
本と舍 西田優花です。
2026年7月30日(木)23時59分をもって、「明治の町家の灯りを守りたい――温泉津シェア文庫『本と舍』屋根修繕プロジェクト」の募集を終了いたしました。
当初の目標200万円、そしてネクストゴール222万円をどちらも上回るご支援をいただき、無事に走り切ることができました。
ご支援くださった皆さま、SNSで広めてくださった皆さま、お気に入り登録で見守ってくださった皆さま、そして応援の言葉を寄せてくださった皆さま。本当に、本当にありがとうございました。
この2ヶ月のこと
6月1日の朝10時、公開ボタンを押したときは、どれだけの方に届くだろうかと不安でいっぱいでした。
その不安は、初日のうちに溶けていきました。台帳をめくるように支援者の欄を眺めながら、知っている名前を見つけて驚いたり、知らない名前の向こうにいる誰かを想像したり。
「まだ行ったことがないけれど」と前置きして支援してくださる方がいたこと。「また行きます」と書き添えてくださる方がいたこと。ひとつひとつの言葉を、何度も読み返しました。
途中では、雨漏りが9カ所に増えていることをお伝えしたり、屋根を託す中島工務店さんのお話や、いただいたお手紙のこと、皆さまからのコメントのご紹介など、折々に報告を重ねてきました。書きながら、この場所がどれほど多くの人の手と気持ちで成り立っているかを、改めて確かめる時間になりました。
いただいたお手紙は自デスク前にいつも貼って時折眺めます
そして募集の最終盤には、屋根の工事が始まりました。瓦を下ろし、土を下ろし、新しい木の板が打たれていく。皆さまのご支援が、目に見えるかたちになっていく日々でした。
これから
屋根の修繕工事は、8月から約1ヵ月半をかけて進めていきます。防水シートを敷き、桟を打ち、瓦を葺き直す工程へと進んでいきます。工事の様子は、引き続き活動報告でお伝えしていきます。
リターンについては、準備が整い次第、順次発送の手配を進めてまいります。お手元に届くまで少しお時間をいただくものもございますが、ひとつひとつ丁寧にお届けいたしますので、どうぞお待ちいただけますと幸いです。
ネクストゴール分のご支援は、篠原メタル工房さんによるブックスタンド・エンドの追加製作に充てさせていただきます。増えた本たちの居場所を、しっかり整えていきます。
篠原メタル工房製のブックスタンドとブックエンドたち
最後に
このクラウドファンディングを通して感じたのは、本と舍がもう「私の場所」ではなくなっていた、ということでした。
町の方の日常の灯りであり、旅人が腰を下ろす縁側であり、遠くから見守ってくださる方の心の片隅にある場所。たくさんの「と」で結ばれた、皆さんの場所です。
私はこの場所を、「文化コモンズ」——文化的な共有地だと考えています。
誰かの本が誰かの手に渡っていく、共有された蔵書。その本を収める、明治から受け継がれてきた共有の器としての町家。そしてその建物に染み込んだ、この町で暮らしてきた人たちの記憶。三つの層が重なって、所有ではなく共有として成り立っている場所。だからこそ、無料であることに意味があるのだと思っています。
これから先、資本主義的な合理性だけでは立ち行かない世の中が来るのではないか、と私は感じています。ましてやこのような田舎であれば、なおのことです。人口が減り、市場としての規模が小さくなっていく町では、「採算が合うか」という問いだけで測れば、遺せるものはどんどん少なくなっていきます。
けれど、そのときにこそ際立つものがあるはずです。効率や採算とは別のところに置かれた「余白に生きる思想」。誰のものでもないから誰でも入れる場所、何かを買わなくても居ていい時間。そういう余白が、人の支えになる日が来るのではないかと思うのです。
小さな温泉街に文化コモンズがあることで、生まれるものがあります。町の人が気兼ねなく顔を合わせる機会。旅人が滞在をひと時間伸ばして、地元の人と言葉を交わす偶然。そして何より、「こういう暮らしの選び方もある」と、若い人や次に来る誰かが知る入口になること。
数字には表れにくいものばかりです。けれど、この町の輪郭を保つのは、たぶんそういうものたちだと思っています。
その屋根を、これから直します。直したあとも、守り続けます。
工事が終わったら、どうぞ見に来てください。新しい屋根の下で、また本と人がめぐりあう景色を、皆さまとご一緒できることを楽しみにしています。
改めて、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
西田優花



