ごあいさつ
私はこれまで、精神科病院の入院者が向精神薬で重症化したり死亡したりした事案を取材してきました。遺族の訴訟では、処方薬中毒死という解剖の証拠があっても勝訴できませんでした。「こんな理不尽があっていいのか」という思いがあり、どうしたら改善できるのか、ジャーナリストとしてできることをしたいと活動しています。
一方で近年、訪問看護やピアサポーターなど支援者が、自宅や入院先に訪問して対話する支援が増えています。多くのみなさまの「地域での回復に転換」という夢や目標が、近い将来、現実となるために立場の違いを超えて対話し、つながりを広げるシンポジウムを来年夏から展開したいと考えています。ぜひ、みなさまの応援をお願いします。
シンポジウムについて
時 期:2026年7月~27年7月
場 所:札幌、仙台、東京近郊、横浜または川崎、名古屋、京都、大阪、岡山、金沢、福岡で開催目標
ひきこもりや遠方の人もオンラインで参加でき、会場参加者やシンポジストと対話できるようにハイブリット形式で行う計画
テーマと内容:
■「病院・施設への収容」から地域社会生活へ転換
当事者と家族から悲痛な入院体験
強制入院訴訟で勝訴した西前啓子弁護士「精神科強制入院の法の問題」
ジャーナリスト和田明美「精神科薬物療法と身体拘束の問題点」
精神看護専門看護師の田邉友也さん「内なる力を引き出すトラウマインフォームドケア」
当事者の意思と選択を大切にするACT(Assertive Community Treatment 包括型地域生活支援)の支援とは 福岡QーACT、金沢GーACT、京都・大阪・横浜・千葉・埼玉などの訪問看護スタッフら登壇
福岡の「Q-ACT 」の支援。支援者が作る治療計画ではなく、本人の将来への希望を大切にして、
支援者が本人と一緒にリカバリープラン(将来計画)を作成し、計画実現に向け見守り支援していく
ピアサポーターの新たな取り組み 人権擁護活動とやりがい 金沢・京都・大阪・札幌などのピアサポーターが登壇
家族の対話をつくるには メリデン版家族支援とは 家族の立場からの登壇も
障害者団体が病院や施設から出て地域で自立生活するための体験型地域移行支援を紹介
「地域での回復へ転換」のための提言案
■日本版ドラッグコート実現へ
刑務所ではなく早期に依存症専門回復支援プログラムにつながる「日本版ドラッグコート」提案
刑事政策専門の立正大学法学部・丸山泰弘教授が「1989年からアメリカで始まったドラッグ・コートの展望と課題を考え、日本への示唆を提案」
長崎ダルクの中川賀雅代表、木津川ダルクの加藤武士代表ら依存症回復支援施設リーダーが、自身の体験や入所者への支援から見えているものを語る
ジャーナリスト和田明美「薬物依存症の背景と回復について」
シンポジウム応援メッセージ
一般社団法人「回復支援の会」「木津川ダルク」代表理事 加藤武士さん
木津川ダルクの加藤武士です。 刑務所や病院への「収容」は、依存症者から自信と繋(つな)がりを奪い、回復を
遠ざけるだけです。私たちに必要なのは処罰ではなく、地域の中で人と繋がり、生き直すチャンスです。 ダルクの現場では、仲間とのピアサポートが驚くべき回復率を生み出しています。このシンポジウムが掲げる「日本版ドラッグコート」や「ACT」の導入は、負の連鎖を断ち切り、誰もが地域で回復できる社会への希望の光です。 「地域でのリカバリー」を当たり前にするために。この重要な挑戦を心から応援します。
精神科認定看護師 精神看護専門看護師 NPO法人精神医療サポートセンター代表理事 田邉友也さん
2007年のNPO法人精神医療サポートセンター設立以来、地域で精神科医療相談を続けてきました。そこから見えてきたことは、症状が軽快しないどころか、悪化・慢性化する例が少なくない現実でした。精神疾患は薬で治すという考えが未だ多くを占めますが、実際には薬物治療だけでは回復が進まず、症状を複雑化させるケースさえあります。今回のシンポジウムでは、現場を多面的に見てきた立場から、精神科医療業界が避けてきた核心にあえて踏み込み、精神科医療の本来あるべき姿を提言します。
NPO法人「DPI(障害者インターナショナル)日本会議」事務局次長 今村登さん
