『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

孤独に戦い、感情を麻痺させている人へ。 「立派な大人」を演じ続けるのはもう終わりにしませんか。 そこは夕暮れの無人駅。佐賀県唐津市を舞台にした写真とオーディオドラマによる没入型アートです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる癒しのツールをお届けします。

現在の支援総額

48,000

1%

目標金額は2,500,000円

支援者数

8

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2026/06/23に募集を開始し、 8人の支援により 48,000円の資金を集め、 2026/07/31に募集を終了しました

『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

現在の支援総額

48,000

1%達成

終了

目標金額2,500,000

支援者数8

このプロジェクトは、2026/06/23に募集を開始し、 8人の支援により 48,000円の資金を集め、 2026/07/31に募集を終了しました

孤独に戦い、感情を麻痺させている人へ。 「立派な大人」を演じ続けるのはもう終わりにしませんか。 そこは夕暮れの無人駅。佐賀県唐津市を舞台にした写真とオーディオドラマによる没入型アートです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる癒しのツールをお届けします。

エンタメ領域特化型クラファン

手数料0円から実施可能。 企画からリターン配送まで、すべてお任せのプランもあります!

あなたにおすすめのプロジェクト

唐津 の付いた活動報告

唐津の街を自分の足で歩き、海から吹き抜ける風を感じながら、たくさんの方にポストカードを手渡してきた数日間。市役所の皆様をはじめ、突然の訪問にもかかわらず温かく迎えてくださったASUKA HOTEL様や黒部不動産様。そして、夕暮れの山本駅ですれ違った地元の方々。この街で直接触れた人の温もりと、作品に向けられる静かで確かな期待は、私の内側に渦巻いていた創作の熱を、一段階上の「覚悟」へと昇華させてくれました。唐津の美しい夕暮れを眺めながら、私はひとつの答えに行き着いたのです。この『なぎのえき』という作品を、誰にでも無難に受け入れられるような、綺麗なだけのエンターテインメントに収めてはいけない、と。本気と本音を削り出した「密室」の作品ゆくゆくは、この作品を一般向けの電子書籍としてリリースする未来もあるでしょう。しかし、それは言うなれば、少しだけよそゆきの顔をしたマイルドな仕様です。今回、クラウドファンディングを通じてご支援いただいた皆様にお届けするのは、それらとは完全に別物です。一切の照れを捨てた生々しい感情の吐露。 命の確認作業としての、妥協なき性愛の描写。 ただ美しいだけではない、酸っぱくて泥臭い青春の深掘り。世間の目やコンプライアンスといったノイズをすべて遮断し、私の本気と本音を純度100%で詰め込んだ【真の完全版】こそが、今回お届けする作品の正体です。クラウドファンディングという、私と皆様だけが繋がっている「密室」だからこそ描ける、一番奥にある避難所のような場所をご用意しました。ここでしか手に入らない【完全最終版】さらに、唐津の地で受け取った皆様からの熱量にお応えすべく、特別な「おまけ」も添えることにしました。本編の余韻をさらに深く味わうための「書き下ろしショートストーリー(2編)」と、キャストや制作の生々しい裏側を記録した「メイキング」です。これらをすべて網羅した【完全最終版】が手に入るのは、後にも先にも、このクラウドファンディングだけとなります。今後予定している一般流通版には決して収録されない、皆様だけの特別な音セカイです。その先に描く、途方もない夢最後に、私の胸の内にある企みを告白させてください。このプロジェクトが波を起こし、皆様のお力で目標を達成した暁には、その先にある『なぎのえき』の【長編アニメ化】を計画しています。あの息を呑むような山本駅の夕暮れや、水鏡に揺れる風鈴。そして、彼らの切なく泥臭い青春を、最高のアニメーション映像としてフルスクリーンで動かすこと。それが、私の描く最終形態です。これは決して夢物語ではなく、本気で実現させるための第一歩が、今まさに大詰めを迎えているこのクラウドファンディングなのです。いよいよ、プロジェクトはラストスパートへと突入します。どうか、ここでしか味わえない極上の【完全最終版】を受け取り、唐津の美しい風景から始まる「長編アニメ化」という途方もない夢を一緒に追う「共犯者」になっていただけないでしょうか。吹き抜ける唐津の風のように涼やかで、けれど決して消えない確かな熱を帯びた作品とともに、皆様をお待ちしております。


