
クラウド・ファンディングも、いよいよあと3日になりました。
皆様、ご支援、本当にありがとうございます。
東京雑戯團の会計を担当しております金沢霞です。
『蔦島の大蛇』では、海女(実は観世音菩薩)を演じます。
ちなみに上の写真は、日本神話のイザナギ命の冥界下りと、ギリシャ神話のオルフェウスの冥界下りを重ね合わせ、新たな舞台作品として再構築した『冥界の秘儀』です。手前側が私です。
今回の活動報告書では6月に上演した『冥界の秘儀』の写真をいくつか載せます。
赤字の劇団、東京雑戯團
この度は、ご支援いただき、本当にありがとうございます。正直なところ、これほど多くのご支援をいただけるとは思っていませんで、驚きと感謝でいっぱいです。
皆様のおかげで、今回の公演はあまり大きな赤字にならずに済みそうです(笑)。
なんといっても出演者が29名。そのうち東京からが16名、京都からが7名ですから交通費だけでも大変なのです。そのうち何人かは出演料もなし、交通費・宿泊費も自腹です。それでも赤字です(笑)。
会計担当としては胃が痛くなる毎日です。
さて、私は今回の上演の演技の中心を受け持つ「東京雑戯團」について書いてみたいと思います。
「楽しい」を追求する東京雑戯團の活動
東京雑戯團とは、なんともふざけた名前ですが、これは本團の(一応の)主宰者である安田登(以下、安田さん)が命名した私たちの劇団の名前です。
宗教家であり、宗教学者でがある釈徹宗先生から、「相変わらず雑な生き方をしていますね」と安田さんが言われたのがきっかけで、それまでのノボルーザを改名しました。
ノボルーザという命名も雑です。
名無しで活動していたのを、安田さんの名前である「登」から「ノボル一座」といとうせいこうさんが呼び始めたのですが、私をはじめとして、メンバーの多くが、遅刻はするわ、道は間違うわ、忘れ物はするわ、稽古の日は忘れるわ…と、ラテン気質が多いので、「一座」の「一」を長音の「ー」に読んで「ノボルーザ」とキーボードのヲノサトルさんが呼び始め、それが定着していました。
が、「雑な生き方」と言われて、うれしくなってしまった安田さんが「これから当分、東京雑戯團でいこう!」と言い出して、いまのところこうなっています。
でも、これも「雑」なので、いつ変わるかわかりません。
リーダーがいない東京雑戯團
東京雑戯團の特徴のひとつは「リーダーがいない」ということです。
先ほど、安田さんが「(一応の)主宰者」と書きましたが、これは文字通り「(一応の)主宰者」であってリーダーではありません。
能がそうらしいのですが、出演者の多くが違う流派に属している。持っている台本も違う。それなのに一緒に稽古(練習)をしない。
東京雑戯團もそうです。
ひとりひとりが自分のやるべきことを、自分なりにやってくる。そこで解釈を話し合ったもしない。誰かがリーダーになって、この演目はこうする!ということも決めない。
以前の活動報告に、先日の凱風館(内田樹さんの合気道の道場:兵庫)での『銀河鉄道の夜』の公演後の打ち上げで「のぼるファースト」ではない、という話が出たとありました。主宰者の安田さんですら、ファーストではないのです。
そのときに「じゃあ何ファーストだろう」という話になり、誰かが冗談で「かすみファースト・のぼるラスト」と言いました(かすみというのは私の名前です)。
その時は「いやいやそんなわけ…」と適当に流していたのですが、その後、東京までの帰路にぼんやり考えて、「のぼるラスト」はともかく、「かすみファースト」は意外とその通りかもしれないと思いました。
稽古を振り返ると、私が「こんなことをしてみたい」、「このタイミングでこうしたら面白いのでは」と、一番自由に発言していることに気づいたのです。
私はメンバーの中で一番年下で、経験も少ないのですが、周りの経験豊富なメンバーが、私の意見を尊重し、受け入れ、時には軌道修正しながら見守ってくれています。おかげで、私はとても伸び伸びと、自由に活動できています。
そして、おそらくはメンバーの全員が「自分ファースト」だと思っている(安田さん以外)に違いないのです。「ひとりひとりファースト」です。
だからリーダーなんて必要ないのです。
自由と楽しさを守るために
実は、東京雑戯團の公演は毎回、赤字続きです。
たとえば、直近の公演である9月の『銀河鉄道の夜』(兵庫県・凱風館)や、6月の『冥界の秘儀』(東京・新宿歌舞伎町能楽堂)も数十万円の赤字でした。海外公演などでは数百万円の赤字になることもあります。
この赤字は、メンバーである安田さんが別の仕事で稼いで補填しています。
コアメンバーは私を含めて5人いますが、このコアメンバーは出演料をもらわないのはもちろん、交通費・宿泊費も全て自腹です(安田さんもです)。
また、コアメンバー以外の出演者も、相場よりかなり少ない出演料で快く参加してくれています。
しかし、特に東京以外での公演では、交通費や宿泊費だけでもかなりの金額になるため、どうしても大きな赤字になります。
では、なぜチケット代を上げたり、公演回数を増やしたりして、黒字にするようにしないのか?
