この、縫う/武田店プロジェクトの特徴
・人と地域をつなぎ、新しい関係性をつくりだす宿泊/コミュニティ施設の創造
・自然や人、食材など「島の豊かさ」を満喫するためのプラットフォームづくり
・次世代に向けた、「地方の生き方」の実践プロジェクト
合同会社猫と船の宮畑真紀、周平と、黒豆、おもち
はじめに:上弓削の未来づくりに向けて
こんにちは。「合同会社 猫と船」の宮畑真紀・周平です。私たちは愛媛県・上島町弓削島の上弓削という小さな集落で暮らしながら、真紀はベーカリーカフェ「Kitchen 313 Kamiyuge」を営み、周平は「瀬戸内編集デザイン研究所」で書籍などの編集やデザイン、写真の仕事をしています。
上島町は離島が集まってできた町で、現在の人口はおよそ6,000人ほど。造船業や柑橘などを育てる農業が基幹産業です。私たちが住む弓削島は国立の弓削商船高等専門学校があり、伝統的に船乗りを多く輩出。しかし全国の地方と同じように、私たちの町も人口減少と少子高齢化によって変化していかなければならないと私は感じています。
私たちが上弓削に移住して15年。島の人々と共に暮らす中で、この町の穏やかな時間、海と人との距離の近さに惹かれ続けてきました。
今回、私たちは愛する上弓削の未来づくりに向けて動き出そうと決意し、「合同会社 猫と船」を創立しました。そして、このたび上弓削にある築約100年の元駄菓子屋を再生し、1日1組限定の一棟貸し宿と、地域や旅人が交わるイベントスペースを兼ねた「泊まれるコミュニティスペース」をつくります。
上弓削のまち。穏やかな瀬戸内の風景が前に広がる
Kitchen 313 Kamiyuge店内。築100年の蔵をリノベーション
今回、まちづくりのために設立した「合同会社猫と船」のロゴ
人口減少を乗り越え、まちを次世代に繋げていく
上弓削地区の課題と向き合って
上弓削地区は上島町弓削島の北部にある集落です。古くから潮待ちの港として栄え、今でも古い町割りを見ることができ、明治時代の古民家も現存しています。私はこの古い路地が大好きです。
しかし一方では、地域の課題として
・人口減少と少子高齢化の進行
・それに伴う空き家の増加
・また地域コミュニティの力も弱くなっている
ことがあります。そこで、この素晴らしい上弓削のまちなみを次の世代にしっかりと渡せるように、いま動き出したい、それが私たちの思いです。
歴史ある上弓削のまちなみ
人とまちのつながりを形に
特に、まちの歴史を今に残す古民家群は未来に繋げたい大切な宝物ですし、それらを生かして人々が輝きながら働き、暮らす姿を私たちは夢見ています。そこで、かつて人々の笑い声が響いていた古民家を、もう一度、人が集い語らう場所にしたい。島で暮らす中で感じた「人と人のつながりの力」を形にし、地域の記憶と未来をつなぐ場所をつくりたいと思いました。
つまり、この事業には、空き家の再生だけでなく、
・関係人口の創出、拡大
・上弓削ファンを増やし、最終的に若い人々の移住やなりわい創出に繋げていく
ことに向けた取り組みであり、大きな社会的意義をもっていると考えています。
今回リノベーションする「旧武田店」
縫う/武田店──築100年の古民家の再生
今回再生活用するのは、弓削島の中心部にある角地の古民家、旧武田店。もともと駄菓子屋として地域に親しまれてきました。私たちはこの建物を「縫う/武田店」と名付けました。
命名の想い
縫う、としたのはこの上弓削の、武田店の記憶を紡ぎ、人と人との新しい関係を縫い合わせるようにつくっていく、そんな存在になっていきたい、との思いからです。また、武田店という屋号を残したのは、この場所に駄菓子屋というなりわいがあったことを伝えていきたいからです。
この建物は、木造の温もりを残しつつ、内外装改修、空調、水回りを整備し、快適で居心地のよい空間に生まれ変わらせます。
縫う/武田店のロゴ
みんなの力で解体、片付け作業
私たちは2025年1月にこの古民家を前オーナーさんから譲り受け、これまでリノベーションの準備をしてきました。まず不要な家具を処分し、40年程度前にリフォームされた内装を解体するところから始めました。
愛媛大学や弓削商船高専の学生の皆さんも解体や片付けワークショップに何度か参加してくれ、みんなでワイワイと楽しく作業しました。
昭和のリフォームを自分で解体中
愛媛大学と合同で片付けワークショップ
泊まれるコミュニティスペースとして
縫う/武田店は、大きく二つの機能を持った施設にしていきます。ひとつは宿泊施設、もうひとつはコミュニティスペースです。
①宿泊施設機能
平常時は、1日1組限定(定員8名)の一棟貸し宿泊施設として平常時は運営します。これは上弓削地区に滞在していただくことによって、静かな環境や周辺の美しい風景、人の温かさなど、その良さに触れていただきたいためです。
縫う/武田店から徒歩5分にある高浜の夕景
[宿の特徴]
・物語をもつ築100年の古民家を占有して、ゆったりと過ごせる特別感。
・美しい景色と静かな環境のなか、「何もしない贅沢」を。
・Kitchen 313 Kamiyugeがもつ世界観で泊まれる体験、ベーグルや食パン、地元産ジュースなどの朝食提供を予定。
・今治タオルやBalmudaのキッチン家電、Aesopのシャンプーなど、質の高いアメニティ。
・コミュニティ感を大切にし、農家の野菜収穫やヨット乗船、遊漁船、自転車、SUPなどアクティビティをご紹介して、島を丸ごと楽しんでいただく体験提供。
・お隣さんや近所の方と仲良くなれば、野菜の差し入れなどがあるかも?