「気が重い」という言葉が、これほどまでに鮮やかに——もちろんそこに色彩などないのだけれど——物理的な重さを持って自分の胸を締め付けるとは思いもしなかった。意を決して、僕は駅に向かう。今日はなぎに会うためじゃない。東京に戻るのだ。ずっと休職していた会社を、正式に退職するために。 なぎの幻影がいない、つまり誰一人としていない無人駅は、僕を励ますことも、叱責することもなく、ただ淡々とした時間をやり過ごすための背景としてそこに在った。僕は錆びた金属音を響かせる2両編成の電車に乗った。空港までどれくらいかかるのか。時間には、たっぷりと余裕を持たせてある。分刻みのスケジュールに追われ、常に焦燥感に急き立てられていた都会での生活は、僕の魂に「行動には常にバッファを持たせなければならない」という強迫観念めいた癖を植え付けていた。ガタガタと揺れる車窓から、夏の濃い緑をぼんやりと眺めながら、僕は頭の中で何度も退職届を提出するシミュレーションを繰り返した。係長という肩書きをもらってから、初めて会社に対して自分の「明確な意思」を見せる瞬間だ。胃の奥が冷たく軋む。空港に着いても、搭乗時刻まではまだかなりの時間があった。僕は出発ロビーの巨大なガラス窓の前に立ち、陽炎を揺らして滑走路を飛び立っていく銀色の機体を見つめていた。 数年前、栞と一緒にこの街へ帰ってきたときは、あんなにも胸がわくわくしていたのに。同じ場所に立っているというのに、今の僕の足取りは鉛のように重い。会社のことと同じ比重で、あるいはそれ以上に僕の頭を占めていたのは、栞のことだった。 僕たちはあの息の詰まるような大都会で、二人きりで身を寄せ合い、互いを支え合って生きてきた。栞が社会の波にすり減り、ひどく塞ぎ込んでしまったときは、僕が彼女を支えた。そうやって長い夜を共に乗り越え、栞は少しずつかつての凛とした明るさを取り戻し、見事に会社へと復帰を果たした。 それなのに、僕は今、会社を去ろうとしている。栞はすごいな、と純粋に思う。それに比べて僕は、どこで歯車を掛け違えてしまったのだろう。*東京に着き、羽田からモノレールと電車を乗り継いで、直接会社へと向かう。 駅を降りてスクランブル交差点に出ると、巨大なビジョンから降り注ぐ人工的な光と音の洪水が僕を飲み込んだ。アスファルトの強烈な照り返しの中、人々は皆一様に、活気というよりも「から元気」のようなギリギリの熱量を纏いながら、足早にすれ違っていく。その圧倒的な速度に、僕の歩調までもが無意識のうちに焦らされる。久しぶりに足を踏み入れたオフィスは、相変わらず無機質で、冷たい空調の風が吹き抜けていた。 とはいえ、誰一人として僕に声をかけてくる者はいない。無理もない。疲れ果てて「休職」に逃げ込んだ係長なんて、今の彼らにとっては触れてはいけない「腫れ物」以外の何物でもないのだから。みんな、自分の仕事(日常)を守るために必死なのだ。あっけないものだった。 拍子抜けするほどに、退職の手続きはスムーズに終わってしまった。人事部の小さな会議室で、いくつかの書類にサインをし、事務的な説明を受けただけ。一時期は本気で退職代行サービスの利用を調べ、あんなにも僕の生活を黒く侵食していた巨大な悩みは、ものの十五分で紙切れと共に終了した。ビルを出て、見上げるほど高いガラス張りの壁面を振り返る。「……僕って、その程度の存在だったんだな」 引き継ぎの心配すらされなかった。社会という巨大な機構の中で、僕という歯車一つが欠けても、世界は何の滞りもなく完璧に回り続ける。再びスクランブル交差点に戻ってきたときには、日はすでに傾き、ビル群の谷間に強烈なオレンジ色の西日が差し込んでいた。 信号が青に変わり、膨大な数の人々がそれぞれの「目的地」へと一斉に歩き出す。僕はそのうねりの真ん中で、まるで足元から根を張られたように立ち尽くしていた。「何者でもない僕」になって、呆然と。 