
先日、シンバルズのアルバムのうち、3アイテムがレコードとして再発される事になりました。有り難い事です。おそらくみなさんが想像している以上に沖井は喜んでいます。そして今もTWEEDEESの新しいアルバムを作っています。そこで今日は「アルバムを作る」という事についてお話しします。
単刀直入にいうと、僕はアルバム制作というものが大好きです。多分「音楽が好き」ということとは別のベクトルでの「好き」がここには関わっている気がしています。もちろん複数の楽曲の集合体をアルバムと呼ぶ以上、作業としては「音楽を作る」ことが大半を占めるのは事実なんですが。しかし「シングルを一曲作りましょうね」という作業の何倍もアルバムを作るのが好きだ、というのは断言できます。
たとえばシングルカットが一曲もなくても「名盤」とされるアルバムもありますね。ビートルの「Sgt.Pepper's~」あたりはその筆頭でしょう。実際、あの作品にはシングル向きの曲は一曲もありませんが、アルバム全体を聴き終えた後の感覚は他を圧倒するものがあります。あれは一曲単位の鑑賞体験で得られる体験とは間違いなく別物の何かです。そして、僕がアルバムを作る際に常に念頭にあるのは、やはりその「何か」なのです。それがどこから得られるものなのか。アルバム制作歴27年の僕でも、それはいまだに上手く言語化できません。すみません。
できませんで終わったらこの原稿もおしまいなので、頑張って明言しやすいところのお話をしましょう。
最も重要なのが「それぞれの曲の相互補完」であることは間違いありません。よくあるでしょう。ヒット曲やそれに準ずる曲が60分以上も満載で、最後の方の印象は全く無く、スマホをいじってたらいつの間にか終わってた、というアルバム。大将にお任せしたら全部大トロだった、みたいな。一つ一つは美味しいはずなのに、多分あまり良い思い出にはなりませんね。上手く例えられているか心配ですが、そういうことです。やっぱり朝に市場で水揚げされたお魚を、それぞれのいいところを活かしつつ、一品一品丁寧に仕上げ、入念な順番とタイミングで対象が出してくれるものを、それぞれじっくりと味わいたいものです。そうすると一見地味そうなネタでも、「こいつしかいない!」という名演技を見せてくれるものです。
うん、わかってきたぞ。おそらくアルバムを作っている時の僕は、「聴いている間にこんな体験をしたい・聴いた後にこんな感慨が欲しい」の方に意識が向いています。その為に、もう一人の自分に「ここにハマるこんな曲作ってね」と発注している感じですかね。なので、それを形作る時間的要素(音楽には時間の経過を味わう体験ですからね)である「曲順」「曲間」の作成には、作曲と同じくらいに命懸けになります。例えばシングルなどで独立して制作された楽曲を複数含むシンバルズ「That's Entertainment」や、TWEEDEES「World Record」は、ここがとても難しかった。ひとつ間違えれば全体が台無しになるパズルです。そしておそらく、僕はこのパズルが大好きなんでしょう。
他にもアルバムごとのテーマカラーを考えたり、もちろんジャケットなどのビジュアルイメージを考えるのも同じ作業です。ヒトは視覚の生き物ですからね、そこは音そのものと不可分と考えています。そしてそれを考え作るのがまた、本当に楽しい。
シンバルズで4枚、FROGで2枚、TWEEDEESは4枚。フルアルバムだけで考えると、今作は僕にとって11枚目のオリジナルアルバムになります。それぞれが独立した作品/プロジェクトではありますが、それと同時に全てが連作であるとも思っています。そして今作はどんなアルバムになるか。楽しみですね!皆さんと一緒に制作しているこの作品を、皆さんと同じく「早く聴きたい」と思っています。試聴会「おしゃべりTWEEDEES」で一緒に聴ける日を心待ちにしています。これからもよろしくお願い致します!
沖井
p.s 「一番メンタルを削られるアルバム制作は何枚目のアルバムか?」みたいな話もしようと思っていましたが、そういう流れになりませんでした。次の機会にでも。