Kitchen 313 Kamiyugeのベーグル
船から、陸から、釣りもできます
ご近所さんからいただいたアケビ②コミュニティスペース機能
月に数回、地域イベントやワークショップ会場として利用します。楽しいイベントを企画して、ここを人々が集う場所にし、その賑わいが地域全体に波及していくことを狙っています。例えば、
・おでんと日本酒ナイト
・ビアガーデンイベント
・アートギャラリー
・まちづくりなど文化的なトークイベント
などを企画。
これらの取り組みの向こうには、地域の魅力に気づいた方、特に若いみなさんの移住に繋げたいという思いがあります。
改修計画

かつて駄菓子屋スペースだったのは図面左下の土間でした。そこを中心に、飲食店営業許可をもつスペースとし、奥は宿泊時に使用する寝室にします。この母屋のほうは大きく間取りを変更することなく、傷んだところをきれいに修繕し、快適な古民家暮らしを味わっていただけるようにします。
中庭を挟んで右手には水回り棟。ここはもともと厠や台所があったところですが、老朽化していたため解体して、そのままの形をモデルに新しく建て替えます。シャワー室はガラス張りにして洗面室とつなぎ、ゆったりと清潔な滞在を体験していただけます。
廊下は壁のない半屋外で、庭と一体化して縁側のような空間をつくります。庭のほうも樹木を植え、石を置くなど整備していきます。
※下の画像はイメージです。
イメージ:Kitchen 313 Kamiyugeの母屋
イメージ:Kitchen 313 Kamiyugeの中庭
イメージ:木や石、紙など、自然素材を大事にしてデザイン
イメージ:昔の大工さんの手仕事を感じられる空間に
愛媛大学、弓削商船、地域のみなさんといっしょに
改修のプロセスの中で、愛媛大学、弓削商船高専の研究室・学生と協働で改修ワークショップを実施。専門的知見と若い活力を事業に取り入れつつ、関係人口創出も同時に図っています。
愛媛大学社会共創学部では片岡由香ゼミの学生さんたちが継続的に来島し、まちづくり研究の対象地として住民への聞き取り調査などを行っていただきつつ、リノベ作業にも参加していただいています。また同大の準正課教育部門を手がける仲道雅輝先生のチームも内装の解体や荷物の整理などに参加。皆さんには改修完了後も継続的に上弓削の関係人口創造、まちづくりに関わっていただきたいと考えています。
事業計画段階から地域住民と対話し、イベント企画や運営で協力を仰いでいます。完成後は、地域住民が気軽に使える場として日を限定して提供することも検討しています。加えて、町や観光協会とのコミュニケーションを積極的に取り、町の観光戦略と連携を図るとともに、農家、アクティビティ事業者、飲食店などと観光客を繋げる取り組みもしていきます。
愛媛大学による地域住民への聞き取りワークショップ
資金の使い道
今回のクラウドファンディングでいただいた資金は、主に以下の費用に使わせていただきます。
・建物改修工事費(構造補強・内外装・水回りやガス設備)
・家具・家電・寝具・厨房器具の購入
・ウェブサイト制作、パンフレットなどのPR費用
総事業費:合計約2,400万円
※愛媛県・上島町補助金(合計900万円)に採用されており、残りは自己資金、銀行借入、クラウドファウンディングで調達します。
スケジュール(予定)
令和7年7〜11月:設計、資金調達
令和7年11月〜令和8年2月:改修工事・クラファン実施
令和8年2月:備品搬入、ウェブサイト完成
令和8年3月:残工事実施
令和8年4月:プレオープンイベント・内覧会実施を経て、営業開始
さいごに:ご参加いただき、みんなで楽しみましょう!
このまちを守っていくために、まずは私たちが楽しみたい
島の未来をつくるうえで一番の課題は、少子高齢化とどう付き合っていくか。
上島町の人口ピラミッドは典型的な逆三角形で、子どもをもつ年代が少なく、それに伴って子どもの数も少ない状況。これを是正しないと、ついには島に若い人がいなくなり、いずれまちは消滅してしまうでしょう。これは私たちの島だけではなく、日本社会全体にも当てはまることです。
そのために必要なのは「若い人に選ばれる楽しさをつくる」ことだと考えています。このプロジェクトは、島に楽しさを生み出すことを目指すもの。この「縫う/武田店」の次には、上弓削にあるいくつかの古民家の再生も手がけていきたい考えです。
この美しい島を、次の世代のみなさんにも、幸せに暮らしてもらえる場所にしたい。そのためには、このプロジェクトをまずは私たちが気負うことなく楽しみたいと思っています。ぜひみなさんも、一緒に面白がってもらえたら嬉しいです。
島の外から人々を呼び寄せて関係人口を育てつつ、島にいる人々にもより楽しく豊かな暮らしを提供する。このような積み重ねが「島の魅力」になっていき、結果として持続可能な島ができていく、そう信じて動き始めます。
最後までご覧いただきありがとうございました。みなさまのご支援をよろしくお願いいたします。
合同会社猫と船
宮畑真紀、周平






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