『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

『なぎのえき』は、佐賀県唐津市の無人駅を舞台にした、写真と音声(オーディオドラマ)による没入型アートプロジェクトです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる2つの回復ツールをお届けします。 聴く避難所(オーディオドラマ) 飾る避難所(電子書籍フォトブック)

現在の支援総額

37,000

1%

目標金額は2,500,000円

支援者数

6

募集終了まで残り

30

『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

現在の支援総額

37,000

1%達成

あと 30

目標金額2,500,000

支援者数6

『なぎのえき』は、佐賀県唐津市の無人駅を舞台にした、写真と音声(オーディオドラマ)による没入型アートプロジェクトです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる2つの回復ツールをお届けします。 聴く避難所(オーディオドラマ) 飾る避難所(電子書籍フォトブック)

突然の別れ の付いた活動報告

小学生の時、母を亡くしました。 僕には父親の記憶がなく、戸籍の欄も空欄でしたから、母は僕にとって「世界のすべて」でした。それは、僕にとっては何でもない、ただ少し退屈な冬休み最後の日でした。 「ちょっと出かけてくるね」 そう声をかけて玄関に向かう母に対し、僕はいつものことだからと、顔を向けることすらなく生返事をしました。それが、母との最後の会話になるとも知らずに。夕方になり、あまりの不在の長さに心細くなっていた頃、ドアのベルが鳴りました。荷物でも届いたのかと扉を開けると、そこに立っていたのは二人の警察官でした。威圧的な制服の姿に完全に萎縮してしまった僕に、警官は言葉を選ぶように、夜の仕事をしていた母の交友関係について尋ねてきました。(当時、母のお客さんが僕の機嫌を取ろうとキャッチボールなどに誘ってくれることがありましたが、読書好きだった僕には少し窮屈で気を遣う時間でした)。 多くを語ることのない母でした(僕も尋ねるような子供ではなかった)から、僕が答えられることはほとんどありません。見事な沈黙の後、僕は促されるままパトカーに乗せられました。近所の人々が何事かと遠巻きに見つめ、同年代の子供から「犯人だ」と心ない言葉を投げかけられる中、僕の心はすでに現実から遊離し始めていました。警察署の片隅で待たされている間、大人たちの口から「血が」とか「現場では」という不穏な単語が断片的に聞こえてきました。やがて、姉のように慕っていた従姉が迎えに来てくれ、「明日は学校を休むから」とだけ告げて、少し高めのレストランへ連れて行ってくれました。もちろん、喉を通るはずもありません。そのまま親戚の家へ連れられ、ひそひそとした噂話と視線を潜り抜けた先で、僕は変わり果てた母と対面しました。「急な病気なのよ」と伯母は言いました。 初めて直面する、一番近しい人の死。どう悲しめばいいのかわからず、感情の回路が完全にショートしてしまった僕は、壊れたロボットのように、ただひたすらにケタケタと笑い続けていました。母の死の本当の理由を、大人たちは僕から隠そうとしましたが、やがて新聞記事を読んだクラスメイトが無邪気な残酷さでそれを教えてくれました。この経験は、僕の命や死に対する考え方の根底に、深く横たわっています。『なぎのえき』のなぎのモデルとなった「彼女」もまた、母親を亡くすという近い境遇を持っていました。だからこそ、その喪失を抱えながら生きる僕に寄り添い、勇気をもらうように傍にいてくれたのだと思います。そうやって「ふたりぼっち」で生きてきた彼女を、僕は突然失いました。それでも続いていく人生と、どう向き合っていくか。 どうしようもない喪失感を抱えながらも、再び歩き出すための「言葉」を届けること。それが僕の使命なのだと感じて、このプロジェクトを立ち上げました。『なぎのえき』は、「人の死」を消費するための安易なエンターテインメントではありません。傷つき、疲れ果てた大人が、ゆっくりと息を吹き返し、再生していくための物語です。そして同時に、この物語は「去り行く人々」へ、きちんと「さよなら」を言うための儀式でもあります。「ちょっと出かけてくる」と言った母の背中を振り返らなかった、あの日の後悔。 大切な時に、彼女と正面から向き合えなかった後悔。それらすべてを精算し、ここから先の未来を新しく創り出すために。 僕は今日も、この物語を紡いでいます。


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