
鳥取の食と文化。深掘りするワーホリ探求記
初めて足を踏み入れた鳥取への旅は、列車「スーパーはくと」の車窓から始まった。木製の座席に藍染のカーテンという粋な設えは、クールな外観からは想像できない温もりと、どこか懐かしい日本の美意識を感じさせた。この旅が、単なる移動ではなく、鳥取の奥深い食と文化を探求する特別な時間になる予感がした。駅で再会したまるさんのヘアゴムが切手だったことに驚き、「前島密って知ってる?」という問いかけに、この地にはまだ私の知らない豊かな物語が息づいていることを確信した。
到着早々、まるさんから紹介された地域の情報や、ピアニカへの反応に、この地で自分の感性がどう刺激されるのか、期待が膨らんだ。そして、初日の夕食は、まるさんが初めて鳥取に来た時に連れて行ってもらったという「北海道」という店で幕を開けた。本日のオススメ「ひらまさ」の鮮度、コリッコリの「イカ耳」、そして名物の「分厚い卵焼き」に「大山ミルクソフト」の濃厚な味わい。一つ一つの料理が鳥取の豊かな海の幸、山の幸、そして酪農文化を物語っていた。食卓を囲みながら、まるさんが語る鳥取での生活やカフェを始めた経緯は、この地の文化を肌で感じる貴重な時間となった。
ワーホリ2日目、世界一危険とされる国宝「三徳山投入堂」への登拝は、単なる観光を超えた精神的な文化体験だった。受付で輪袈裟を受け取り、草鞋に履き替える行為は、古の修験者たちの足跡を辿るような厳粛な気持ちにさせた。お坊さんたちが語る千手観音の教えや、三徳山の地蔵堂にある花狭間文様がツタンカーメンと同じだという話は、日本の仏教文化と世界の歴史が鳥取で繋がる不思議な感覚を与えてくれた。絶景に息を呑み、歴史の重みに触れるこの体験は、鳥取が持つ豊かな精神文化の象徴だった。下山後に食べた「投げ入れどうなつ」は、そのネーミングからして投入堂にちなんだ地域の工夫を感じさせ、疲れた体に優しい甘さが染み渡った。
鳥取の「食」の探求は、日常の中に深く根差していた。市内でいただく「素ラーメン」の出汁の奥深さ、地元スーパー「Sマート」で出会う「とうふ竹輪」「白バラ牛乳」「王秋梨」といった特産品。特に、和菓子の種類の豊富さには目を見張るものがあった。「のんでやってください〜」という店員さんの温かい方言と共に試飲した黒豆茶、大好物の「栃餅」との再会、そして、砂丘の風紋を模した「砂丘の風紋」の美しさ。これらはすべて、鳥取の人々の暮らしと密接に結びついた、温かく豊かな食文化を教えてくれた。エスマートで見つけた「蟹の甲羅に入った蟹味噌」や、鳥取米「星空舞」の美味しさは、まさに「蟹取県」と呼ばれる所以を五感で実感させてくれた。
滞在中には、鳥取の文化的多様性にも触れることができた。鳥取シネマで観た「国宝」という映画は、初雪の鳥取で鑑賞したという偶然も相まって、特別な思い出となった。地元の映画館で、地域の人々と共に作品を分かち合う時間は、東京では味わえない温かさがあった。また、個性豊かな専門店巡りも、鳥取の文化を深く知る機会となった。「万年筆博士」では、職人のこだわりと万年筆の奥深い世界に触れ、「サンタナコトヤ」では、カルマの前身「カルン」の歴史や「うぶだし」という専門用語を知り、地域に根差したビジネスの文化を感じた。「シープシープブックス」では、店主の個性が色濃く反映された本棚に心を惹かれ、「ジャケ買い」という新たな読書体験も生まれた。
ハレハレケケケ市場やお袋市でのライブパフォーマンスは、音楽という文化を通して地域と一体となる喜びを与えてくれた。鳥取の自然音とセッションする野外ライブ、そしてお客様とのコールアンドレスポンスは、まさにこの地ならではの体験だった。お袋市での「かに汁」は、冬の鳥取の食文化を象徴する一杯で、出汁の旨味と子持ち蟹のプチプチとした食感に感動した。
最終日に訪れたラーメン屋「鳥人」は、タップタプにスープがこぼれるほどの豪快なラーメンと、店内に飾られた昭和の鳥取の写真が印象的だった。まるさんが語る「昔ながらのラーメン屋が好き」という言葉は、この地の食文化が持つ歴史と懐かしさへの敬意を表しているようだった。そして、鳥取砂丘コナン空港で見かけたコナンの展示は、鳥取が持つポップカルチャーの発信力と、地域ブランドの魅力を改めて感じさせた。
この2週間の鳥取でのふるさとワーホリは、ただ働くのではなく、この土地ならではの「食」と「文化」を深く探求し、五感で味わい尽くす時間だった。一つ一つの料理、一つ一つの文化体験が、鳥取の魅力を多角的に教えてくれ、この地を「第二の故郷」として深く心に刻むこととなった。鳥取の食と文化は、訪れる人々を温かく迎え入れ、忘れられない探求の旅へと誘ってくれるだろう。





