
こんにちは。JTEF西表島支部やまねこパトロールの高山雄介です。西表島で島の人たちと協力しながら、イリオモテヤマネコの保護活動に取り組んでいます。イリオモテヤマネコは、その生息地の小ささと個体数の少なさから日本の絶滅危惧動物としてシンボリックな存在であり、珍しい生き物としてその名は広く知られていますが、その現状についてはあまり知られていないように思います。西表島でイリオモテヤマネコとヒトが共存していくためには、解決しなけらばならない様々な課題がありますが、現在最も重大な課題として挙げられているのが、交通事故による個体数の減少です。
2018年9月5日 野原で発生した交通事故(パトロール中に死体発見)
イリオモテヤマネコの交通事故は、西表島の主要な集落である大原と上原をつなぐ北岸道路が開通した翌年の1978年に初めて確認されました。2000年代に入ってからは交通量が増加したことや、道路拡幅によって車のスピードが出しやすくなったことなどからヤマネコの死亡事故が急激に増加し、2007年には環境省レッドデータブックでそれまで指定されていた絶滅危惧ⅠB類から「近い将来における野生絶滅の可能性が最も高い」とされる絶滅危惧IA類に格上げ指定されました。やまねこパトロールは、イリオモテヤマネコの交通事故防止を目標とし、2011年より以下のような活動を続けてきました。

1.事故に直結するヤマネコの路上出没情報を収集する。
2.夜間交通調査(車の台数、車種、スピードの記録)。
3.ヤマネコを路上に誘引する原因となる小動物の轢死体を取り除く。
4.ヤマネコ出没多発地点での直接注意喚起を行う。
5.西表島の小中学生を対象とした出前授業ほか普及啓発イベントを開催する。
その結果…と全て私たちの成果というつもりはありませんが、、特に夜間の交通マナーはこの10年で大幅に改善したことがやまねこパトロールの調査により分かっています。2013年には60%を超えていた速度違反率は2023年度には38%にまで低下しています。特に60㎞/h以上の高速で運転するドライバーは今ではかなりの少数派になりました。
北岸道路 夜間通行車両(19:30~22:30)の速度分布
増加していたヤマネコの交通事故もここ数年、減少の兆しが見えてきました。2023年、2024年は2年連続の無事故を達成しましたが、これは1979年80年以来の事です。また、島民や島を訪れた観光客の皆さんからのヤマネコの目撃情報の提供も年々増加しています。残念ながら、つい先日、8月2日に美原付近の県道上で幼獣が1頭死んでしまうという痛ましい事故が発生してしまいましたが、特に夜間に関しては「イリオモテヤマネコの飛び出しに気を付けて運転しよう」「路上出没している個体をやさしく見守ろう」というムードが徐々に島に広がってきているのを実感しています。私はそのムードが島の文化として根付いてほしいと願いながら活動しています。

西表島は現在、夏休み、お盆期間ということもあり、交通量も増加していますが、2件目の交通事故が発生しないよう、活動を強化していく予定です。クラウドファンディングも残すところあと8日となりましたが、引き続き応援よろしくお願いいたします。
夜間の注意喚起活動。元ネイチャーガイド、写真家の村田行さん(通称:ヒゲさん)と。