次から次へと、サラリーマンや学生たちが僕の肩の横をすり抜けていく。そのうち、誰の肩も僕にぶつからなくなったことに気がついた。群衆が、まるで水流が岩を避けるように僕を透過していく。 西日が僕の身体を通り抜けて、アスファルトに影を落とさないような感覚。僕という「生きた人間」の輪郭がひどく薄れ、世界から切り離されていく。 ……ああ、そうか。僕は今、あの無人駅にいるなぎと全く同じ「幽霊」になってしまったんだ。猛烈な恐怖と孤独が襲ってきた。誰かに触れてほしかった。僕がここにいるという証明がほしかった。僕は無意識のうちに、逃げるように走り出していた。栞の待つ、あのマンションへ。僕の最後の救い(サンクチュアリ)へと。*玄関のドアを開けると、仕事で遅いはずの栞の靴が綺麗に並べられていた。 廊下には、彼女の纏う甘く清潔な柔軟剤の香りと、温かい料理の匂いが満ちている。「おかえりなさい」リビングの扉を開けると、エプロン姿の栞が、夕陽に染まる部屋の中で完璧な微笑みを浮かべて立っていた。「栞、仕事は……」 「今日は早退させてもらったの。大切な日だから」彼女はそう言うと、ふわりと近づき、僕の首に腕を回して深く抱きしめた。彼女の確かな体温と鼓動が、幽霊になりかけていた僕の身体に、再び生きた血液を注ぎ込んでいく。「お疲れ様」栞は僕の耳元で、甘く、そしてどこか陶酔したような声で囁いた。「……これでやっと、私だけのものだね」その言葉の響きに一瞬だけ奇妙な違和感を覚えたが、僕は彼女の背中に腕を回し返した「……うん。でも、拍子抜けだったよ。引き継ぎもなく、あっさりと終わってしまった。僕なんて、いてもいなくても同じだったんだ」僕が自嘲気味にこぼすと、栞は全く驚く様子もなく、むしろ心底嬉しそうに目を細めた。 「当然よ。あんな会社、あなたの本当の価値なんてわかってないんだから。さあ、手を洗ってきて。退職のお祝い、作って待ってたの」食卓を見て、僕は息を呑んだ。 そこにあったのは、丁寧に形作られたオムライスと、トマトのサラダ、それにポタージュスープ。 それは、高校の文化祭の打ち上げの夜——僕となぎと栞の、あの完璧だったトライアングルが壊れる直前に、三人で食べたファミレスのメニューと、寸分違わぬ構成だった。「味も、あの時の思い出の通りに再現してみたの。どうかな?」僕を見つめる栞の瞳には、一切の淀みがない。 あの破滅に向かう直前の、一番美しかった過去の記憶を、彼女は今、この東京の密室で完璧に固定(パッケージ)しようとしているのだ。「これからは、私がずっと面倒を見てあげるからね。あなたは何処にも行かなくていい。私が、全部守ってあげる」僕の頬に手を添える栞の優しさは、圧倒的で、暴力的で、まるで真綿でゆっくりと首を絞められるような息苦しさを伴っていた。けれど同時に、何者でもなくなった僕を肯定してくれる、世界で唯一の絶対的な聖域(サンクチュアリ)でもあった。 僕は胃の奥に冷たい氷を飲み込んだような感覚を覚えながらも、「ありがとう、栞」と笑い返した。僕にはもう、彼女のこの美しく狂気めいた愛に溺れるしか、生きる道は残されていないのだ。栞がスープを温め直すためにキッチンへ向かった隙に、僕は脱ぎ捨てたジャケットをハンガーに掛けようとした。 その時、ポケットの中に、指先をザラリと擦る異物感があった。手を入れて、引き出す。 それは、あるはずのないものだった。 あの冬の夜、なぎが不格好に編んで僕の首に巻いてくれた、あの毛糸のマフラーの切れ端。エアコンの冷たい風に揺れるその赤い毛糸から、むせ返るような冬の海の匂いが立ち上り、僕の幽霊のような輪郭を、静かに、そして確実に侵食し始めていた。


新しいアイデアや挑戦を、アプリで見つけるcampfireにアプリが登場しました!
App Storeからダウンロード Google Playで手に入れよう
スマートフォンでQRコードを読み取って、アプリをダウンロード!