今日はメドックマラソン(フランス・ボルドー)を走っています。2011年以来毎年欠かさず出場しています。パクチーハウスのお客さんが毎年20人程度参加しています。そのためにパクチー・ランニング・クラブ(メドックマラソン with PAXi というFacebookグループ: https://www.facebook.com/groups/194430357294674)を運営しています。
メドックマラソンは給水所にワインが置いてあるマラソン大会です。文字通りかなり酔狂です。そんな面白いイベントに一度出て自慢話にしよう、というのが最初に出たきっかけでした。一度出れば十分だと思っていました。
現地に赴いて、気づいたことがありました。それは、このメドックマラソンが「酒を飲みながら走るクレイジーなマラソン」どころではなく「コミュニケーションにあふれるマラソン」だということです。
今でこそ、月300km走るランナーですが、僕が走り始めたのは2010年のことでした。きっかけは自身の「ビール腹」。みすぼらしい体型を、取材を受けた雑誌で見て、運動の必要性を感じて様々試した結果、絶対にやりたくないと思っていたランニングにハマってしまいました。でも、ストイックに走るのは今でも嫌いで、「早く走る」ことに関心はありません。健康のためにランニングを始めたにもかかわらず、目的を失って記録を狙い始め、膝や腰を故障する人がたくさんいますが、僕はそうはなりたくないと考えています。
メドックマラソンの衝撃。まず、ワインがグラスで出てくること(すべてではありませんが)。ランナーは立ち止まり、グラスを回し、香りをかぎ、そして飲むのです。この一連のプロセスをするためには、立ち止まらなくてはなりません。「進み続ける」「1秒でも速くゴールする」というマラソンの暗黙のルールが容易に破られているのです。次に、ワイングラスを持って嬉しそうな顔をした人が周囲にはたくさんいます。ワインを口につける前に・・・周りの仲間たち(他人ですが!)と乾杯をすることになります。そして、ワインの感想や出身地などを言い合い、会話が始まるのです。また、このマラソンは仮装が義務付けられています。面白い格好をした人を中心に、走っている途中でも盛り上がります。つまり、メドックマラソンは、42.195km走りながら行われる素晴らしいパーティなのです。一人で走っていても、多くのランナーと会話を交わすことになります。
パクチーハウスとPAX Coworkingでコミュニケーションのきっかけを提供し、つながりにより友情や仕事が生まれることを目指してきました。メドックマラソンにおける自然発生的なコミュニケーションはそんな僕にとって衝撃的で、レストランやオフィスという箱の中で事業をしていた僕は、コミュニケーションの促進をその外でもしたいと思いました。
僕の常識を壊したこのイベントに、一度きりだけでなく毎年出るべきだと直感しました。メドックマラソンは世界のマラソンの中でも知名度が高めなので「いつかは行きたい」と言う人は多いです。ただ、実際に行く人の割合は極めて少なかったので、僕の周辺にいる人にはその夢をすぐに現実のものにしてほしいと思い、パクチー・ランニング・クラブという「本気でメドックマラソンに行く人の集まり」を作ることで、僕自身とメドックマラソンのつながりを無理矢理ですが作ることにしたのです。これが8年連続出場という結果につながっています。
毎年ヨーロッパに行くことにしたので、ボルドー以外にもう1〜2カ所立ち寄ることも決めました。日本で認知されるか分からなかったコワーキングに関する仲間が、まずヨーロッパに多数できたのは、さまざまなコワーキングに立ち寄ってつながりを作った結果です。珍しい東京(彼らからすると世界の東端!)にエキサイティングな事例があると知り、喜んでくれただけでなく、話を聞いてくれた各地のコワーキングのパイオニアたちは、僕の事例をカンファレンス等で語りまくってくれたのです。PAX Coworkingに突然見知らぬ国の人が訪ねてくることが多かったのは、そういう理由でした。
また、記録より記憶を競う「シャルソン」を作ったのも、メドックマラソンを輸入したいまたは応用したいという気持ちがあったからでした。メドックマラソンの日本版を作ることを最初は考えましたが、コピーを作るよりよりよいものを作りたいと思い、参加者も主催者もハードルが低いものにしました。地域おこしをしたい人たちを中心に6年間超で全国で約200回開催されるまでに成長しました。これにより、各地で僕が見知らぬところでも、次々とシャルソンによるつながりができています。
ちょっと長くなりましたが、メドックマラソンの報告でした。このクラウドファンディング もあと3週間で決着つけなければなりません。楽しみの連鎖を起こすことで社会変革を起こす「つながりの仕事術」をより多くの人に伝えるため、書籍刊行を実現させたいと思っています。お知り合いに、ぜひこのプロジェクトのことをお話ししてください。