
いつもLIFE BOXへのご支援・応援をいただき、ありがとうございます。今回の活動報告では、LIFE BOXの開発背景と、製品が完成するまでの道のりを少しお話しさせてください。
なぜこのバッグを作ろうと思ったのか
私は消防団に25年間在籍し、何度も河川氾濫の現場を経験してきました。水害の凄まじさは、実際にその場に立たなければわからないものがあります。そして東日本大震災で見た津波の衝撃映像は、今でも脳裏に焼き付いています。
一方で、本業ではドクターヘリや救急車で使用される医療救急バッグを手がけてきました。「現場で人の命を支える道具をつくる」――その仕事を続けるうちに、「災害が起こる前から命を守るバッグをつくりたい」という思いが徐々に確固たるものになっていきました。
そして2024年1月、能登半島地震で再び津波の脅威が現実のものとなったとき、開発をスタートすることを決意しました。
もっとも苦労したこと――「普通のバッグ」と「救命胴衣」を両立する
開発において最大のテーマは、「普段使いする通勤・通学バッグが、そのまま救命胴衣に変形する」 というコンセプトをどう実現するか、でした。
「変形する」というイメージはあっても、その具体的な仕組みがなかなか決まらず、最初の壁にぶつかりました。
転機になったのは、毎朝工房の前を通学する学生たちの姿でした。彼らの多くがボックス型(スクエア型)のリュックを背負っていることに気づき、「この形なら救命胴衣型に変形しやすい」というアイデアが閃いたのです。
解決しても、また新たな問題が
しかし、形のコンセプトが決まってからも試行錯誤は続きました。
最も頭を悩ませたのは、「バッグとしての収納力」と「浮力体としての安全性」のバランスです。収納力を重視すれば浮力体を小さくせざるを得ない。逆に浮力を優先すれば、日常使いには不便なバッグになってしまう。
この問題の解決に、開発期間1年9か月のうち1年以上を費やしました。計4回の設計改良を行い、そのたびにプールでの浮力テストを実施。試作と検証を繰り返した末に、ようやく現在のバランスに辿り着きました。
「より速く、より確実に」――昨年モデルからの改良点
浮力と収納のバランスが定まった後も、「水害時により短時間で救命胴衣状に変形できるか」という課題に取り組みました。昨年モデルからの主な改良点は以下のとおりです。
- マチのファスナーがスムーズに開くよう、バッグのシルエットを見直し各部のアールを大きくし、縫製箇所も改善
- 肩ベルトを素早く脱着できるよう、細めのDカンと口の広いナスカンに変更
- 取り扱い説明書に変形手順を明記
- 肩ベルトや股ベルトを滑りやすい素材に変更
これらの改良を経て、実際に鳥羽小学校の贈呈式では4年生の女子児童が1分7秒でLIFE BOXを変形・装着して見せてくれました。子どもの手で1分台を達成できたことは、開発チームにとっても大きな手応えでした。
子どもたちが教えてくれたこと
2025年6月、三重県鳥羽市立鳥羽小学校の4年生30名を対象にLIFE BOXを使った防災授業を実施しました。神戸市の特定非営利活動法人SEEDS Asiaと協力し、プール授業では子どもたちが実際にLIFE BOXを変形・装着して浮かぶ体験をしてもらいました。
その後、子どもたちからバッグへの改良アイデアや要望を直接聞き取り、その声を反映した新型LIFE BOXを5本製作して贈呈。この取り組みはNHK・神戸新聞・中日新聞にも取り上げていただきました。
また同年10〜11月には大阪府立桜塚高等学校でも防災授業を実施。生徒自身がLIFE BOXを救命胴衣に変形・装着するという体験を通じて、水害時の対処法を学んでもらいました。
これからへの想い
LIFE BOXには、バッグ製作の知識と技術、消防団25年間の経験、そして救急バッグメーカーとして培ってきたすべてを詰め込みました。
将来的には、南海トラフ地震・日本海溝千島海溝地震の津波対策、線状降水帯による河川氾濫対策として、太平洋沿岸部や国内主要河川流域の小中高校で学校指定バッグとして採用されることを目指しています。さらにいつか、水害で苦しむ世界各国の人々のもとにもLIFE BOXを届けたいと願っています。
皆様のご支援が、その一歩一歩を前に進める力になっています。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
Maru Su Bags 代表 細川 晋