私は厚生労働省の「障害者の地域生活も踏まえた障害者支援施設のあり方検討会」のメンバーです。9月
に検討会の基本的考え方をまとめました。社会参加の機会を確保▽どこで誰と生活するか選択の確保▽誰もが地域移行が可能▽法人の運営者や施設管理者、職員らと認識を共有し、取組を進めていくことが重要▽社会的障壁の除去などです。今後は「地域生活の支援の充実を図るため、入所施設、グループホーム、住居など地域移行や地域生活を支える居住支援の全体像の議論が必要」とされ、地域移行検討会の継続の可能性があります。このシンポジウムが精神障害の方の地域移行につながっていくことを期待しています。
精神科の強制入院訴訟で原告勝訴を勝ち取った弁護士 西前啓子さん
精神科病院に強制入院させられた事件の相談をきっかけに、精神医療の実態を知り驚愕しました。今の法
律では、憲法上保障されているはずの裁判を受ける権利も、適正手続も全く無視して、一私人にすぎない精神科病院の管理者が国民を強制的に収容することができるのです。常軌を逸した長期入院により、生活能力も人生も奪われます。治療により完治し退院する患者はほとんどいない一方で、精神疾患は死に至る病ではないにもかかわらず、精神科病院での死亡退院数は極めて高いのです。それはもう治療ではなく人権侵害です。優生思想が植え付けた偏見差別から脱して、皆が地域で暮らすために、地域移行を応援しています。
支援金の使い道
会場費・ハイブリット配信委託費 182万円
シンポジウム登壇者と現地スタッフの交通費 75万円
広報・宣伝費 48万円
リターンにかかる費用 85万円
合計 390万円
スケジュール
2026年1月31日 クラウドファンディング終了
5月 シンポジウム案内をサイト上とメールでお知らせ
リターン発送開始
サイトに「お名前掲示」の支援をいただいた方のお名前掲載
7月 シンポジウム開催スタート
プロジェクト立ち上げの背景
■「刑務所よりひどい」 隔離・拘束の屈辱
日本弁護士連合会が2020年、精神科病院に入院経験のある1040人に行った調査では、入院中に悲しい・つらい・悔しい体験をしたことがあると回答したのは8割。外出制限・隔離室が5割、薬の副作用・長期入院が4割、身体拘束・侮辱・面会通信制限が3割でした。インタビューでは、女性入院者が「男性看護師にベッドにくくり付けられ、尿道に管を入れられオムツを着けられた。男性看護師に囲まれた時は恐怖を感じ、オムツは屈辱だった」「人間不信になった」など悲痛な叫びがありました。
精神科病院の隔離室入り口。看護師がトイレの水を流すレバー(右)がある=2023年11月6日、宇都宮病院で撮影(西前啓子弁護士提供)
筑波大名誉教授で精神科医の斎藤環氏は、多くの精神科病院で不必要な大量の向精神薬を使って患者をおとなしくさせる「薬縛」という問題があるといい、その大量の薬によって死亡することもあると述べています。また、患者の体や手足をベッドにくくり付ける身体拘束によって、深部静脈血栓症に罹患すると、肺に血栓が詰まって酸素を取り込めなくなるため、肺が一気に壊死してショック死することもあると、重篤な副作用を指摘しています。退院してもトラウマが長年残ることがあるのも大きな問題だとしています。
トイレの悪臭がする隔離室の中=2023年11月6日、宇都宮病院で撮影(西前啓子弁護士提供)
■欧米と比べ劣悪 長期拘束と入院
杏林大学の長谷川利夫教授らが行った調査研究によると、日本での身体拘束は人口10万人あたり120人、豪6人などと比べ極端に多い。入院患者1人に対する拘束の平均時間でも、日本は730時間、米4時間などと比べ突出して長い。
(杏林大学・長谷川利夫教授提供)
また、精神科病院に1年以上入院している社会的入院の人は欧米と比較してケタ違いに多い。病状が安定して退院を求めても出してもらえず数十年もの間、病院で暮らし人生を台無しにされた人も珍しくありません。全入院患者数も25万525人(2024年630調査)で世界の入院患者数を日本が押し上げています。欧米では、精神科病院入院者数は1カ国で2万人~5万人ぐらいです。
■「日本版ドラッグコート」の必要性