それは、「黒字にしよう」とか「利益を追求しよう」とすることで、もっとも大切である、「自由さ」や「楽しさ」が失われる可能性があるからです。
まず、チケット代をあげるのは論外です。
また、黒字にしようとすると、より広い会場を借りたり、何日も連続公演をしたり、あるいは外部に宣伝を委託したりと、さまざまな条件に縛られてしまいます。
広い会場になるとお客さんとの近い関係がなくなりますし、何日も連続公演をすると毎回の新鮮さがなくなり、お仕事っぽくなる。宣伝を委託すると(ちょっと)ウソっぽいことを書かれてしまう可能性もある。
その結果、自分たちが心から「やりたい!」、「楽しい!」と思える公演づくりができなくなってしまう可能性があると思うのです。
そして、私たちが心から「やりたい!」、「楽しい!」と思える公演でない限り、ご覧いただいている方もそう思えないんじゃないか、そんな風に思っています。
「損をするのが良いんだよ」という言葉
お金の価値だけでは測れないものがあると、私たちは考えています。
『銀河鉄道の夜』の公演は会場を提供して下さった凱風館館長の内田樹さんも、お金を出してくださいました。そのときに内田樹さんが「東京雑戯團も凱風館も、みんなちょっとずつ損をしている。それが良いんだよ」とおっしゃった言葉が心に残っています。
この言葉の通り、お客さんも含めて、公演に関わる全員が金銭的にはプラスになりません。それでも、同じ時間を共有し、言葉では言い表せない特別な経験を分かち合うことができる。
私たちは、その経験そのものに大きな価値があると考えています。
私たち東京雑戯團は「お賽銭」形式の公演を行うこともあります。料金を決めずに、お賽銭箱を置いておき、そこに自由に入れていただく。いま金銭的に苦しい人でも、ご覧になることのできる公演、それが「お賽銭」形式の公演です。
今回のクラウド・ファンディングも、この考えに基づいています。
お金を「価値の対価」としてではなく、心からのご支援として受け取りたい。懐に余裕がある方は多めに、そうでない方は少しだけで構いません。
今回のクラウドファンディングも、金額の多寡は関係なく、応援してくださるお気持ちそのものが私たちの励みです。
もちろん、会計担当としては赤字にしたくないと切実に思っていますが、それ以上に、皆様の温かい応援に本当に感謝しています。
最後にご報告と感謝を込めて
この公演も、そんな風に楽しく稽古を重ねてきました。本番をどうぞ楽しみにしていてください。
なんだかまとまらない文章になってしまいましたが、皆様への感謝の気持ちと、東京雑戯團の活動に対する思いを少しでもお伝えできていれば幸いです。
これからも東京雑戯團をどうぞよろしくお願いいたします。
ちなみに、写真の『冥界の秘儀』の次回公演は、『蔦島の大蛇』の2週間後の…
10月19日(日)
…にあります。会場は東京の日本デザインセンター(銀座)です。
と、ちゃっかり宣伝もしてしましました(笑)。




