
認定NPO法人育て上げネットの東北少年院見学ツアーにこの夏参加しました。
少年院に図書コーナーを見つけ、並んでいる本を見渡して、強く、切実に思ったことは「もっと新しい、良い本をたくさんここに並べてみたい!」でした。
というのも、その図書コーナーにはなんと、私が四半世紀前に書いた本『薬(ドラッグ)がやめられない 子どもの薬物依存と家族』が並んでいたのです。
当時、精いっぱい取材して書いた本ですが、いかんせん古い!
薬物依存に関する知識や理論はどんどんアップデートされています。
もっと新しい本を、と思わずにいられなかったのです。
少年院になぜ本なのか。
私は数年前、『戦場の秘密図書館 シリアに残された希望』という児童書の編訳をしました。
原著は英国のジャーナリスト、マイク・トムソンさんのノンフィクション。
シリア政府軍に封鎖され、空爆の止まない街で、若者たちは命の危険をかえりみず、がれきの中から書物を救い出し、地下に「秘密図書館」を作ります。
シリアの若者たちはそこで本を読み、国の未来を語り合い、絶望的な暮らしの中に小さな希望を見出そうとしたのです。
図書館づくりに関わった若者たちはこう語りました。
「本は雨のようにすべての人に降りそそぐ」「雨が植物や花を育てるように、本は人を育ててくれる」「体に食べ物が必要なように、魂には本が必要なんだ」
私自身もたくさんの本に育てられ、支えられてきました。
だから今度は、本を届ける側に立ちたいと思います。
1冊の本と出会うことをきっかけに、少年たちが再び罪を犯さずに将来を歩んでくれたら……と願ってやみません。
そのことが被害者支援にもつながると信じています。
小国綾子(おぐに・あやこ)
毎日新聞記者






