
むかしむかし森はまだ、優しさに包まれていました。
人も動物も草木も──すべての命が、静かに寄り添い合いながら暮らしていたのです。
大地には水の精霊が宿り空には風の精霊が舞い木漏れ日には光の精霊がきらめいて──目には見えぬ小さな存在たちが、森の秩序をそっと守っていました。
人々は森を敬い、感謝の祈りを捧げながら暮らしていました。彼らは、森に生きる虫や動物、草木のひとつひとつに心を寄せ、決してその命をむやみに奪うことはありませんでした。
森もまた、人々の優しさに応えるように名雲(めぐも)の果実──森の奥で実る、甘く瑞々しい果実をはじめ、食べられる恵みをそっと人々の暮らしへ届けてくれました。
そして──森で傷ついた小さな動物や枯れかけた植物たちを、人々は自らの知恵と手で癒し、育み、支え合いました。
やがて、森の生きものたちと人との間には静かな交流が芽生えはじめます。
森のお祭りには、村人たちが招かれ、村の収穫祭には、森の生きものたちが招待されました。そこには笑い声と歌があふれ、命が交わり合う、喜びの輪が広がっていったのです。
この微笑ましい光景を見つめていた森の精霊たちはいつしか、森だけでなく──人の心の奥深くにも、そっと棲みつくようになりました。
「この穏やかな世界が、いつまでも続きますように──」そう祈りながら。
第二章に続きます。
COCOROに関係する物語はどこかの時点で紹介します。
このような形で様々な物語を描いています。



