メールインタビューVol.11は、劇作家の篠原久美子さんにお聞きしました!!
最初のブレヒトの芝居小屋体験
最初に訪れたのは、2000年の『ゲド戦記ー影との戦い』でした。18年も前だったと思うと自分でも驚きです。原作のファンで、いつか自分でも書きたいと思っていたので、横浜から「遠い…」と思いながら出かけたことを覚えています。舞台に足を踏み入れた時、まず、「天井が高い」と思い、次に「ちゃんと暗い」と思い、座席に座るために歩いていた時にふと、「室内なのに風が流れている…」と感じたことを覚えています。
『ゲド戦記―影との戦い』(作:ル・グ・ウィン 訳:清水眞砂子 脚本:平石耕一 演出:広渡常敏)
初めての上演@ブレヒトの芝居小屋
2012年に、児演協の会合同公演『空の村号』を書かせていただき、ご出演いただいた洪美玉さんや制作の太田昭さんと知り合うことができました。そのご縁で、松井スーザンさん原作の『はらっぱのおはなし』の脚本を書かせていただきました。虫たちの"存在"をぽんと投げ出したような、哲学的で楽しくて現実的でファンタジーな(つまり子どもたちのための)作品ですが、そこで初めて「稽古場としてのブレヒトの芝居小屋」の素敵さを見せていただいたような気がします。演出の関根信一さんも、音楽の菊池大成さんも俳優の個性や自主性を重んじる方々だったこともありますが、様々な実験ができる場所があり、その空間に俳優たちが馴染んでいる状態で稽古ができるというのは、とても幸せな劇団だなと思いました。この作品は、私がこれまで書いてきた脚本のなかでも、自分で好きと言えるものの一つなのですが、東京演劇アンサンブルのメンバーでなければできなかった作品だと思っています。とても幸せな作品創りをさせていただけて、感謝しています。
日本児童・青少年演劇劇団協同組合 ドラマリーディング『空の村号』(2012年7月~2014年3月 作:篠原久美子 演出:関根信一 音楽:菊池大成/松田怜)
ちなみに、ブレヒトの芝居小屋で観せていただいて印象的だった作品はやはり、『銀河鉄道の夜』でした。こんな『銀河鉄道の夜』は、東京演劇アンサンブルにしか作れないと思える切り口で、美しく厳しく切なく、同じ時代を生きるたくさんの人たちに見てほしい作品だと思いました。最近の作品では、『ビーダーマンと放火犯たち』が非常に印象的でした。常に時代を見据えたこの劇団だからこそ選べる演目、できる作品と思いました。そう思える作品の多さも、この劇団の良さだと思います。
『音楽劇 はらっぱのおはなし』(2013年7月~上演中 作:松居スーザン 脚本:篠原久美子 演出:関根信一 音楽:菊池大成 撮影:松浦紀子)
『銀河鉄道の夜』(2018年12月22日~26日 作:宮沢賢治 脚本・演出:広渡常敏 音楽:林光 撮影:松浦紀子)
『ビーダーマンと放火犯たち』(2018年3月23日〜4月1日 作:マックス・フリッシュ 訳・ドラマトゥルク:松鵜功記 演出:小森明子 音楽:国広和毅 撮影:松浦範子)
新たな芝居小屋への期待
東京演劇アンサンブルという劇団の一番の財産は、劇団員と、これまで積み上げてこられた作品のレパトリーだと思います…ということは、皆さん、百もご承知のことと思いますが…。本当に、いつ訪ねても気持ちのいい挨拶と笑顔があり、飲んで話す話題も芝居のことと社会のことが多く(そんだけ酔っぱらっててもその話かい!と突っ込みたくなる人もたまにいますが(笑))、概して明るく真面目で、他者の痛みに敏感で他者のために一生懸命になれる劇団員たちがいて、その劇団員たちが社会を見つめる目があってこそ創れる芝居があって、そうしたらきっと、新しい芝居小屋がどんな条件のところでも、きっと「風が流れる稽古場」になる…、きっと、東京演劇アンサンブルの人たちなら、与えられた場所を、そういう場所に育てていって下さると、信じ、期待しています。
今後の活動
この12月、まさに、ブレヒトの芝居小屋をお借りいたしまして、『空の村号』を上演いたします。
2018年12月13日(木)~16日(日)
ドラマ・リーディング『空の村号』
作=篠原久美子 演出=関根信一
この劇場で、この時に、この作品を上演できますことを、奇跡のような幸福だと思っています。
ぜひ、ご覧いただけましたら幸いです。