.12、ラストは劇団ユニット・ラビッツの主宰で劇作家の佐藤茂紀さんにお聞きしました。
何十年も前のこと。役者を夢見て田舎でジタバタしていた俺が出会った『走れメロス』。東京からオンボロのバスに乗ってやって来たのは東京演劇アンサンブル。役者の肉体と言葉と音楽のリズムが物語を俺の心にガツンと刻み込んだ。俺、この人たちと一緒にやりたい、と終演後こっそりバスに乗り込んだ。演出のおじさんに、卒業してから来いと言われ放り出された。思えばあのおじさん、広渡さんだったのだろうなぁ。そしてオンボロバスは窓いっぱいに爽やかな笑顔を乗せて東京へと帰っていった。
あれは1980年の確か初夏のことだったと思う。
後に、役者を諦め高校教師となってから再び『走れメロス』と出会うことになる。どうしても高校生たちに観せたくてアンサンブルにリクエストしたのだ。その当時、『走れメロス』は演目から外れていたらしい。が、それを実現してくれたアンサンブル。その時のメロスは公家が演じていた。それからずっと東京演劇アンサンブルと公家とののお付き合いは絶えたことがない。いつまでも走り続けて欲しい集団である。走れ東京アンサンブル!
『走れメロス』(1976年~ 作=太宰治 脚本・演出=広渡常敏 音楽=林光 撮影=高岩震)