違法薬物などの依存症の人たちは、刑務所に入っても出所したら、すぐに再使用して再入所することを繰り返しています。
依存症回復支援施設「ダルク」のある施設長は、「長年、刑務所に入っていると、仕事に就いて結婚して家庭を作ってということができなくなり、自分はダメな人間なんだと自信喪失してしまう。出所しても元犯罪者という差別や偏見があり、仕事に就くことが難しく、仕事に就けたとしても元犯罪者であることがばれて解雇されることもある。そうなると、ますます『ダメな自分』を忘れたくて、また薬を使ってしまうんです」と話しています。
刑務所は社会復帰を困難にして重症化させているのが実情です。刑務所に入らずに早期にダルクやマックなどの依存症回復支援プログラムにつながる「日本版ドラッグコート」を実現したい。
国立精神・神経医療研究センターの調査では、ダルク入所者の半年後の断薬率は87・4%。専門医療機関の認知行動療法プログラムを受けた人たちの断薬率は半年後で54・5%。ダルクでの断薬率はかなり優秀です。


「ダルク追っかけ調査2018」=国立精神・神経医療研究センター 嶋根卓也博士提供
(以下をクリックすると、調査結果の全文が読めます)
https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/reference/pdf/darc_book.pdf
このように、同じ疾患で苦しんだ当事者同士のピアサポートは回復率が高いというエビデンス(科学的根拠)は世界的にも多く、欧米ではピアサポートや地域での回復は当たり前になっています。
■精神疾患は身近なもの
厚生労働省の調査(2023年)によると、精神疾患の患者数は489万6000人。自死者総数(2024年)は2万320人。その原因は4割が精神疾患の悩みで、うつ4245人、統合失調症924人、アルコール依存症188人、薬物乱用44人です。
依存症を含む精神疾患は、とても身近なものとなっており、自分や家族など大切な人が精神疾患になる可能性があります。その意味でも、日本の精神科医療や司法システムは、なるべく早期に効果が上がる治療・ケアにつながれる体制作りが求められているといえます。
最後に
日本は、精神疾患など障害のある人たちを地域社会から分離して閉じ込め、身体拘束によって精神の自由をも奪う収容政策を長年、とってきました。いまでもグループホームの個室に外から鍵をかけるなど、医療・福祉の現場では「閉じ込め」が日常になりがちです。人は言葉や行動・行為によって抑圧されれば、抵抗したり暴れたりするのが自然ではないでしょうか。これまでの医療、福祉、分離教育、家族の「当り前」を見直して、じっくり話を聞く「対話」を大切に続けることが、多くの人にとって安心できる、生きやすい社会になると思いませんか?
私たちの未来は、私たちがみんなと創る。
ともに「地域でのリカバリー(回復)」を創っていきましょう!
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今こそ本気で進めよう!「脱施設と強制入院の廃止」
2025/12/06 19:08「脱施設と強制入院の廃止」をテーマにしたDPI日本会議の大会。精神科病院の隔離室に入っていた女性は「喉が渇いた。水をください」と言ったら、看護師から「トイレの水を汲んで」といわれ紙コップを渡され、ぐしゃぐしゃになるまで使っていた。 身体に障害のある女性たちが施設で風呂やトイレに入る時、男性職員の介助を受けている。女性に変えてほしいと頼んでも「人手不足」といわれる。これが医療、福祉といえるのか。なんとも情けない実情だ。 一方、障害のある人が施設や病院から出て、一人で自立して暮らしていくための支援も紹介された。長年、病院や施設にいたら、「自分で決める、行う」能力は退化してしまうだろう。だから、地域に出る時は不安がいっぱいだ。安心して地域で暮らせるようにするためのサポートは心強いものだった。これなら本人も家族も不安がないな、と感じた。 もっと見る






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