
既にある革の中から、色や質感を選ぶ。
もちろん、それでも財布は作れます。
それでも今回、私たちはあえて、
革そのものをつくるところから始めました。
なぜ、そこまでする必要があったのか。
理由はとてもシンプルです。
既製の革の中には、私がつくりたいと思っていた表情がなかったからです。
革は、もともと生き物です。
同じ一枚の革でも、部位によって繊維の状態が違います。
染めれば、わずかなムラが生まれる。
型を押せば、深く入るところもあれば、浅く入るところもある。
きれいに均一に仕上がることだけが、
革の魅力ではないと私は思っています。
むしろ、その均一ではない表情を生かしてみたい。
そこから、今回の革づくりが始まりました。

■ 革そのものから、デザインする
今回目指したのは、
既製の革を選び、そこから財布をつくるのではなく、
ポケットウォレットLのための革そのものをつくること。
染色をして、型押しをする。
そこへランダムに箔をのせる。
実際に加工してみなければ、どんな表情になるのか分からないこともあります。
思った通りにならなければ、また考える。
試して、見て、触って、また試す。

ひとつひとつの工程を重ねながら、
少しずつ、頭の中にあった革へ近づけていきました。
■ 最後のひと手間は、自分の手で
そして、この革は加工して終わりではありません。
革からパーツを裁断し、職人の手によって財布の形へ仕立てられていきます。


さらに製品として仕上がったあと、
最後に私自身が一本ずつ、革用の箔を使って手を加えています。

一枚の革の時点でも、まったく同じ表情にはならない。
そこへ最後に手作業を加えることで、
一つひとつに、さらに違った表情が生まれていきます。
効率だけを考えれば、
こんなつくり方をする必要はないのかもしれません。
それでも今回は、
そこまでやってみたかった。
既製の革を選ぶだけではできなかったものを、
自分たちの手で形にしてみたかったのです。
■ でも、この革は私ひとりではつくれません。
今回の革づくりには、
姫路のタンナーをはじめ、染色、加工、裁断、縫製など、
それぞれの工程を担う人たちの技術が必要です。

「こんな革にしたい」
そう伝えたからといって、
完成品がそのまま出てくるわけではありません。
革という素材を知り、
それぞれの加工を知り、
長年その仕事に携わってきた人たちがいる。
その人たちが、こちらの想いを受け取り、
どうすれば形にできるのかを考え、手を動かしてくれる。
その積み重ねがあって、
ようやく一枚の革が生まれます。
そして、その革がさらに何人もの手を通り、
ひとつの財布になっていきます。
■ 「いつか」ではなく、「今」つくりたかった。
革の仕事を続けていると、
「以前ならできた」
「昔ならお願いできた」
そんな言葉を耳にすることが増えました。
職人がいること。
技術があること。
こちらの少し面倒なお願いに、
「やってみよう」と応えてくれる人がいること。
それは決して、
ずっと当たり前に続いていくものではありません。
だからこそ、
つくれる人がいる今、つくっておきたい。そう思いました。

今回のクラウドファンディングでお届けしているのは、
一つの長財布です。
でも、その一つが完成するまでには、
たくさんの人の手と技術、そして時間があります。
既製の革ではなく、革そのものからつくる。
その革を職人の手で財布に仕立て、
最後は私自身の手でもう一度仕上げる。
ここまでできる「今」だからこそ、
形にして残しておきたいと思ったポケットウォレットLです。
完成した財布だけでは見えない、
その背景まで含めて知っていただけたら嬉しく思います。
INTRODUCTION
オーナーデザイナー 工藤友里



