
今回上映する「大丈夫、アリス」の舞台となる「クムトゥルリ人生学校」はデンマークにある全寮制型の学校「エフタスコーレ」をモデルにしています。
エフタスコーレはデンマーク独自のユニークな学校です。
クムトゥルリ人生学校を創設したオ・ヨンホさんは、デンマークでエフタスコーレに出会ったときの思いをこう語っています。
「デンマークが幸せな社会である理由がエフタスコーレだと思いました。余裕をもって、自分の進路を考えて、人生を楽しむ・・・これだ!と思いました」
この出会いこそが、韓国にクムトゥルリ人生学校をつくった原点だったといいます。
オさんとも親交が深いヤコブ・イェンセンさんに、エフタスコーレの役割や教育理念について伺いました。
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●デンマークのエフタスコーレについて
学校は社会の方向性そのものを作り出すことはできません。しかし、新しい世代が複雑な現代社会に立ち向かい、適切に対応できる力を育むことには大きな役割を果たすことができます。
今日、デンマークのエフタスコーレはまさにそれを実践しています。全寮制という環境で、若者たちが成長し、発達する機会を提供しているのです。
デンマークの若者の35%が1年間エフタスコーレに通っています。エフタスコーレはデンマーク独自の全寮制学校で、15歳から17歳の生徒が1年または2年を過ごし、中等教育を修了します。
エフタスコーレは、生徒たちが共に生活するため、教育的、社会的の2つの側面で学びがあります。
エフタスコーレで働く教師たちは、専門的な知識を与えるだけでなく、1人の人間として自分自身が関わる準備ができています。だからこそ、生徒たちが教師と前向きな関係を築けるようにしています。
2025年8月の最新の調査では、エフタスコーレがデンマークの若者の人間関係、他者への信頼、そして社会制度への信頼に影響を与えるという点で、その社会的価値が明らかにされました。
●エフタスコーレの教育理念の源流 ― N.F.S.グルントヴィ
エフタスコーレは、(N.F.S.)グルントヴィ(1789–1872)の教育思想に基づいて築かれています。彼は、学校は形式的な職業訓練ではなく、人生のための啓蒙(新しい気付きや視野が広がる体験)を提供すべきだと考えていました。
グルントヴィは、民主主義は、すべての参加者が啓蒙された市民であってこそ機能する、と信じていました──そして、その「啓蒙」とは本を理解することよりも、むしろ人生を理解することに関わるものでした。
そのような啓蒙にとって不可欠なのは、個人の自由と社会的責任の両方を育むことのできる「共にあること(togetherness)」への理解です。
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ヤコブさんには今年6月に日本にお越しいただき、地域みらい留学に取り組む地域を訪問し、意見交換をさせていただきました。
教育をテーマに、日本の「地域みらい留学」、デンマーク・韓国の「エフタスコーレ」へと、海を超えたつながりが少しずつ広がっています。
今回の上映会が、その輪をさらに広げる大切な一歩になればと思います。
当日はたくさんの皆さまとお会いできることを心から楽しみにしています。






